【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文】仙台で活動している、アマチュアのトランペット奏者、長嶋寛治さん(57)=仙台在住=にインタビューしました。長嶋さんは自らのバンド活動に加え、初心者でも参加しやすいジャムセッション「ゆるゆるセッション」の盛り上げに協力するなど、現役の仕事世代には珍しいほど活発に活動しています。長嶋さんにとってジャズ音楽とは?特にジャズ音楽最大の特色でもある「アドリブ(即興)」演奏のこなし方について具体的に取材できたので紹介します。
「ジャズの場合、『セッション』で出会ったばかりの人との間でも、曲を決めて、簡単に打ち合わせるだけで音楽を作れてしまいます。この点がジャズ音楽の魅力です。こんなに楽しく自由な音楽はほかにはありません」
横浜生まれの横浜育ち。小学校1年で親にすすめられてピアノを習い始め、4年で「金色にきらきら輝く」トランペットを手にしたそうです。高校で参加した吹奏楽部で音楽の基礎をたたきこまれました。指導者はプロの音楽家。「プロをなめるなよ。音楽でめしを食おうと思っている人はそれだけで違う。音楽大学に行きたいなら部活はやめて、音大に行くための指導を受けろ」―。「厳しかったですが、あの3年間があったから今でも音楽を続けられている」
トランペット以外に歌も好きな長嶋さんはジャズだけに集中しているわけではありませんが、話がジャズ特有のアドリブに向かうと、長嶋さんは自分で書いたという「書き譜」を見せてくれました。「書き譜」とは、曲の中で演奏するソロの部分を、あらかじめ自分で楽譜にしておくものです。曲の中で文字通り即興的にアドリブするのではなく、事前に書いた楽譜を用意するので、アドリブではないという見方もありますが、筆者は何よりも音楽がきれいに流れ、聴く人にとって心地よいかどうかが大切だと思うので「書き譜」を使うかどうかはあまり気にしません。
実際、筆者がアドリブするフレーズの出来と「書き譜派」の人が入念に準備したフレーズでは、悔しいことに、「書き譜派」の方が自然な場合が多いです。
特にアマチュアの場合、吹奏楽出身の演奏家の中には、音楽の流れに応じて、演奏の現場でフレーズを自在に生み出していくスタイルをとるのが苦手な人もいて、あらかじめ、譜面を作り、事前に何度も練習して本番に臨むスタイルが珍しくありません。
長嶋さんは自分で作成した「書き譜」を見せてくれました。長嶋さんによると手順はおおむね以下の通りのようです。
- 曲の構成を把握する。コード(和音)進行に合わせてコードトーン(和音を構成する音)などを確認する。
- 自分でアドリブを考え、楽譜におこす。この際、有名な演奏家、先人のアドリブをコピーして使うことが多い。書き譜派の力の入れどころ。ジャズらしさを醸し出す「ジャズ言語」を一から自分でつくろうとしても難しい。先人の演奏を参考に少しずつでも取得するのが望ましい。
- 書いたアドリブフレーズを実際に吹いてみて、必要な修正を行いながら、体にしみこませていく。
- 本番では体に入った「書き譜」に沿って演奏する。
筆者の場合、先人などの演奏を聴きとって楽譜におこす作業自体が不得意なので、ナガシマさんのマネはできません。何しろ事前に何度も練習してフレーズを覚えても、すぐに忘れます。本番の緊張のなかで、長嶋さんのように、覚えたアドリブを再現できるのは、それだけで、特殊な能力としかいいようがないのです。
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