【連載コラム・インドを視る】急成長を続けるインド。ムンバイ経済新聞編集長で、インドでのビジネスを展開する小里博栄さんが、現地の経済から人々の文化・生活まで、肌で感じた「インドの今」をリポートします。
古くから日本に拠点を置く人からIT技術者として活躍する人まで
虎ノ門の「すき家」で朝食を取った。日本の外食産業は課題もあるが、毎回コスパの良さに感心する。550円で納豆卵ご飯と牛皿定食が提供され、PASMOで清算可能。清潔さと安全な品質、安定した価格、リーズナブルさは日本の一つのスーパーコンテンツだと思う。一方でインドもスーパーコンテンツの国である。今回は、日本で活躍するインド人について紹介したい。
TATA財閥は著者の出身地・神戸に1891年に支店を設立、インドと日本の貿易を進めていた。その神戸の北野地区にはインド人が集う「India Club」があり、インド人コミュニティーが存在する。
10年前、筆者はインド人の先輩に「僕はインドでは商売しないね。日本の生活は最高だし、嫁も日本人、神戸の国際学校もトップクラス。なぜ君はインドに行き、商売をするのか。やめておきなさい!」と。少し時間が経った後「失敗したらいつでも日本に帰って来ればいい、応援するよ」と言われた。あれから10年。僕は当時神戸の国際学校の理事長を務め、彼の子供2人はそこの学生であったが、今はもう高校生になるだろう。
その先輩と久々に会食を考えている。何を言われるか少し楽しみだが、10年で何を成し遂げたか問われると、インドで事業を継続しただけかなと思う。彼は長年祖先が神戸で輸入業と不動産業を営む、日本における「OLD SCHOOL」のインド人だ。一方で最近はIT技術者が多く、いわゆる「NEW SCHOOL」が多数だ。インド国内と比べて4倍の給料を東京で稼ぎ、西葛西に生活の拠点を置く人が多いという。インド人の日本での今後の活躍に目が離せない。
*小里博栄
株式会社LA DITTA代表取締役、シンガポール経済新聞・ムンバイ経済新聞編集長。神戸生まれ、オックスフォード大学院卒。英ヴァージングループ、ダイソンの日本市場進出・マーケティングを経て、株式会社LA DITTAを創業。インド、シンガポール、日本、欧州などでグローバルに事業を展開する。インドでは2007年からビジネスを展開、インド最大の「クールジャパンフェスティバル」(15万人来場)を5年開催。日印文化交流の担い手として、日本食材の輸出、アンテナショップ事業、中小企業庁販路拡大事業、観光庁中間富裕層の訪日促進事業などマルチに活躍中。