【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】60代も半ば近くになってほぼ月1回の個人レッスンを受けるようになり環境はガラリと変わりました。ジャズ音楽を理解し、身に着けるための多くの課題が向こうからやってくる感じでした。初めのうちは何が何だか分からないままに、とりあえず目の前にぶら下がる課題を追っていました。
吹けば飛ぶような自己流とはいえ、ドラム担当としてはそれなりにジャズ演奏を楽しんでいただけに、アルトサックスの「出来なさ加減」がこたえました。下手をすると、クラリネットに続き、早期断念の予感も。
初期段階からはっきりしていたのは、取り組むべき課題、理解しなければならない事柄があまりにも多く、わずか1時間の個人レッスンの間に出てくる言葉がまず理解できないのでした。言葉が理解できないと、先生の説明がよく分かりません。あやふやな点はその都度、質問したり、予習・復習でしのいだりします。個人レッスンの様子を録音することを認めてもらったので、その気になれば備忘のために書くノートがいくらでもできるのでした。
ジャズ演奏に不可欠なスケール(音階)やコード(和音)など、ジャズの音楽理論は何となく算数に似ているところがありました。しかも、文科系にも手が届く範囲なのがみそ。受験勉強がほぼ50年ぶりに復活した感じといっていいでしょう。多少さぼっても、命をとられるわけではないし、仕事に支障が出るわけでもない。あまりに覚えが悪いので、先生に迷惑をかける(スミマセン)以外は他人の手を煩わせることもありません。定年退職後に設定できる目標としては、知的な刺激や気づきもあって、なかなかいい気分でした。
問題は演奏実技の方です。自分の希望を集約すれば「アドリブ(即興演奏)をやりたい」の一語に尽きます。楽器の操作もろくにできない超初心者が掲げる目標としては、笑ってしまうほどに難しいことが今なら分かるのですが、知らないということは恐ろしい。しかも、ジャズ演奏家たちが楽譜も見ずに軽々とこなすアドリブをできるようになりたいと、本気で考えていました。
ジャズアドリブには、曲の進行に合わせてその場でフレーズを紡いでいく、まるで『神』のようなスタイルと、曲に合わせたアドリブ譜をあらかじめ楽譜(書き譜)に書いておき、本番ではそれを吹くスタイルがあります。「書き譜」の場合、せっかくのアドリブパートがいつも同じということもありうるので、「書き譜」は本当のアドリブとはいえない=ジャズではないという立場もありますが、筆者としてはどちらも立派なジャズと考えています。どちらの場合も、実際のステージでは、他の演奏者のアドリブに刺激されながらさまざまに変化します。演奏者自身の気持ちの盛り上がりに伴い、「書き譜」とは異なるフレーズに展開したりすることもありえます。
ジャズ音楽を演奏することにあこがれる自分にとって「アドリブ」は、ジャズ最大の謎であり、驚異でもあります。個人的には「書き譜」とは別のスタイルの方に関心があります。曲の進行に応じて文字通り即興でメロディを紡ぐようなアドリブが、どのような理論とワザに支えられているのかをぜひ知りたい。
還暦過ぎてこんなことを言い出すのは、いかにも現実離れしていると思う人は、ジャズ音楽についてよくご存じの方です。個人レッスンが始まった当初、わが師匠が「特に男性は理屈から入らないと前に進めないタイプが多い。ややこしいよ、と言うと、それでもいいから教えてくれと言う」と話すのを聞いたことがあります。思えば、還暦過ぎて目標でかすぎ、頭でっかちな生徒をそれとなくさとしてくれたのかもしれません。
【ディスクメモ】 SUNDAY JAZZ a la LIGHTHOUSE VOL.1
ウェストコーストジャズの創業者ハワード・ラムゼイ(HOWARD RUMSEY)が率いたLIGHTHOUSE ALL STARSの作品。1953年、カリフォルニア州ハーモサ・ビーチにあったライブハウスLIGHTHOUSEでのジャムセッションの様子をとらえている。
ジミー・ジュフリー(テナーサックス)、メイナード・ファーガソン(トランペット)、シェリー・マン(ドラム)ら当時活躍していたベテラン、若手ジャズメンが参加している。東の演奏家たちのパワーもすごいけれど、西海岸には学生バンドからそのままプロになったような演奏家が多いような気がする。ラテンタッチのVIVA ZAPATAIが楽しい。ジャズ初心者になじみの深いAll The Things You Areも。
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