【仙台ジャズノート】英語のリズムで トランペット奏者沢野源裕さんに聞く②

佐藤和文=メディアプロジェクト仙台】プロのトランペット奏者沢野源裕さん(49)=仙台出身=に話をうかがいました。「仙台ジャズノート」PART2「現場を見る」のまとめになればと思います。インタビューは3回に分けてお届けします。

沢野:楽器の操作を力学で考えることを完全に身に着けた後で、言語と音楽の関係について一生懸命に勉強しました。たとえば英語にもアフロなまりの英語があるので、アフロなまりの英語の派生とジャズの発音の関係について勉強した。自分ではしゃべれないけれどイタリア語、スペイン語、フランス語、ドイツ語を勉強した。どこで派生して、どう変化していったかなどです。

-言語の勉強と楽器の演奏はどう関係しますか?

沢野:管楽器の場合、特にトランペットは最も原始的な楽器なので、口でしゃべったことがそのままスピーカーを通って出ます。そういう楽器なんです。譜面の表記は芝居のセリフのようなものです。それを演奏者がそれぞれの言葉でしゃべるわけです。地域のなまりいっぱいに。そうすると、同じ譜面に書いてあることでも、出てくるものが全部違います。いわゆるクラシックと呼ばれる、キリスト教の音楽が発展した音楽でも、ヨーロッパ全体を俯瞰し、歴史的な流れを考えればだいぶ違いがあります。

(楽器を口に当てて歌うだけ-と語る沢野さん)

ジャズの場合、アフリカなまりのアメリカ英語で歌うわけです。英語はなまりの多い言語で、母音が重要です。アフリカなまりが加わったしゃべり方をして初めて、いわゆるジャズのしゃべり方になるんです。アフリカなまりでしゃべると、実はイーブンで言うのが難しい。それは筋肉発達に関係があり、そのなまりのしゃべり方でやると、均等にいかずに、音の長さが変わるんです。そのフィールを振り子が振れる様子にたとえ「スイング」と名付けました。

ジャズの重要な特徴である「スイング」のことを音の長さで考える人が多い。なぜそうなるかを考えずに、なんとなく上っ面をマネしてやってきた歴史があります。

そもそも黒人の人たちがしゃべっている言葉、現代の言葉で言うジャズ・アーティキュレーションと呼ばれる子音の使い方が昔から現代に至るまで同じなんです。ちょっと違うのは「スイングジャズの時代」。白人たちが黒人のフィールを真似した時代でした。あまりにもわざとらしく、基本的にはそんなしゃべり方ではないのに、わざと大げさにし、誇張したのがスイングジャズといえます。

-裏を返すと、だからスイングジャズは分かりやすい、楽しい、踊れるということになりますか?

沢野:その通りです。代表的なバンドで言うとグレン・ミラー楽団。スイングの感じ、バウンス(跳ねあがる)の感じが非常に強いのが特徴的です。以前に蓄音機から出る昔のスイングジャズの音を聴いたことがあります。非常にわざとらしく聴こえました。本当にこんなんでやるのかなっていうぐらいでした。ものすごく極端にやっている時代があったんですね。

―話を戻します。仙台に戻ってからは全部ご自分で身につけたんですか?

沢野:本を見たり、ネットで調べたり・・。特に先生に教わるということをしていないので、自分で勉強しました。確認のために専門家には聞きました。専門家が着目していなかったところにも着目しているので、オタクなんだね、と言われました。確かにオタク気質なんですね。

-沢野さんのライブをお聴きすれば力学プラス言語の研究の成果が表れていると考えていいですか?

沢野:はい。力学で考えたことは、もうすっかり身についているので、そこを考えながら演奏することは一切ありません。今は、もう完全に、ラッパを口に当てて、しゃべる、歌う、終わる、です。それは結構前からそうなっています。楽器をコントロールすることは一切考えていません。

ジャズはインプロビゼーション(即興演奏)に特化した音楽です。即興なのでフリースピーチが基本です。相当量のボキャブラリーがないとできない。われわれがここでしゃべっているのと同じことをするだけなんで、あるテーマまたはトピックがあって、ジャズの場合だと、どういう調で、どういう進行でやるかがありますけど、そういうテーマに沿ってフリースピーチをするのと同じことなんです。要はフレーズをたくさん覚え、その組み合わせをたくさん知っていないとインプロビゼーションをとれない。

―いろいろなフレーズを覚え、自分のものにし、組み合わせて、自分の考えた通りに音を出す。ものすごく長い道のりですよね。

沢野:ものすごいです。われわれが今日本語をしゃべっているのと、同じ作業をする必要があるんです。だから結局、音で聴いて、マネして単語を認識できるようになり、単語をしゃべるようになって、単語をどうつないで文章にするかという過程がある。それと全く同じ。有名なプレイヤーのフレーズを覚えても、吹けるようにはならない。誰かのソロを覚えて、いわば長文を暗記しても自由に何かを言えるようになるわけではありません。ある文章だけを覚えてそれを組み合わせたって、自分の言葉としては人に認識してもらえない。だから、もっと単語のレベルで覚える必要があるわけです。(次回に続く)

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

【連載】仙台ジャズノート
1.プロローグ
(1)身近なところで
(2)「なぜジャズ?」「なぜ今?」「なぜ仙台?」
(3)ジャズは難しい?

2.「現場を見る」
(1) 子どもたちがスイングする ブライト・キッズ
(2) 超難曲「SPAIN」に挑戦!仙台市立八木山小学校バンドサークル “夢色音楽隊”
(3)リジェンドフレーズに迫る 公開練習会から
(4)若い衆とビバップ 公開練習会より
(5)「古き良き時代」を追うビバップス
(6)「ジャズを身近に」
(7)小さなまちでベイシースタイル ニューポップス
(8)持続する志 あるドラマーの場合
(9)世界を旅するジャズ サックス奏者林宏樹さん
(10)クラシックからの転身 サックス奏者名雪祥代さんの場合
(11)「911」を経て仙台へ トランペット奏者沢野源裕さんに聞く①
(12)【仙台ジャズノート】英語のリズムで トランペット奏者沢野源裕さんに聞く②
(13)コピーが大事。書き留めるな トランペット奏者沢野源裕さんに聞く③

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