【仙台ジャズノート】コピーが大事。書き留めるな トランペット奏者沢野源裕さんに聞く③

佐藤和文=メディアプロジェクト仙台】プロのトランペット奏者沢野源裕さん(49)=仙台出身=に話をうかがいました。3回に分けてお届けしてきたインタビュー、最終回です。

-個人的な話で恐縮ですが、学生時代から自己流で続けてきたドラムに加え、60過ぎてからアルトサックスを始めました。聞きかじりのように今に至っています。これまでのお話によれば、とても長い道のりのように感じます。自分がその場所に行くためのノウハウ集があるわけでもないでしょうし・・。(笑)

沢野:それ(ノウハウ集)が確立されて何かの形で示されてはいませんからね。どのようにアプローチして、どういうことをどんな手順でやっていくかを示すモデルがない。そんな環境でジャズを覚えていくには「コピー」がまず絶対です。あとは、その理論を勉強して学術的にどういう音を使えばいいのかについて、サポートしながらやっていくのが速いかなと思います。

世界の一流の人たちに出会ったときに「どういう練習をしたらいいですか」と質問したが、誰もが「コピーしろ」としか言わない。で、ある人は、(コピーしたら)それを書くな、読むな-Don’t write and don’t read.と言います。耳で何回も聴いてとにかく真似しろとしか言わない。僕ももちろんそう思っています。ジャズを「言語」というアプローチでとらえるとしたら、それしかない。そうやって自分の中に何か確立すれば本を見て覚えることがやっとできる。そもそも分からない人には本を読む力はありません。無理して読んでも意味が分からない。特にわれわれがしゃべっている言語とは違うので、違うしゃべり方をしなければならない。発音の仕方を、単語のレベルからなまりも含めて知らないとジャズはできない。

(沢野さん提供写真)

-アマチュアの世界では、ジャズが好きでやっている人たちの間でもアドリブについての考え方がすごくばらばら、です。

沢野:そうですね。日本の音楽教育の在り方に問題があるんです。たとえば吹奏楽部やってきた人って、もともとクラシックジャンルが多い。その中でも言語が違い、しゃべり方も違うことを教わりません。教えられる人もいないですよね。そもそもクラシックと言ったって、今とらえられている感覚とは違うもので、ある時代、ある時代を乗り越えてきた。ある時代は即興するのが当たり前だった。モーツァルトは即興がものすごく得意だった。即興でやるのが普通だった時代があり、それがどんどん複雑化して、音楽的に難しくなり、進化する過程でタブーを破っていく。それが進化だった。12個しか音がない中で、以前タブーとされていた音を使うとか、どんどん聞きづらいものになってきて、気軽にインプロビゼーションがとれなくなった。バロック、古典ぐらいまでだったら決まりきった形式でしかやらない。範囲が狭く即興もしやすかったが、だんだんやらなくなった。

特に日本の場合、ジャズとクラシックは対極にある、みたいな変な分け方をする。アメリカだと、とらえ方として言葉が違うだけだし、職業としてはたとえばクラシックでオケでやっている人が、普通にジャズを演奏してインプロビゼーションも普通にやる。またはジャズがメーンの仕事だけど、クラシックが普通に上手というのが当たり前です。周りにそういう人はいっぱいいた。僕自身ももともとクラシック育ちです。3歳からピアノを習い、9歳でトランペットに移りました。

-クラシックとジャズでは、なぜか音楽としての扱われ方が異なります。

沢野:ものすごく保守的な国民性ということもあります。カテゴリーを無駄に分けたがって壁をつくる。音楽教育に関してはずーっとそうですよね。クラシックは高尚なものという前提があり、学校でもクラシックしか教えない。それに対してジャズはバンドマンがやるもの-みたいな。クラシックだろうとジャズだろうとできるんだけれど、サポートとしての教育を学校でやっていたクラシックと、その機会をまったく持てなかったジャズとの違いでしょうかね。

単純に仕事量の違いかなあ。僕の先輩方の時代だと、キャバレーやクラブで働く機会があり、楽器を持っていったら吹き真似してお金をもらったなんていう話があった時代です。楽器を吹けない人が無理してやるので、ジャズは音が汚いとか言われたんだろうけど、「ジャズは音が汚い」わけじゃなくて、楽器をできない人が出す音が汚いのは当たり前じゃないかと思う。楽器はまずいいサウンドを出すのが基本です。クラシックもジャズも関係ない。

-ジャズ特有の跳ねる感じのリズムをどう習得すればいいでしょう。

沢野:たとえばカウント・ベイシーのバウンド、フィールがあります。バウンスの仕方が強いけど、ダウンビート、拍のアタマはあっていても、上っ面だけ考えて分かっていない人たちがやると、もたって遅れるだけなんです。カウント・ベイシーの特徴で、音が3つ、4つからなる「単語」を丸ごと覚えて組み合わせ、ある表現をする。そこを理解しないと、ただ重く、遅くなっていく。

