FreeTEMPOが11年ぶり渾身のアルバムをリリース 活動休止の10年間と仙台から描く未来

(渡邊真子撮影)

渡邊真子】2021年9月。約11年ぶりとなるニューアルバム『Sekai』をひっさげて、FreeTEMPOが帰ってきた。FreeTEMPO(フリーテンポ)こと半沢武志氏(44)は、今も昔も仙台を拠点に音楽活動を続けている。

2000年にFreeTEMPO名義での音楽活動を開始し、翌年にはイタリアのレーベルからデビュー、瞬く間に国内のクラブシーンを牽引する第一人者に。その人気は海を越え、特に韓国での人気は絶大だった。

そんな中、2011年に突如FreeTEMPOとしての活動休止を発表。表舞台にほとんど姿を見せなくなった。この空白の約10年間は、彼にとって一体どんな時間だったのだろう?どんな形で音楽を続けてきて、今回の新作リリースに至ったのだろうか?

活動休止と空白の10年間

「2011年の1月に最後のワンマンライブをやって、ベストアルバムも出したことだし、自分の中で区切りをつけて、忙しい中で制作していくスタンスというか、サイクルをちょっと変えたいなと思ったんですよね。なので、一旦ピリオドを打とうと」。2011年、半沢氏は活動休止を宣言した。

「もうちょっと、時間をじっくりかけて曲を作りたいという気持ちになったんですよね。1年に1曲のペースで作っていこうと。まあ、そんなことをしたら、アルバムを作るには10年以上はかかるよなぁと。となると、忘れ去られるかもしれないしなと」そう言って笑う半沢氏。

「それはもう、とにかく自分の中でもかけではあったんですけれど、それでも、風任せというか必然というか、自分の思うスタイルの方向に舵を切ったんです」

それまでは、活動休止についてもすごく迷っていたという半沢氏だったが、2カ月後に起こった東日本大震災を機に、これを乗り越えるようなものをじっくり作りたいと思い、時間を設けることを決意。Jクラブシーンのトップランナーだったそんな彼の決断に、意外にも周りの反応は好意的だったという。

「2010年に、すごい悩みながら制作している姿を近くでみていてくれた人は、その方がいいよねって賛成してくれたんです」

クラブミュージックというカテゴリで一躍有名になったFreeTEMPOだったが、既にその括りに収まらない様々な楽曲を制作しており、自身の今後の音楽制作の方向性に、随分と悩んだ時期でもあったようだ。この10年の間で、それまで多忙で叶わなかった海外旅行にもでかけたという。

「韓国には仕事でしょっちゅう訪れてはいたんだけど、ただの旅行で行きたいなと。海外の色んなものをちゃんとこの目で見て、修行したいなと思って」主にヨーロッパのあちこちを訪れたという半沢氏。

「様々な文化を肌で感じたり、音楽とか芸術とか、空気や食べ物とか…実際に行かなきゃわかんないじゃないですか。そういうのを感じたいから、年に1度ぐらいはどこかに旅して、そこで色々吸収して、1年に1~2曲作っていって…。海外で得たエネルギーを注入しながら、この10年は制作している感じです」

海外では、自分でも驚くような体験をしたという。

「個人的にはギリシャが好きで、白い壁の家並みをただボーッと眺めているだけでも全然良かったですね。海外でそんな経験をしてみて、音楽を忘れそうになったことが僕にとっては一番大きかったと思う。いい意味で」と話す半沢氏。

「あ、今音楽忘れてた!みたいな時があったんです。それってなかなかできないことじゃないですか?常に音楽の仕事をしていたら。ちょっと言葉は悪いんですけど、音楽バカというか、ずっと音楽脳でやってきたので、一瞬臨死体験できたというか。それがとてもいい経験でした」

(定禅寺通にて 撮影:渡邊真子)

渾身のNewアルバム『Sekai』

「この数年で、歌詞の感覚が変わってきたんです。昔は、英語の歌詞がメインで、何回もフレーズをリフレインするような」とここで、「New Field Touch~New Field Touch~」と過去の楽曲の一節を口ずさむ半沢氏。

「そういうのをずっと繰り返して歌うような曲が多かったんだけど、最近作るのは、日本語の歌詞が多くなってきて、メッセージ性がちょっと強くなってきたかもしれないなぁと」そう自己分析しているという。

