【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】フォークソング系の音楽酒場として知られる「WANT YOU(ウォンチュー)」=仙台市青葉区国分町=で、飛び入り自由の「ジャムセッション」があるというので勇気を出して出かけました。誰でも参加できる「低敷居ジャムセッション」がキャッチフレーズ。オルガン担当の白戸エミさんがリーダーを務めるジャズグループ「Sound Jam(サウンドジャム)」の主宰でした。
ジャムセッションは米国で生まれたジャズ音楽特有のスタイルです。クラブでの演奏を終えた演奏家たちが毎夜、思い思いに集まって腕を競い合いました。意欲的な演奏家たちにとって格好の腕試しの場となり、ジャズ音楽のさまざまな魅力を探り当て、広める機会となったことで知られています。
自己流とは言え、ドラムではそれなりにジャズを楽しんできた身にとって、アルトサックスの出来なさ加減はこたえた、と前回書きました。その症状に効く特効薬はないので、とにかく楽器を吹く機会を増やす以外にありませんでした。そんなときにハードルは高そうだけれどジャズ独特の世界である「ジャムセッション」が身近なものになれば、ジャズの歴史や風景に近づくことにもなるかもしれない、と考えました。あらためて振り返ると、理屈と実践のバランスが悪すぎほとんど妄想に近いのですが、あれこれ考えながらでも、まずやってみるしかありません。かつて鳴らした(笑)運動部仕込みの、地味な練習はやがて必ず実を結ぶという確信が70過ぎの楽観に結びついているようです。
Sound Jamリーダーの白戸さんは「ジャムセッションは緊張を強いられる独特な場所です。 実際、自分が人生ではじめて行ったジャムセッションでは、セッション中にホストから強く厳しい言葉が投げられ、ダメ出しの連続でした。ピアノを弾く手が震えた記憶があります」と話しています。今回のSound JamライブはWant You初登場。第1部のライブはスタンダード中心で親しみやすい雰囲気でした。第2部のジャムセッションも和やかで、最後は参加者全員による合同演奏となって盛り上がりました。
筆者自身も、初心者以上中級者未満のジャムセッションがないかと、探していますが、現実にはそれなりの水準は必要で、下手をするとジャムセッションの雰囲気を壊し、他の出演者に迷惑をかけることになりかねません。過去に参加したジャムセッションは3回。いずれの場合も、曲が始まった途端に、頭と気持ちと楽器を操作する指の運び(運指)がばらばらに。4回目の今回は、Sound Jamのメンバーたちの飾らない雰囲気づくりに乗せられたせいか、今までよりは自分のやっていることが見えたように思います。
主宰者の意向で演奏したい曲をあらかじめ伝えてありました。たまたま個人レッスンの課題曲になっているIt Could Happen To Youと、大好きなSummertime。It Could Happen To Youは希望通り演奏させてもらいました。5割ぐらいの出来かなあ。Summertimeは参加者多数、時間切れのためにカット。その代わり以前、ドラムで5年間もお世話になった社会人のビッグバンドのメンバー(トランペット)が希望したAll Of Meに飛び入り参加しました。
All Of Meは有名なスタンダードです。メロディは知っているけれどもまったく演奏したことがありません。楽譜を確認すると、アルトサックスの楽譜で#が3つなので曲全体のキーは恐らくAメジャー。アドリブは、「Aメジャーペンタトニック」と呼ばれるスケール(音階)中心に吹き、調子が外れそうになったらコードノートを拾う。さらに余裕があれば「Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ」という(理屈で成り立つ)スケールを使う-方針で行くことにバタバタと決めました。自信があるわけでもないので非常に緊張しました。聴き手はジャムセッションの参加者とその応援団。互いに胸の内、手の内が素通し状態です。例によって本番の演奏ではほほえましいほどに予想しなかったことが起きましたが、楽しい時間はあっという間に過ぎてゆくのでした。
【ディスクメモ】EAST COASTING BY CHARLIE MINGUS(イーストコ―スティング バイ チャーリー・ミンガス)
問題作「直立猿人」(1956年)以来のミンガスは、どれをとっても意欲作ばかりです。ミンガスサウンドに夢中になった20代を思い出します。ミンガスの情熱もさることながら当時「ワークショップ」と呼ばれた若手の演奏も魅力的。リーダーとして彼らの力を引き出すことに力を注いでいるのが伝わってきます。A面の1曲目にスタンダードの「メモリーズ・オブ・ユー」を置き、他はすべてオリジナル。どの曲もミンガスサウンドの魅力に富む自信作です。「ウェスト・コースト・ゴースト」のミンガスのソロが聴きもの。ジミー・ネッパーのトロンボーン、ビル・エバンスのピアノがいい。
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