映画祭の中日、13日に是枝裕和監督の『万引き家族』、翌14日に濱口竜介監督の『寝ても覚めても』の公式上映が行われました。
『万引き家族』は、父(リリー・フランキー)、母(安藤サクラ)、妹(松岡茉優)、祖母(樹木希林)、息子(城桧吏)という、万引きという軽犯罪でつながった家族の姿を通して、本当の家族とは何か、理想の家族とは何かを問いかけた作品です。今回が7回目のカンヌという是枝監督は、現地での知名度は抜群で、家族という普遍のテーマも理解しやすく、驚くほど高い評価を受けました。
『寝ても覚めても』は、野間文芸新人賞を受賞した柴崎友香の同名小説の映画化で、麦と亮平という外見はそっくりだが、中身はまったく違う男(東出昌大)を愛してしまった朝子(唐田えりか)の揺れ動く姿を描いたもの。
濱口竜介監督は、前作『ハッピーアワー』がロカルノ映画祭で女優賞を受賞したばかり。カンヌではまったくの新人ながら、『ハッピーアワー』が『センス(感覚)』というタイトルでフランス公開中ということもあり、フランスの映画批評家には作風が浸透しているようで、リベラシオン紙やルモンド紙に、とてもよい評が出ています。
【齋藤敦子】映画評論家・字幕翻訳家。カンヌ、ベネチア、ベルリンなど国際映画祭を取材し続ける一方、東京、山形の映画祭もフォローしてきた。フランス映画社宣伝部で仕事をした後、1990年にフリーに。G・ノエ、グリーナウェイの諸作品を字幕翻訳。労働者や経済的に恵まれない人々への温かな視線が特徴の、ケン・ローチ監督の「麦の穂をゆらす風」なども手掛ける。「ピアノ・レッスン」(新潮文庫)、「奇跡の海」(幻冬舎文庫)、「パリ快楽都市の誘惑」(清流出版)などの翻訳書もある。