【続・仙台ジャズノート#133】お寺で、ジャズを。仙台・充国寺でライブ

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文】仙台市青葉区新坂町にある充国寺(三浦宏純住職)の本堂にジャズ演奏家が集うイベント「寺ジャズ in充国寺」が2024年9月29日に開かれました。新型コロナウイルスの拡大に伴い、一時は仙台のジャズ演奏家たちも、演奏する機会を完全に失うなど、厳しい状況に追いやられましたが、演奏家自身が危機克服のためのネットワークを自ら立ち上げるなど、音楽ファンとのつながりを保つための取り組みをさまざま立案してきました。満員となった「寺ジャズ」の盛況ぶりを通じて、あれほど厳しい環境にあった若手の成長が目立ち、中堅・ベテラン勢もまた、自分の音楽への自信を深めているように見えました。

菊田邦裕・廣海大地クインテット

菊田邦裕(tp)、廣海大地(sax)、田辺正樹(piano)、山田祐輔(dr)、小美濃悠太(b)

若手らしい、緊張感に満ちたステージが魅力でした。「中堅」と表現するのが適当かもしれません。菊田さん、廣海さん、田辺さんは仙台の若手演奏家で結成している「伊達ジャズクインテット」のメンバー。ニューアルバムをリリースしたばかりとあって、パワー充実。山田さんが提供した「スクエア」が特に聴きごたえがありました。田辺さんアレンジの「荒城の月」も好評でした。

仙台でもおなじみの小美濃さんと、東京中心に活動している山田さんがサポート。なお、山田さんは仙台出身です。筆者は、自在にこなす山田さんのアフロ系のリズムセンスが好きです。 

エネルギッシュなジャズ演奏を披露した菊田邦裕・廣海大地ジャズクインテット

パリャーソ(谷川賢作piano/続木力harmonica)

菊田邦裕・廣海大地クインテットのエネルギッシュなステージの後に登場。二人だけの演奏はやや苦しいか、と思いましたが、大きな勘違いでした。谷川さんのピアノは力強く、感動的。続木さんは、ハーモニカひとつで美しいフレーズを次々に繰り出します。楽器としての「圧」は他の金管・木管楽器に比べて控えめでも、フレーズにこめた思いは聴き手の心深く届きます。

ハーモニカとピアノのデュオグループ「パリャーソ」

「パリャーソ」はポルトガル語で「ピエロ」「道化師」の意味だそうです。「道化師」が見る者の気持ちを激しく揺さぶるように、ジャンルを超えた二人の演奏には説得力がありました。谷川さんが得意とする「弾き語り」はユーモアにあふれ、心から楽しませてくれるものでした。ハーモニカとピアニカの生音によるブルース、お寺で演奏会なのをしゃれて「山寺の和尚さん」をにぎやかに演奏するなど、魅力的なステージでした。

充国寺・住職とコラボ(今更聞けない!?お寺のアレコレ トークショー)

住職の三浦宏純さん、名雪祥代さん、実行委員の中島敏男さんによるトークショー。仏事を当事者として経験したことのある人なら、身近なようでいて、案外分からない問題に悩まされたことがあるはずです。

住職さんに聞いてみよう!楽しかった仏事トーク

「住職さんをどうお呼びすればいいのか」という、最初の方の質問はまさに檀家「あるある」でした。名字を使うのは堅苦しいような気がするし、「和尚さん」では失礼かも・・。住職さんのこたえは「実はわたしも困ることがあります。住職、大住職(先代の住職)ではどうでしょうか」でした。お焼香の動作は1回でいい。(3回でもダメなわけではないようです)

名雪祥代トリオwith Friends

名雪祥代(sax)、小美濃悠太(b)、谷川賢作(piano)、山本純(cello)、山田祐輔(dr)

小美濃さん、谷川さんとの「名雪祥代トリオ」にチェロの山本純さんとドラムの山田祐輔さんがサポートに入りました。名雪さんはクラシックからジャズに転向してちょうど20年になるそうです。レギュラーのトリオは今回も安定感抜群でした。名雪さんが作編曲するオリジナルは、なじみやすいメロディが印象的なことが多く、初めて聴いても、聴き手が置き去りにされることがないのがうれしい。

ジャズ20周年に思いをこめた名雪祥代トリオwith Friends

ジャズ20年の記念新譜が発売されたばかり。筆者も予約していますが、まだ届きません。普通、ライブが何より楽しみなはずですが、今回だけは「待ちに待ったCDを早く聴きたい」「CD聴いていないのに演奏を聴いてしまうのは、なんだかもったいない」と複雑な気持ちです。

コロナ禍の仙台では、他の地域の取り組み同様、ネット配信を軸に演奏の場を確保する一方、演奏家自身が音楽イベントに必要な配信技術を習得し、音楽イベントを主体的に企画する取り組みがさまざま行われました。音楽ファンとの関係を維持しようとする取り組みは、演奏家と地域の関係をより深めました。充国寺を舞台とする「寺ジャズ」も、サックス奏者名雪祥代さんの提案で2022年に始まりました。今年はイベント名称を「寺フェス」から「寺ジャズ」と変更し、ジャズ演奏家の思いをこめたイベントであることを強調しました。実行委員会方式を初めて採用して、より多くの協力、参加を募る方向に舵を切っています。名雪さんは実行委の一人で、プロデューサー。

前回までと同様、名雪さんのスタジオがあるカルチャー拠点「花言葉」とも連携し、「お抹茶振る舞い」、キッチンカー、マルシェ、アートワークショップ、カフェイルボスコのドリップコーヒーの出店などが行われました。

*この連載が本になりました

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