【仙台ジャズノート】回想の中の「キャバレー」(1)仕事場であり、修業の場でもあった

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】PART2「現場を見る」で、身近なジャズの現場を取材しているうちに、いわゆる団塊の世代前後の人たちがジャズ音楽の現場に立ち続けている姿に触れることができました。音楽的な志向や年齢、職業など、生活背景もさまざまながら異世代がジョイントする音楽空間からはいかにも少子高齢社会らしいエネルギーが伝わってきます。「仙台ジャズノート」PART3では、シニア世代の演奏家たちの回想にしばしば登場する「キャバレー」に焦点を当てながら「ジャズ現場」の移り変わりについて考えます。

「キャバレー」と一口に言っても、若い世代には想像しがたいかもしれません。「キャバレー」を読み解くには本来、もっと多様で、社会的な評価に耐えうる設定を要しますが、ここではジャズを軸とする音楽の現場としての意味合いに注目します。「キャバレーの時代」を実感し、身近なジャズ現場を評価するための手掛かりとなれば幸いです。

「キャバレー」は終戦直後の混乱期を経て昭和の復興軌道に重なるように登場し、70年代初めにかけて、全国各地のネオン街を彩りました。高度経済成長に向かってひた走った昭和を象徴する夜の遊興施設群です。仙台市内でも、東北一の歓楽街として知られる国分町や錦町、花京院などを中心にキャバレー、ナイトクラブ、「アルサロ(=アルバイトサロン)」などが活発に展開しました。趣向を凝らしたショーや生バンドの演奏で踊れるダンスホール、ホステスに接待されながらの飲食・・。

当時のミュージシャンたちにとって、キャバレーは仕事の場であり、音楽的な修業の場でもありました。それは社会的に準備された音楽修行のためのシステムだったと言ってもいいでしょう。キャバレーの時代が元気だったころは、音楽修業の場と就労の道を同時に提供する機会が細々ながらありました。これに対して、現代の身近な音楽現場を支える演奏者の多くは、スタジオや音響資材の確保などの費用を自ら負担し、ライブや定期演奏会などのチケット販売等にも自ら力を入れながら音楽活動を維持しています。音楽で食べていけるだけの環境が細っているところに、今回の新型コロナウイルス禍がやってきました。多くの個人事業者やフリーの演奏家らの台所事情がとりわけ厳しい理由でもあります。

カラオケが登場してからは生バンドを置くキャバレーはどんどん姿を消し、比較的小規模なライブハウス形式の演奏の場や大手企業が経営する音楽教室など、経験を積んだミュージシャンたちがそれぞれの感性や技術を生かして指導的な役割を果たす環境にとって代わられることになりました。

写真をご覧ください。仙台在住の画家小野寺純一さん(72)の作品「キャバレークラウン」です。「クラウン」は仙台市青葉区錦町にあったキャバレーです。

小野寺さんの作品は南の国を連想させる彩色が印象的です。昭和51年(1976年)3月31日に廃止された仙台市電もしっかり描かれています。当時を知る人たちにとっては懐かしさとともに、南国調の「クラウン」を頭の中に描くためのスイッチが入るのではないでしょうか。どこか不思議で魅力的な「キャバレー」世界です。(次回に続く)

【連載】仙台ジャズノート
1.プロローグ
(1)身近なところで
(2)「なぜジャズ?」「なぜ今?」「なぜ仙台?」
(3)ジャズは難しい?

2.「現場を見る」
(1) 子どもたちがスイングする ブライト・キッズ
(2) 超難曲「SPAIN」に挑戦!仙台市立八木山小学校バンドサークル “夢色音楽隊”
(3)リジェンドフレーズに迫る 公開練習会から
(4)若い衆とビバップ 公開練習会より
(5)「古き良き時代」を追うビバップス
(6)「ジャズを身近に」
(7)小さなまちでベイシースタイル ニューポップス
(8)持続する志 あるドラマーの場合
(9)世界を旅するジャズ サックス奏者林宏樹さん
(10)クラシックからの転身 サックス奏者名雪祥代さんの場合
(11)「911」を経て仙台へ トランペット奏者沢野源裕さんに聞く①
(12)英語のリズムで トランペット奏者沢野源裕さんに聞く②
(13)コピーが大事。書き留めるな/トランペット奏者沢野源裕さんに聞く③

3.回想の中の「キャバレー」
(1)仕事場であり、修業の場でもあった
(2)南国ムードの「クラウン」小野寺純一さんの世界

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