「時の流れと言うか…環境の変化や年齢的なこともあって、日本語でもっと強いメッセージを!みたいな気持ちもあったし、その結果、日本語詞が増えていったということですかね」と半沢氏は言う。

最新アルバム『Sekai』には、一流のゲストボーカリストたちも登場している。これは、活動休止前のアルバム『Life』など過去作品についてもだが、ボーカリストには自らオファーをするという半沢氏。

「基本的にはゲストボーカルさんに歌ってもらうつもりで楽曲を作っているんです。この曲はこんな方に歌っていただきたいなぁとイメージした方にボーカルをお願いしています。でも、これは誰にも歌えないやという曲も出てくるんですよね、それを自分で歌っているんです。これは自分にしか歌えないよなぁっていう曲が、以前より多くなってきた感じはあります」そう言って半沢氏は笑った。

「こうなればいいなと想定しながらオファーはするけれど、いつもそれ以上のものができる。全部結果論なんですけど、ああ、やっぱりこの曲はこの方に歌ってもらってよかったなという仕上がりになるんです。楽曲もPVも協力していただいた方の力で、ちゃんと形になったなぁと。そこが、作ってよかったなと思うところなんですよね。今回の『Sekai』も」

10年間の集大成とも言える、バラエティに富んだ楽曲たちが詰まったその『Sekai』。そのアルバムに点数をつけるとするならば?という問いには、

「120点!もう大満足ですよ」

とすかさず答えが返ってきた。

9月にリリースされたFreeTEMPO 11年ぶりのフルアルバム『Sekai』

仙台から描くFreeTEMPOのこれから

有観客のライブやイベントが中止になるなど、音楽業界にもコロナ禍の影響は大きくのしかかった。しかし、活動休止中の半沢氏には、幸いなことにその影響は全くなかったという。

「イタリアのレーベルからFreeTEMPOとしてデビューした時も、仙台から音源だけをイタリアに送っていました。その後も、リモート録音を多用しながらアルバムを作っていたので、今回のレコーディングでも、そんなに違和感なくリモートでのアルバム制作にとりかかることができました」

そう話す半沢氏。

「あの頃からもうリモートで何でもできていたから、東京に依存はしていなかったですね。住むのは仙台でいいし、何かあれば東京でもどこでも行けばいいしって思っていました」

アルバム『Sekai』のCD版には、ボーナストラックを含め13曲が収録されているが、その中に、地元仙台にちなんだ曲がある。

「制作にかける時間が多かったということもあるし、年齢的なこともあるのかもしれない。仙台は学生時代からもう20何年も住んでいるところなので、それだけの思いとか色々募ってきたところだったと思うんですよね。だから、『Sendai』っていうタイトルで曲を作ってみようかな?と思って」

と、曲の由来について半沢氏は語る。

(せんだいメディアテークにて 撮影:渡邊真子)

活動を再開し、今後も仙台からFreeTEMPOとして音楽を発信し続けていく半沢氏は、「まずは、今、無性にイベントがやりたいんですよ」と満面の笑みで話す。

「コロナのタイミング的なこともありますけれどね。まだちょっとアバウトですが、イベントと、次回作についてはぼんやり考えています」と、これからのプランについてそう明かした。

自分が年を重ねた分、当時のオーディエンスも随分と大人になっているはず。

「それでも自分の音楽を聴いてくださる方が、2021年にもいて良かったなと思います。そんな方々を、ちょっと驚かせたいというか、面白いものを作ってびっくりさせたいというスタンスは、ずっと変わっていないです。だから、楽しみに待っていていただけると嬉しいです」

Afterword

半沢氏と筆者が初めて出会ったのは、彼がまだ大学生の頃。あるイベントのオープニングアクトで彼がDJをやっていたのだが、その頃も、20年後の今も、印象は全然変わっていない。常に穏やかな口調でゆっくりと語り、会場を沸かすような音楽を作り出す人物像からは、ちょっとかけ離れているのかもしれない。今回の『Sekai』の作品には、そんな彼の持ち味も垣間見れるような気がした。

仙台発“FreeTEMPO”というカタチを確立し、音楽はもちろんのこと、新たな日本のカルチャーが世界を席巻できるよう「僕が手伝えるようなことがあるのであれば」と、控えめながらも、思い描いているビジョンをチラッと覗かせた。FreeTEMPO・半沢武志の今後の活躍が、益々楽しみでしかない。

(撮影:渡邊真子)

オフィシャルサイト FreeTEMPO.net
https://www.freetempo.net/

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