【続・仙台ジャズノート#122】あこがれのアナライズ。取材ノートから。

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文】ジャズアドリブのイロハを学び始めて1年ほどが過ぎたころから、ある状態になることへの憧れのようなものが生まれました。それは、何かの曲の楽譜を前にしたらテーマ(メロディ)からアドリブ演奏まで、一応、こなせるようになりたいという、途方もない願望です。その願望に向かって少しずつ進むには、曲の流れに応じてアドリブの手順を自分で決める「アナライズ(Analyze=分析する)」の力が必要です。

筆者が試行錯誤しながら作ってきた「取材ノート」も、振り返ってみれば、正しく「アナライズ」するための知識や情報、実際の演奏への橋渡しとなる心構え、技術について、その都度書き残したメモのようなものです。アドリブ演奏に今後、思うような変化が見込めなくとも、「アナライズ」できるようになればジャズ好きが定年後に始める趣味としてはかなり贅沢だよな。

「アナライズ」では、曲の構成に応じてコード(和音)進行を把握し、アドリブする手順を具体的に考えます。ジャズの達人なら楽譜をながめるだけで直接演奏できるレベルですが、筆者のレベルでは楽譜に書き込む方法で試行錯誤する以外にありません。ジャズ演奏に絶対的に正しい答えがあるわけではないし、技術的な未熟さもあって理論通りに運ばない側面が多々あります。

同じコードでも、演奏方法が複数あるケースもあります。スムースな「アナライズ」のためには、その時点での理論的な検討と経験が必要です。「アナライズ」を通じて、アドリブ演奏に必要な知識や技術が自然に視界に入ってくるなら、それだけでうれしい。演奏のレベルはいつまでたっても覚束ないとしても、「アナライズ」を一つの趣味と考えることができるなら、鑑賞専門のジャズ好きが新たにゲットする贅沢な音楽世界になるような気がします。

写真:Donald GiannattiUnsplash

「アナライズ」と実際のアドリブ演奏の関係は、非常に柔軟かつ奥行きが深いのを感じます。ジャズの場合、端的に言えば同じ曲でも、「アナライズ」の考え方は一つではないことが許されます。ジャズ音楽の幅の広さが、何となく分かりにくいときもありますが、基本的には、そこで許される自由が気に入っています。曲解釈のレベルや方向がさまざまな演奏者が一堂に会して同じ曲に挑戦し、その場限りの音楽として仕上げる-。「アナライズ」について少しずつ学んでいくと、ジャズ音楽そのものが多様な個性を許容し合いながらサウンドを仕上げる感覚の端っこに触れた気がします。

「この曲はふたつのメジャースケールとマイナースケールの二つだけでアドリブができます」

「この曲の2小節目、6小節目はオルタードスケールを使えます。5小節目から8小節目はⅡ-Ⅴ-1と呼ばれるお決まりのフレーズを使う手もあるでしょう」

以上は「Autumun Leaves(枯葉)」に関する「アナライズ」の例です。さらに一つのスケールだけで吹き切るススメもあります。以下のような場合です。

「この曲はブルーススケール一発でいいと考えればどうでしょうか。やってみましょう。細かい部分では、いろいろな意見もあると思いますが、ある曲を通して自分でアドリブする楽しさを味わうことが何よりも重要です」

どうでしょう。筆者は長い間、仕事世界で生きてきましたが、何かのステップを踏むのに、こんなに自由で柔軟な判断が許されたことはありません。結果的にどんな「アナライズ」をしようともそこで、違和感を覚えるかどうかも、演奏者自身の耳、音楽を楽しむ感性にかかっているのだから面白い。

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