【続・仙台ジャズノート#37】「古い歌謡曲みたい」?裏拍がジャズの要

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】ジャズ音楽がジャズとして成立するための要素は限りなくあります。自分のリズム感覚を振り返ってみて、なるほどこれは予想以上に難しいと感じられたのが「裏拍(うらはく)=ダウンビート」の問題でした。1小節を四分音符4つで考える場合に1、3拍目を「表拍(おもてはく)」、2拍目と4拍目を「裏拍」と呼びます。ジャズ音楽のリズムはこの「裏拍」を強めに感じることで成り立っています。裏拍をいかに的確に、どれだけセンス良く強調できるかは、地味ながら非常に重要なポイントです。

一方、民謡なら「ヤーレンソーラン」、歌謡曲なら舟木一夫以前の古い曲たちのような、ロック系の音楽の影響を受けていない時代の歌謡曲などは1拍、3拍を強めに演奏する「表拍」であることが多いようです。日本人は「裏拍」よりも「表拍」に身体が反応する傾向が強いらしく、コンサートなどで手拍子が入る場面で、裏表が逆になることは珍しくありません。

たどたどしさ満開のアドリブ修行の身では、ちょっと油断すると、「表拍」が顔を出しがちです。個人レッスンでもよく指摘されます。週に1度のペースで練習している社会人バンドでも、いつの間にか表裏が逆転しているのが自分でも分かります。つい先日も、ALL THE THINGS YOU AREのメロディ部で高音域から下がってくるフレーズでミスし、アルトサックス(1)を担当しているリーダーに指摘されたばかりです。

筆者が参加している社会人バンド。休憩中です。以前は歌謡曲、ポップスなんでもありでしたが、15年ほど前にジャズ1本に絞って活動中。週1のペースで練習しています。

自分でも少し嫌になるのですが、以下は個人レッスンの際に、師匠から投げられた言葉。もちろん、裏拍だけが問題なのではなく、音の選び方や表情のつけ方など、未熟な本人には知りえないさまざまな修正を要するんだろうと思います。

「あっ、歌謡曲みたいだ」
「フォークソングだね」
「どこかヨーロッパの曲のようです」
「沖縄の民謡みたいだ」

「歌謡曲みたいだ」と指摘される点は実はけっこう深刻です。歌謡曲とは言わなくてもグループサウンズのような歌謡曲の延長線上で育ってきた世代であることは間違いないので、何も考えなければ歌謡曲的なフレーズが浮かびます。悪いことに、ジャズ音楽でよく使われるスケール(単純に言えばドレミファソラシドの変形です)の中には、「ヨナ抜き」なんていって、もともと演歌と同じ音列になっているスケール(メジャーのペンタトニックスケール)があります。そのスケールがジャズアドリブ演奏の基本技でもあるので、ますますややこしいことになります。このあたりを意識して使い分けることができるようにならないと要はセンスの問題となりかねません。ダサいか、それほどでもないか・・。いずれにしろ簡単な話ではありません。

【ディスクメモ】バド・フリーマン/シカゴ・オースチン・ハイスクール・ジャズ IN Hi-Fi

テナーサックス奏者バド・フリーマンBud Freemanが率いるディキシーランドジャズのグループSUMMA CUM LAUDE ORCHESTRAが1957年にニューヨークで吹きこんだ作品です。フリーマンはシカゴを拠点に活躍した演奏者の一人で「シカゴ派」の一人。テナー奏者としては「異色」と言われた演奏者ですが、今聴くと、彼なりの独特のサウンドを感じるけれど、異色といって別扱いするほどではないだろうという感じです。せっかくジャズなのに。

歴史的に見てシカゴはニューオリンズで生まれたジャズがスイングジャズ期を迎えた街。ディキシーにテナーサックスという異色のスタイルからは、シカゴからニューヨークへと移るジャズの変遷と多様な音楽性を感じとれます。「ハイスクール・ジャズ」といっても、高校生のバンドではありません。若かった昔の仲間気分をあえて引きずってみせたネーミングでしょう。B面2曲目のブルース Jack Hits The Roadが気に入っています。

ライナーノーツによるとメンバーは次の通り。
Bud Freeman(ts)、Jimmy McPartland(tp)、Tyree Glenn(tb)、Hack Teagarden(tb)、Billy Butterfield(tp)、Pee Wee Russell(cl)、Peanuts Hucko(cl)、George Wettling(ds)、Milt Hinton(b)、Al Hall(b)、Al Casamenti(g)、Dick Cary(p)、Gene Schroeder(p)、Peanuts Hucko(cl)、Leonard Gaskin(b)

【演奏曲目】(レコードです)
●A面
China Boy、Sugar、Lisa、Nobody’s Sweetheart、Chicago、At Sundown
●B面
Prince Of Wails、Jack Hits The Road、Forty-Seventh And State、There’ll Be Some Changes Made、At The Jazz Band Ball

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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