【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】依然として初級の域を出ないけれども、ときには予想もしなかった出来事が背中を押してくれることがあるものです。あの手この手で工夫しないとサボる理由がいくらでも飛び出す個人練習でのこと。できれば毎日、15分でも音を出すようにしています。そんないつもの時間、あるコードトーンをさまざまに組み合わせでフレーズもどきを吹く練習を繰り返していました。いったん覚えてもなぜかすぐに忘れるコードトーンを少しでも頭に入れるのが目的です。実際のアドリブに近づけることができるので、好きな練習の一つです。
選ぶ音をしっかり確認しながらゆっくり練習します。自分なりに音選びの法則のようなものを手探りします。法則といっても、もちろん難しいことはできません。何しろ自分で吹きたい音を頭の中で楽譜にできないレベルなので、あるコードの5度の音から始めてみたり、そのコードから生まれるハーモニーの特徴を示す「特徴音」から始めて具合を確かめたりするぐらいです。もちろん、そのコードを中心にしたスケールを行ったり来たりしながら吹いてみたりもします。偶然、気持ちのいい音になればラッキーですが、頭の中に楽譜ができないので再現できるかどうか怪しいのはどうにもなりません。
ジャズのスタンダードで初心者の教材になるALL THE THINGS YOU AREをこねくり回していたときのことです。テーマの13小節目から16小節目に差し掛かっていたときのこと。Eメジャーに解決されるⅡ‐Ⅴ‐Ⅰ(ツー・ファイブ・ワン)の音の並びになっている個所です。たまたまF#m7のところでドリアンスケールにあたるEメジャースケールを上昇コースで吹いたところ、TAKE THE A-TRAIN(A列車で行こう)で聴き慣れた第2リフが響きました。「リフ」は音楽用語で定型の音列や繰り返しのフレーズのこと。第2リフはエンディングに向かうときに出てくる超有名なリフです。教科書に使っている「黒本」によると、TAKE THE A-TRAINの該当個所のコードは「A6」になっていました。なぜそんなことになったのかと言えば、AメジャーとF#マイナーはいわゆる平行調なので、使われる音は同じ。そのためEから始めるとTAKE THE A-TRAINの第2リフになったというわけでした。永遠の初級ジャズ志願にとっては、こんなささやかな偶然も、前に進む燃料になるのだからありがたい。
今後、メジャーのⅡ‐Ⅴ‐Ⅰが出てきたら、Ⅰのメジャースケールを吹けば、キーに応じたTAKE THE A-TRAIN の第2リフになるという、遊びのネタを『発見』できたわけです。我ながらこれは愉快。初級者にとってジャズの個人練習は悩ましいものですが、暗中模索しているうちに「えっ?」「あっ」「へえ」と驚いたり、感心したりする瞬間もあるもののようです。
(以上、ここで取り上げたコードはアルトサックスのキーE♭に沿っています)
DUKE ELLINGTON presents..デューク・エリントン プレゼンツ
【ディスクメモ】本文でTAKE THE A-TRAINの話になったので、デューク・エリントン楽団を紹介しようと思い立ちました。作品が数多いため、手持ちのディスクの中からどれを紹介するか迷います。あまりに偉大、有名すぎて他の人に紹介できるほどの蓄積がないのは分かっています。
ここで取り上げるDUKE ELLINGTON presents..は1956年、シカゴでの収録。A面1曲目のSummertimeサマータイムからB面ラストのBluesブルースまで、通して聴いてもあまり疲れないアレンジになっているような気がします。本当にそうかどうかはぜひ実際にお試しください。
学生のころでしょうか。A面2曲目のLauraローラのポール・ゴンザルベスのテナーサックスソロを聴いて、なんてアダルトな雰囲気なんだろう、と思ったのを思い出します。B面ラストのBluesは、いわゆるブルースのモデル演奏のようなもの。一人2、3コーラスずつアドリブソロを回しています。ビッグバンドのブルースというのは、こんな風にやるのか、と参考になります。
▶Side A
- SUMMERTIME
- LAURA
- I CAN’T GET STARTED
- MY FUNNY VALENTINE
- EVERYTHING BUT YOU
- FRUSTRATION
▶Side B
- COTTON TAIL
- DAY DREAM
- DEEP PURPLE
- INDIAN SUMMER
- BLUES
【この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。
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