【伊藤朱莉】仙台市宮城野区の岩切市民センターでは、小学生の居場所のひとつを作ることを目的に「子どもの広場であそぼう!」というイベントが定期的に開かれている。私が訪問した昨年12月23日は、終業式後の児童を迎えるためボランティアによる準備が行われていた。
子どもも大人も、地域がつながる遊び場
ボランティアのみなさんが集まった経緯は、一人一人異なる。元々市民センターを拠点に団体として活動していた方や、子どもの居場所作りボランティア募集で参加を決めた方、そしてシルバー人材センターの一員として参加している方などさまざまだ。
開始時間になると、小学生たち、子どもや孫連れの大人たちが続々と集まり、卓球やカーリング、ダーツといった身体を動かす遊びから、折り紙やカラムシストラップ作り、ボードゲーム等の豊富な遊びの中で思い思いに楽しんでいた。子どもたちは学校に配られたチラシや友達の紹介で「子どもの広場」を知り、参加しているそう。
遊びに来ている児童は、学年を越えて交流しており、普段のクラスごと・学年ごとの学校生活ではなかなか見ることができない関係性が構築されている印象を受けた。
楽しんでいるのは子どもたちだけではない。ボランティアに参加している大人たちも子どもにゲームの遊び方や作り方を教えることで交流するのはもちろん、他のブースを見に行き、大人同士での交流も見られ、必ずその空間には笑顔があった。各ブースの小さな輪が短い時間でつながり、大きく広がっていった様子が見受けられた。
コロナ禍でも「地域のつながり」保つために
イベントを担当する岩切市民センターの河野さんは、新型コロナウイルスが流行してからも「多くのつながりが生まれるこの事業を止めたくない」という思いのもと、なんとしても開催しよう、と考えていたそう。シルバー人材センターのメンバーとしてボランティア参加する方々は減ってしまっているそうだが、「年齢を重ねた後でも自分にできることを行い、多くの子どもたちやボランティアの方々と交流できる子どもの広場に、また多くの仲間が集れるようにしていきたい」と話した。
「子どもの広場」は子どもの居場所づくりや子どもを見守るボランティアの養成という目的があると同時に、「子どもと大人」「子ども同士」また「大人同士」など、地域内で支え合うことができる場作りという役割を果たしているように感じた。大人同士に関しては、全く違う興味を持つ大人同士がつながり、新しい人間関係の構築の機会にもなっている。
絆の強さ、未来へ受け継ぐ
現代社会では地域のつながりが希薄化し、高齢者の孤独死や、地域の安全性の低下などの一因となっていることが指摘されている。都心部で顕著に見られる傾向があるが、東北などの地方も例外ではない。
岩切市民センターの河野さんは岩切地域の集会に参加した際に、70代の方々に混ざってお話をすることがあったそう。その会話の中で「自分たちは小学校からの付き合いだ」と聞き、今でも長く強い絆を形成していることに驚き、そこが岩切地区の魅力だと感じたそうだ。
市民センターの職員は約3年ごとに異動となる。そのため河野さんも今まで多くの地域の特徴を仕事を通じて体感していたが、このように「つながり」というものを強く感じた地域は初めてだった。だからこそ、地域のつながりを形成している「子どもの広場」を新型コロナウイルスによって止めたくなかったという。子どもの居場所作りによって構築された絆が後世に残り、この地域の魅力が失われずに引き継がれていくことを期待している。
この記事はTOHOKU360と宮城野区中央市民センターとのコラボ事業「東北ニューススクールin宮城野」の参加者が執筆した記事です。宮城野区の市民活動を取材した参加者たちが、地域の課題に取り組む人々の活動や思いに迫ります。
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