【続・仙台ジャズノート#31】課題が次から次へとやってくる。「高齢社会」とジャズあれこれ

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】「枯葉(Autumn Leaves)」「ブルーボッサ(Blue Bossa)」(ケニー・ドーハム)などの初級者向けといわれる曲を実践的に学べるのは本当に楽しいことでした。いろいろなタイプのソロプレイヤーに合わせながら、裏方的に音楽を作るという意味で、どちらかと言えば性に合っているのはドラムの方だと思いますが、「枯葉」や「ブルーボッサ」のソロを前で吹く経験は、まさに新しい世界でした。

なお、今後、この連載で記述する音楽理論や演奏技術に関する筆者の感想や意見は、還暦過ぎてメロディ楽器を始めた初心者が垣間見た側面を切り取っているにすぎません。TOHOKU360の連載「仙台ジャズノート」(2020年2月初めから9月末まで連載。金風舎から出版)で紹介した、多くの演奏家へのインタビューを通じて手探りした内容を多く含んでいますが、何と言っても60代半ば近くになってほとんど衝動的に始めたことです。とんでもない勘違いや明らかな間違いを含んでいる可能性もあります。お心当たりのある方は、メールやフェイスブックのメッセージなどでそっとお知らせいただければうれしいです。

初めのうちはもっぱらアドリブの基礎編でも楽しくやれるようになりたいと勝手に盛り上がっていました。しかし、実際はアドリブだけでなく、テーマ(メロディ)をしっかり吹ききったり、他の演奏者と息を合わせてハーモニーを作り出す合奏の面でも、入門者がクリアすべき課題はさまざまです。基礎的なトレーニングだけでも、メロディ楽器の複雑な操作性や呼吸器系の楽器としての難しさとあいまって課題が列をなしてやってくる感じです。

「ブルーボッサ」の楽譜と虎の巻を兼ねた「内緒メモ」。知識の量によって楽譜の見え方が変わってくるのが不思議。

「アドリブなら結局は、どんなでたらめをやっても自分の問題と言えば言えるけれど、ハーモニーは人の演奏をよく聞いて合わせなければならない。うまくやらないと人に迷惑をかける」

同じバンドでアルトサックスを担当しているミュージシャンに繰り返し言われてきた言葉です。これらの問題に加えて最近の練習場では、筆者の発音が楽譜の指定よりも遅れ気味になるたびに、該当箇所のやり直しが頻発。これも基礎練習の不足が原因です。フレーズの歯切れの良さを左右する「タンギング」(舌で音を切る技術)が甘く、楽譜が指定するタイミングで音を出せないのが原因です。常に意識していればまだましなのですが、演奏のさ中には、気になることが多々あるもので、何かに気を取られても、タイミングが怪しくなることがあります。どんなに素晴らしいフレーズでも、もったりと、重荷を引きずっているように聴こえては台なしです。

それもこれも、吹奏楽などの経験がないため、譜面を追いかけるのが精いっぱいで、先に先にと読む力が身に着いていないためです。楽譜を読む力をつけるにはさまざまな条件下で実際の演奏を繰り返す以外にありません。

ドラムからアルトサックスに移った直後の自分を振り返ると、確かにひどかったと思います。とにかく音が出ていればいいと言わんばかりのアドリブもどきに加えて、甘いチューニング(音合わせ、調律)。自分の楽器の音量を制御できないため、隣の演奏者の音さえ耳に入らないことは今でもあります。楽譜には音量を押さえるように指示してあるのに、ハーモニー壊しの音をしきりに響かせたり・・。

ごく初心者にとっては、恥ずかしがらずに音を出す勇気を絞り出すにはそれなりのきっかけが大切です。たとえ出発点が「アドリブもどき」でも、徐々に修正することで、何が悪かったのかをつかむことができればいいのではないか。

それにしても指任せに音を並べるだけのアドリブもどきが、聴く側にとっていかに酷なことであるかは年季だけは入っているリスナーの立場になればすぐ分かることなのに、60代半ばの超還暦おやじはひたすら気持ち良さそうなのでありました。ほとんど騒音でしかないアドリブもどきを、他のメンバーがよく我慢してくれたものです。今や感謝しかありません。

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【ディスクメモ】“WHAT HAPPENS?… Art Farmer-Phil Woods Together”

1968年に吹き込まれたフィル・ウッズ(アルトサックス)とアート・ファーマー(フリューゲルホルン)の共演盤。フィル・ウッズは筆者がジャズを聴くきっかけを与えてくれたミュージシャンの一人です。チャーリー・パーカーの信奉者。アンリ・テキシェのベース、ダニエル・ユメールのドラムは「ヨーロピアン・リズムマシン」としてウッズの欧州における活動のコアとなった。マーシャル・ソラール(ピアノ)が付き合っています。A面3曲目で「ブルーボッサ」を取り上げている。ハイテンポなイントロのラテンリズムのエネルギッシュなこと。圧倒されます。特にシンバルレガート。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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