【コロナ時代、仕事に向き合う人々】“ゴミ屋”の誇り。徹夜で磨きあげる産廃収集運搬車

相沢由介(IN FOCUS)】緊急事態宣言下の5月21日、長距離トラックドライバーの米谷光由紀さんは、去年の台風19号で大きな被害にあった宮城県角田市で稲わらを積み、山形の処分場へ運んでいた。台風で水に浸かった稲わらは腐敗し、ひどい悪臭を放っていた。「下水処理場の汚泥とか、臭うものを運んでいるときはコンビニに車をとめては寝られないです。人気のないところじゃないと、周りまで匂いがするんで」

米谷さんは、産業廃棄物を専門に運ぶドライバーだ。主に、東北・関東・新潟の中間処分場や最終処分場を行き来して、社会が出す様々な廃棄物を運ぶ。「我々のトラックは、ゴミを積んでいるだけで嫌われる。でも、お前らが出したゴミだろって思いますけどね」。自らを”ゴミ屋”と称して、もう慣れっこだという風に、憤るでもなく米谷さんは言った。

新型コロナウイルスの影響で、移動中の不便が多くなった。ガソリンスタンドのシャワーやコンビニのトイレが使えなくなり、さらに困ったのは食事だった。緊急事態宣言に伴う営業自粛で、下道では夜8時には飲食店が閉まり、高速道路パーキングエリアの商業施設はどこも営業を休止。「私たちは食べるくらいしか楽しみがないですからね。本当に困りました」。米谷さんのトラックには炊飯器、冷蔵庫、電気ポッドが積んである。無洗米と水を一緒に積んで、トラックの中で自炊することもあった。

ウイルス感染症の猛威が続く中、自分の運んでいる廃棄物に不安も感じるという。運んでいる廃棄物がどこから来たものなのか、ドライバーにはわからない。東日本大震災後には、降ろそうとした廃棄物の放射線量が高くて、処分場で受け取りを拒否されたこともあった。荷台にシートを掛けるとき廃棄物に足を踏み入れる自分はどうなるのか、震災のときと同じ怖さがあると米谷さんは話す。

「誰かがやらなきゃいけないことなんで」。人の生活の最後のところにある、汚れ仕事の現場。だからこそ車はいつでも美しくしていたい。運搬が終わると、米谷さんは愛車である「羅生門號」の車体を、じっくり時間をかけて磨き上げる。ときには仕事終わりに夜通し磨いて朝を迎えることもあるという。「産業廃棄物を運んでいる車は汚いというイメージあるじゃないですか。ゴミを運んでるから車が汚いのは当たり前だって思われるのが嫌なんですよね。お客さんには、こんな綺麗なところにゴミを積んでいいのって言われますけど、それぐらいが丁度いいのかなって」

「自分の体よりも先に車を洗う」というこだわりで、磨き上げは荷台の下部にまで及ぶ。荷台を傾けて廃棄物を降ろすときにも汚く見えないようにという思いからだ。馬鹿が付くほどトラックが好きで、洗車も趣味みたいなものだと、米谷さんは笑う。

特集:コロナ時代、仕事に向き合う人々】新型コロナウイルスが猛威を振るう中、多くの人がこれまでとは違う仕事の仕方を模索しています。仕事中の感染リスクに対し、自分の仕事への義務や責任を全うしようとする人、また、選択の余地なく生活のために働き続けなくてはいけない人もいます。私たちはもう、コロナ禍以前の世界に戻ることはできません。経済の停滞も感染リスクもすでに日常であり、その中でそれぞれの人が日々自分の仕事と向き合っています。

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