【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文】 「えー、言っちゃ悪いですが、もっと厳密に譜面通りに吹かないと、ジャズを知らない中学生の演奏のようになります」。もう35年近く一緒にやってきたバンドのリーダーに指摘されました。ジャムセッションで取り上げられることの多い「Cissy Strut」のテーマをジャズアレンジで演奏しているときでした。
理由ははっきりしていました。テーマの音列に気を取られて、タンギングとアクセント、音の長さなどの処理が甘くなったのでした。アレンジ譜にもしっかり書いてあるのを無視した形です。雑な音出しはとりわけアンサンブルでは致命的。どう言われても仕方がありません。
なぜかその前日のサックス教室で師匠から言い渡されていた言葉が思い出されました。「(先人のフレーズを)一部でもいいのでしっかりコピーしましょう」
「先人」のフレーズをコピーするとは有名な演奏者のアドリブをコピーし、ジャズ特有のニュアンスを身に着けることです。「ジャズ言語」を重視する演奏家の誰もが口にする、ジャズ学習の大前提のような課題ですが、コピーする力が自分には乏しいような気がして、長い間、迂回してきました。
前回の報告でアマチュアのトランペット奏者長嶋寛治さんが「書き譜」をしっかり準備していたのも、まさに「先人」のフレーズをコピーして、自分のものとして取り入れることでした。一音、一音マネをするというよりも、どのようなニュアンスならジャズっぽく聴こえるかを、バリバリの日本人である自分の体に覚えこませることだと受け止めています。筆者にとっては高いハードルですが、あまり理屈をこねずに向き合う以外にないようです。
いくら不得意だからと言って、先人に習う基本をいつまでも迂回してはいられないように自分でも思うので、ちびちびとですが、動き始めています。
念のためにこれまでに手探りしながら作ってきた「取材ノート」を見返してみると、演奏の基本中の基本であるタンギングやアクセントに関する記述が繰り返し出てきました。これまでもさまざまな形で意識されたポイントだったはずなのに、いつの間にか甘くなるのは、手をつけやすいところから始める癖のためかもしれません。
先人の演奏のコピーに関するポイントでは、米国のトランペット奏者Blue Mitchellの「I’ll Close My Eyes」がアドリブに入る前の中途半端な形で放置されていました。師匠のアドバイスを受けながらコピー譜は用意したものの、仕上げを吟味した記憶がありません。あらためて確認する必要があります。
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