【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】ジャズ音楽を何とか演奏できるようになりたいものだと思って、あれこれやっているなかでも、どうにも情けないのがいわゆる「ロスト(LOST)」の問題です。曲の演奏中に、自分がどこを吹いているのか分からなくなることを「ロストする」といいます。他の課題と違って何かを覚えれば解決するというものでもない。何かに気を取られていて曲の始まりにわずかに乗り遅れるような、油断系の症状です。
研究社のネット辞典をながめると「ロスト」の意味は「失われた,遺失した,失った; 行方不明の」とあります。加えて「負けた,取りそこなった; 失敗した」「浪費した,むだをした」-という意味もあるそうです。自己流だったドラムでは経験したことのない状態です。合奏経験の乏しい初心者なら普通にあることかもしれませんが、曲がりなりにもドラムを通じてリズムやテンポには自信があったのに、一体どういうわけなんでしょうか。
そう言えば、自分を見失った点では、あれも「ロスト」体験だったなあと思う出来事が20代に一度だけありました。当時、普通に行われていたダンスパーティで演奏の仕事をしていた際、当時担当していたドラムの合図で演奏を始めてみたら、ドラムだけなぜかまるで違うリズムが走り始めました。苦し紛れに途中修正しようとしたのですが、駄目でした。フロアの前列に陣取っている常連たちがニヤニヤ笑っていました。仕方がありません。急きょ、演奏を取りやめ、再スタート。照れ隠しに自分も笑っていたはずですが、再スタートしてもやはり違うリズムが・・。文字通り真っ青になりました。どうやって軌道修正したのか思い出すことさえできません。他の楽器の音が聴こえないなんてこともなかったのに、神経と手足の動きが完全にチグハグになったようです。
いずれにしろ自分の感覚がまったく信用できなくなる瞬間はとても恐ろしいものです。アルトサックスに移ってからは、ちょっと油断するとロストするタイプであることが判明したので、注意するようにしています。
ロストしているときは周りの音が聞こえていないことが多いようです。耳の中が自分の音でいっぱいになって他の楽器の音が聞こえていない状態です。リズムがしっかりしていれば、それでも何とかなるような気がしますが、肝心のリズムがずれてしまう。せっかくの合奏なのに情けない話です。
サックスはもともと音の大きな楽器です。自分のサックスの音が不自然に大きいせいで、他の楽器の音が聴こえないのかもしれません。しかし、音量のことを言えば、ドラムはもっとでかい音がしますが、自分のドラムの音量のため他の楽器の音が聴こえないなんて感じたことはありません。(ドラムがうるさいと言われたことはありますが・・)
そんなわけで今や、リズムやテンポへの自信なんてどこに行ったのか影も形もありません。であればチューバやスーザホン、バンジョーが大きくリズムを刻むディキシーランドジャズ(ニューオーリンズジャズ)を聴き直し、リズムをしっかり感じる練習でもしようかなあ、と思うきょうこのごろです。
【ディスクメモ】KINGN OLIVER THE GREAT 1923 GENNETTS
ディキシーランドジャズの歴史を感じさせる1枚。ジョー・キング・オリバーはコルネット奏者で人気グループ「クレオール・ジャズ・バンド」を率いたバンドリーダーです。1923年の録音。Dipper Mouth BluesやCanal Street Bluesなど彼自身の手になる曲を実際に聴くことができます。
同時に、同じコルネット奏者でやがてジャズ界の大スターとなるルイ・アームストロングがセカンドコルネットで登場し、Chimes BluesとFroggie Mooreで躍動的なソロを披露しています。Chimes Bluesはルイ・アームストロングが初めて録音した曲でもあります。アームストロングがオリバー師匠に引き上げられ、音楽家としての道をまっしぐらに進むきっかけとなった作品です。
▶Side A
Just Gone
Canal Street Blues
Mandy Lee Blues
I’m Going Away To Wear You Off My Mind
Chimes Blues
Weather Bird Rag
Dipper Mouth Blues
▶Side B
Froggie Moore
Snake Rag
Alligator Hop
Zulus Ball
Working Man Blues
Krooked Blues
【この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。
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