【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台】この連載の出発点はジャズアドリブに関する強い関心でした。先日出版した「アドリブの『あ』 60代からのジャズ志願」(NextPublishing Authors Press)の裏表紙に「ジャズ音楽の『謎』に挑む」と、大層大げさなコピーをつけてあるのも、そんな事情からです。
ジャズ音楽の「謎」とはもちろんアドリブ演奏のことです。ジャズが好きだけど「アドリブが難しそうだ」とか、アドリブに挑戦しているけれど「なかなかうまくいかない、難しい」という人向けの報告です。練達の技でアドリブを繰り出せるみなさんには何のことか分からないと思われます。この連載は飛ばしてくださいませ。
ジャズらしさいっぱいに繰り広げられる多様なアドリブ演奏はどんな技術や理論、感情的な動きによって支えられるのでしょうか。演奏者によってジャズ音楽に関する考え方が異なることもあり、リスナーとして聴いているだけでは謎解きは難しそうだ。それならばアドリブ演奏というものを一から学んでみる以外にない。還暦過ぎた身に、残された時間がそんなにあるわけではありません。さんざん迷ったあげくに、学生時代から親しんできたドラムを完全に休止。アマチュアとして演奏活動に使ってきた時間のほぼすべてをアルトサックスに振り向けました。
それからほぼ7年。自分のアドリブがいまだにたどたどしいのは分かっています。つたない真似事でも、アドリブらしきものが少しずつできるようになると、予想以上に楽しい。演奏中にどんな問題が起きて、それがどう解決されるのか、あるいは解決されないのか-など、多少は実感できるようにもなりました。
演奏前に音楽的な方向性がきっちり頭に浮かんでいて、実際、イメージ通りに演奏できる境地というものがあるのは想像できます。筆者の場合、最初の数小節についてイメージするのが精いっぱいで、アドリブが始まってしまうと、どこに向かうのかいまだに分かりません。取り上げる曲の何カ所かで、音楽的なポイントを「関門」のように意識することで、指任せ・運任せの暴走に向かうのを止めるのがやっとです。
それでもアルトサックスを使い始めた当初に比べると、アドリブするに際して注意しなければならないことがいくらかは分かるようになっています。曲のキーを判断する方法やジャズ特有の転調の場所や意味についておおまかにでも理解できると、曲全体の構造が頭に入るようになります。
スタンダードで頻繁に出てくる「Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ(ツーファイブワン)」と呼ばれる音の並びのときにアドリブで使える音は何か。C7、D7、G7などの7th(セブンス)コードが出てきたらたとえば「ミクソリディアン」と呼ばれるスケールを使うにはどうするか。「ミクソリディアン」はルート(根音)の4度上のメジャースケールと同じ音列になることを意識する方がいいのではないかなど、さまざまなポイントが切れ切れに浮かぶことがあります。なかなか慌ただしい。
そうした「関門」のすべてを円滑にこなせるわけではありません。特にテンポの速い曲の場合、コードのルートの音を虫食い的に拾うことで通り過ぎたり、休符を盛大に使って難所を迂回したりします。休符の使い方をスイングの基本から外してしまったため「あそこで間違えた?」「アドリブ入り損ねた?」と指摘されたのは実際の話です。アドリブの仕上がりをよりいいものに近づけるには小節と小節のつなぎ目でどんな音を選択するかが大事。さすがにこのあたりになると、アドリブセンスそのものが問われるようで、「とにかく楽しむしかない」と開き直るしか手がありません。
【この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。
これまでの連載はこちら
*TOHOKU360で東北のニュースをフォローしよう
X(twitter)/instagram/facebook