【続・仙台ジャズノート#54】ジャズの楽しみ方をまた見つけた!

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】幅広い活動で人気のドラマー江藤良人さんのトリオのライブがあるというので、仙台市青葉区のジャズバー「モンドボンゴ」に出掛けました。あまり聴く機会のない「コードレス」の編成でした。「コードレス」の編成では、アドリブ演奏を支え、ジャズっぽい雰囲気を醸し出すピアノやギターが参加しません。コード楽器の伴奏がない分、ソロ演奏者が自由になる、と聞いたことがありますが、本当のところどうなんでしょう。60代半ばでアルトサックスを始めたジャズ初級者にとっては難しすぎる問題でしたが、仙台在住の菊田邦裕さん(トランペット、フリューゲルホーン)と岩谷真さん(ベース)が江藤さんのパワードラムと渡り合う様子は文句なしに楽しいものでした。

熱のこもったインタープレイを繰り広げた江藤良人Sendai Super Trioグループ。「コードレス」の演奏をもっと聴きたい。=2023年2月15日、仙台市青葉区の「モンドボンゴ」

江藤さんのジャズドラムはロックやファンク系のリズム世界への広がりを強く感じさせます。8ビートや16ビートを多用するソロプレイもグルーブ感たっぷりでパワフルそのもの。引き合いに出すのもためらわれるのですが、筆者も学生時代からハードロックやブルース中心にドラムを楽しんできたこともあって、聴いているうちに体のあちこちがムズムズしてくるのを抑えられませんでした。本来なら江藤さんの最近の演奏活動についてインタビューしたいところですが、今回は「コードレス」問題を無理やり持ち出してしまったのでライブを聴き終えての感想を一応書いておきます。

ジャズの場合、多様な組み合わせで演奏される印象が強いのですが、「コードレス」の演奏にお目にかかるのは案外少ないものです。試しに筆者のレコード棚をあさってみると、ベニー・ウォレス(テナーサックス)、デビッド・ホランド(ベース)、エルビン・ジョーンズ(ドラム)の「Big Jim’s Tango」(enja)が出てきたぐらい。そんな貴重なコードレスライブで、特にメロディ担当の菊田さんがどんなアドリブソロをとるのか-が、お楽しみのひとつでした。(「Big Jim’s Tango」は「ディスクメモ」で紹介します)。

ジャズ以外のミュージシャンとの共演も活発な菊田さんは休憩中に「江藤さんほどのドラムと岩田さんのベースだけという、ある意味(ソロイストにとっての)制約のないコードレスの組み合わせで自分がどれだけできるか試しているようなもの」と話していました。

「コードレス」は、共演者が繰り出す和音とのハーモニーを気にしなくてもいい分、ソロ演奏の自由度が増すと言われます。でも、コードレスと言ったって、アドリブするミュージシャンの頭からコード進行が消えてしまうわけではないですよね。「コードレス」下のミュージシャンに何が起きるのか、もっともっと現場を歩かないと駄目だな。

忘れてならないのがこの日の岩谷さんのプレイ。岩谷さんはスイング系のランニングが快適なベーシスト。筆者がこの数年、最もよく聴いているミュージシャンの一人です。コードを響かせる楽器がない場合、曲の進行を単音で下支えするベーシストがどんな音を選択するかが重要なのは言うまでもありません。しかし、この日の演奏では江藤さんのパワーリズムを受け止める岩谷さんのプレイがいつにも増してエネルギッシュでした。それはそうだよな、という感じ。ドラムとのリズム対決などと言ったらあまりに陳腐でしょうが非常にスリリングで面白かった。

聴き手が勝手に理屈っぽいことを考え、想像をめぐらしても、演奏が始まると、江藤グループのサウンドにすっぽり包まれるのでした。ジャズ音楽の最大の特徴であるインタープレイの実例をしっかりみせてくれるライブでもありました。

BIG JIM’S TANGO/BENNIE WALLACE

【ディスクメモ】当時のライナーノーツは「ピアノレス」と書いているけれど、代わりのギターがいるわけでもないので「コードレス」なんでしょうね。いきなり哀愁たっぷりのタンゴから始まるという異色の構成。当然のことながらテナーサックスのBENNIE WALLACEが豪放にして自在、悠々と旋律を紡ぎ出します。

何と言ってもドラムのレジェンド、エルビン・ジョーンズがデイブ(デイビッド)・ホランドとやるというので、待ちかねて買ったアルバムです。ホランドとウォレスは同じ1946生まれ。エルビン・ジョーンズが20歳も若い二人との共演を心から楽しんでいる様子が伝わってきます。1982年12月の録音。

コール・ポーターのMY HEART BELONGS TO DADDY以外はウォレスのオリジナルです。伸び伸びと気持ちよさそうなインタープレイを聴くことができます。B面2曲目「THE FREE WILL」でのホランドのソロが素晴らしい。エルビン・ジョーンズさま、こういうドラミングもできるんですね。

BENNIE WALLACE:ts

DAVID HOLLAND :b

ELVIN  JONES  :ds

▶Side A

1.BIG JIM DOES THE TANGO FOR YOU

  1. MY HEART BELONGS TO DADDY
  2. GREEN & Y ELLOW

▶Side B

  1. MONROE COUNTY MOON
  2. THE FREE WILL

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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