【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文】何度も繰り返し強調してきたことですが、この連載のメーンのテーマは「ジャズアドリブの不思議」です。一体、どんな知識と技術を身に着ければ、神がかりとしか思えないアドリブソロをとれるんだろうと、聴き手として長い間不思議に思ってきました。学生時代に始めたドラムを一時中断し、縁あってアルトサックスに触るようになって、「アドリブの不思議」は一層募るばかりです。
音楽理論で言えば、小学生程度の知識しかありませんでした。特に吹奏楽の経験がないのは、非常に痛かった。バンド活動を楽しんでいる周囲の人たちは、中学や高校で吹奏楽部に所属していたケースが目立ちます。それに比べて筆者の場合、楽譜を読む力が圧倒的に不足していたのは当然として、ハーモニーや音楽表現の基礎的な理解にも欠けていました。ジャズに限らず音楽理論の分野と言えば、音楽大学のカリキュラムとしても重要な位置を占めています。アルトサックスに触ったこともないのに、一体、どんな目標をイメージして突っ込むことができたのか。今となってはそちらの方が不思議です。
ジャズ音楽の基礎中の基礎に関心を持つようになってすぐに実感できたのは知識や技術を習得するうえで都合のいい早道や抜け道は一切、ないことでした。それでも続いたのはジャズ音楽に親しむこと自体が楽しいからです。手元にある古いレコードやCDに加えてネット音源も、山ほどあるので、聴く時間も大幅に増えました。そのことだけをとっても、ジャズ好きの一人にはこのうえない幸せといっていいでしょう。
2024年秋、「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」が1週間後に迫り、杜の都仙台も音楽の季節を迎えています。「ジャズフェスの予定教えて!」とのメッセージを知人、友人からいただいています。ありがたいことですが、この1年は個人練習に集中する時間をとるため、毎年お世話になってきた社会人ビッグバンドをお休みしています。今回はどのバンドを聴きに行こうかと、のんびりと「参戦スケジュール」を作っているところです。
というわけで、今年はジャズフェスに備えて気がもめることもなく、時間はたっぷり。自作の「ジャズメモ」から抜き書き(これ、やってみると、とても役に立つ)してみようと思います。あくまで今後の課題や練習のポイントを整理するためのものです。間違っても、筆者の知識を誰かに伝えたいなどと考えているわけではありません。筆者が向き合うレベルの問題ぐらいならネットで検索すれば事足ります。
<楽しい「Fブルース」>
(2024年8月31日)
コード(和音)進行を意識しながらゆっくり繰り返す。響きを楽しみながら。コードに見合ったスケール(音階)を使う方法と、コードを構成する音を順番に使ってアドリブする方法の二つを組み合わせることができればうれしい。キーに合ったブルーススケールや5音連なりのペンタトニックを使って自由に吹けたらさらにうれしい。
多少のミスは気にせず、とにかく吹き通す。ただし、ミスった理由を練習の中で確かめる必要はある。2小節、4小節・・ごとに繰り返し練習。なかなか思うようにいかないけれど、音の相互関係など、コード(和音)のポイントを頭(と心に?)に刻むつもりで。何よりもリズムに注意。
他の演奏家のアドリブを抜き書きコピーしたメモを別シートにまとめておく。参照可能な状態にしたうえで、必要に応じて演奏中に反復練習する。ゆっくり確実にリズムが身体にしみこむまで。そつなく吹くためのカンニング用紙というよりも、頭にしみこませるためのガイドラインのようなつもりでいると、いいかもしれない。
「Fブルース」は、「ブルース」と呼ばれる独特のコード進行の曲が、「F(ファ)」から始まる音階の上に乗っているという意味。そんな基本的なことも頭に入るまでは結構時間がかかった。
アルトサックスのキー(調性)はもともと「E♭」なので、「ド」を押さえながら吹くと、たとえばピアノなら「E♭」の音が出る。「C(ド)」にはならない。この『ずれ』を調整するため、ピアノの「F」に合わせるにはアルトでは短3度低い「D」の押さえで音を出す必要がある。そんなわけで「Fのブルース」をアルトサックスで吹くには、楽譜のキー(コンサートキーと呼ぶ)を短3度分ずらさなければならない。
今では触ったことのないピアノの鍵盤を無理やり思い浮かべたり、指折り数えたりして、なんとか確認するが、言葉で説明すると、本当にややこしい。イライラしないで地味に前に進めるかどうかが最初の関門とは厳しい話だ。
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