アマチュアの9割9分はそのことを知らないかもしれません。東北大のジャズオケも指導しているけれど、そういうポイントも、しゃべり方として、目に見える形でグラフ的なものを書いたりして伝えるようにしている。もともとこういうイーブンの位置にあって、例えば仮にジャズのしゃべり方でスイングしていたとしたらこの位置で、カウント・ベイシーのフレーズをしゃべるときはこういう位置にと図解で示します。しゃべり方としても教える。学術的と言うか、力学的というか、アプローチも教えた方が理解が速い。

僕が言っていることだけやって身につくとは思えない。結局、言語としての発音練習とか、ジャズを聴くときにどういうしゃべり方をしているのかというアプローチでたくさん聴いてもらわないと理解には至らない。

―それはジャズ特有のノリをしっかり感じながらジャズを聴くのが基本という理解でいいですか?

沢野:そうですね。あとさっきから言っているのは、音符一個一個が文字で、3つ4つで単語が構成されていて、それが連なって文章になって、どこを強調するか、日本語の割と平坦な調子ではなく、英語としてすごく波のあるようなしゃべり方をする必要がある。それと、実際にしゃべって練習する必要がある。楽器だけではなく。口でしゃべったものが単に楽器を通して出ていくことを覚えておいてほしい。

-3つ、4つで単語と言うのは具体的にどういうことですか?

沢野:ジャズの基本として4/4拍子で八分音符の単位であれば1・3拍目のアップビートから始まり、それぞれ3・1拍目のダウンビートで終わる。「ワンツースリー(フォ)タララ」の「タララ」が始まり。西暦1600年ぐらいに表記の方法として小節線ができたために、音楽がそこから始まるという勘違いを世界中がしてしまった。ほんとは小節のアタマは、始まりではなく終わるところなんです。それが「アウフタクト(弱起。楽曲が1拍目以外から始まること)」。前のところからここに向かって終わるんです。昭和歌謡なんて聞くと、歌詞がそうなっているのですごく美しい。現代だと、そうではないのがたくさんあるので、なんだか聴きづらいなあと思う。

その昔、聴いて覚えるという、誰もでもできたことが小節線ができたことによってできなくなってしまった。それを知っているある人が自分の愛弟子に教えて、それをずっと伝えるということをしているから、たまに名演をする演奏家みたいな言われ方をするが、本当は誰でもできることです。それなのに、教える、教えられるの環境になると、なぜか教える方が隠してしまうんですね。それ(教えること)で生活するわけだから・・。

-昔、キャバレーなどで仕事をした世代が、今も元気で演奏活動を続けています。どう思いますか?ほとんどがアマチュアで、ジャズのスタンダードを現場でつないでいるということはいえると思います。

沢野:実際に彼ら自身がやったり、露出する・発信すること自体はもちろんいいことです。僕も100%正しいかどうかなんてことは知らないし、たとえ間違っていてもですよ。そういうのをやり続けることは大事だと思うし、そもそもいい悪い、合っている、合っていないを置いといて、ジャズという音楽を発信することによって、ジャズという音楽があるんだ、こういう感じなんだろうかということは少なくとも伝わります。先輩方の昔からの活動は尊重したいと思います。

―宮城県山元町の「ニューポップス」のリーダーの話を聞きました。東日本大震災を乗り越えてなお、ベイシースタイルのビッグバンドを維持していることに。心動きました。

沢野:貴重ですね。継続は力なり、です。

【連載】仙台ジャズノート
1.プロローグ
(1)身近なところで
(2)「なぜジャズ?」「なぜ今?」「なぜ仙台?」
(3)ジャズは難しい?

2.「現場を見る」
(1) 子どもたちがスイングする ブライト・キッズ
(2) 超難曲「SPAIN」に挑戦!仙台市立八木山小学校バンドサークル “夢色音楽隊”
(3)リジェンドフレーズに迫る 公開練習会から
(4)若い衆とビバップ 公開練習会より
(5)「古き良き時代」を追うビバップス
(6)「ジャズを身近に」
(7)小さなまちでベイシースタイル ニューポップス
(8)持続する志 あるドラマーの場合
(9)世界を旅するジャズ サックス奏者林宏樹さん
(10)クラシックからの転身 サックス奏者名雪祥代さんの場合
(11)「911」を経て仙台へ トランペット奏者沢野源裕さんに聞く①
(12)英語のリズムで トランペット奏者沢野源裕さんに聞く②
(13)コピーが大事。書き留めるな/トランペット奏者沢野源裕さんに聞く③

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