楽しむことが、誰かのために。地域を盛り上げる「ジュニアリーダー」の活動に迫った

あみぞう(曽根亜魅)】「子ども会は入る?」「町内会の班長、面倒だよね」ーー。子ども会や町内会への参加率が低下し、地域での繋がりが希薄になっていると言われている昨今、こんなセリフが大人たちから聞こえてくることも少なくない。

そんな中、子どもたちに関わりながら、地域を盛り上げてくれている中高生たちがいる。その名も「ジュニアリーダー」。名前を聞いたことがある方は多いかもしれないが、どんな子たちが、どんな活動をしているのか具体的に知っている人は少ないのではないだろうか。

そこで今回、仙台市宮城野区で開かれた「宮城野区ジュニアリーダー初級研修会」に参加し、ジュニアリーダーの活動や思いを聞いてきた。これを読んだ大人たちが少しでも何かを感じ、地域や子どもたちに関わるきっかけになってくれたら嬉しい。

ジュニアリーダーって?研修会って何するの?

雨が降り出しそうな曇り空。場所は宮城野区中央市民センター。会場である体育館に入るとそこは、すでに集まっていたジュニアリーダーたちの熱気に包まれていた。徐々にやってくる受講者たちは、少し緊張した面持ちで指定された席に着いていく。

8月7日。仙台七夕の真っ最中で、学校は夏休みだ。家族や友達と出かける中高生も多いだろうに、ここにいる中高生はこれから研修会に臨む。

真剣に話を聞く受講者24名

ジュニアリーダーとは、主に子ども会や地域のお祭りなどでイベントの企画をしたり、子どもたちのお世話をしたりする中高生のボランティアだ。その活動をしていく上で必要なことを学ぶ場が、ジュニアリーダー研修会である。

今回の「ジュニアリーダー初級研修会」の対象者は、ジュニアリーダーになって間もない、またはこれからジュニアリーダーになろうとしている中学1年生から高校2年生までの生徒たち。受講者をサポートするのは先輩ジュニアリーダーだ。中級や上級研修会を受けたジュニアリーダーたちがサポート役となり、ジュニアリーダーの卵たちを育てる。

アイスブレイクの見本を見せるジュニアリーダーたち

研修は9時半から15時半まで。ジュニアリーダーの役割や心構え、子ども会のプログラムの作り方、事故防止のための考え方、レクリエーションなどについて学ぶ。

講師の先生による研修を受けている様子

「子どもが好き」「かっこいい」参加きっかけはさまざま

体育館に響き渡る声で自己紹介をしたり、受講者に説明をしたりするジュニアリーダーたち。受講者も、緊張した様子ではあるものの、みんなの前で発言していく。中高生とは思えない堂々とした態度だ。

レクリエーションの説明をするジュニアリーダー

「ジュニアリーダーをやる子たちは、きっと積極的な優等生タイプなんでしょ」。そんな風に思う人も多いのではないだろうか。私もそんな一人だった。しかし実際は個性豊かな子たちが揃っていて、参加のきっかけもさまざまだった。

ジュニアリーダーの活動を始めてまだ3カ月だという受講者(中1)は、子どもと接するのが好きなこと、お姉さんがジュニアリーダーだったことなどが理由でジュニアリーダーになった。運動部に所属しているが、両立は大変ではないという。「楽しいから何よりもジュニアリーダーの活動を優先しているんです!」と話す。

みんなの前で発言する受講者

サポート側で参加していた、なぎさん(高1)がこの世界に飛び込んだきっかけは、市民センターのお祭りでジュニアリーダーを見かけて「かっこいい」と思ったことだそう。「人と関わるのが好きで、リーダーになりたい気持ちもあるんですが、人前で話すのも一対一で話すのも苦手なんです」という彼女。ジュニアリーダーになって、それを少しずつ克服している。二人とも一見すると大人しそうで、声も決して大きい方ではない。しかし胸に秘めた思いはとても熱かった。

キャンプネームの存在と居場所としてのジュニアリーダー

ジュニアリーダーには「キャンプネーム」と呼ばれるニックネームがある。普段の活動ではキャンプネームで呼び合うので、LINEを交換するまで本名を知らなかったなんてことも多いそうだ。

「『いなり』と本名の自分は違うんです」。そう話すのは、ジュニアリーダー3年目のいなりさん(高1)。「いなり」は彼女のキャンプネームだ。

学校では友達が少ないという彼女だが、とても生き生きして元気はつらつな印象を受ける。自分らしく個性を発揮できる場所がここなのだそう。「いなりでーす!」と発することで、いなりでいられる。学校よりも楽しいと話す彼女にとって、ジュニアリーダーは居場所なのだ。

「知り合いが増えていくのが楽しい」「地域が身近に」

「寂しいね」。ほとんどの高校3年生は引退している時期だが、おもちさん(高3)は顔を出していた。小学校から地域に関わる活動に携わってきた彼女だが、「年上と関わるのはちょっと……」と、最初はジュニアリーダーになることを躊躇したという。それでも友達に誘われて中1からジュニアリーダーになり、宮城野区の会長や仙台市の会長も務めた。「知り合いが増えて楽しかった!視野が広がった」と語る。

また、「地域が身近になった」と話すおもちさん。最初の頃は「ジュニアリーダーの活動=子ども会」のイメージだったそうだが、区のお祭りで地域の方の出店の手伝いをしたことで、地域の良さが分かったり、身近に感じられるようになったりしたという。

研修会の終わりごろには涙ぐむ姿も見られたおもちさん。ジュニアリーダーの活動で得られたものは、きっと我々が想像する以上に大きかったに違いない。ジュニアリーダーたちはさまざまな経験を通して、学校では得られない学びを得ているのだ。

受講者の緊張を解いていくおもちさん

指導する大人たちも「パワーがもらえる」

研修を支えている大人の講師陣は、仙台市嘱託社会教育主事の方たち。普段は小中学校の教員をしており、全員がボランティアで参加している。この活動に16年関わってきた岩切小学校の黒坂光幸教頭先生は「この子たちに接すると、私たちの方がパワーをもらえるんです。だからこの子たちのために何かしたいんです」と話す。

確かに、1日取材してみて感じたのは充実感。何もしていなくとも、見ているだけで元気がもらえて、自分も頑張ろうと思えるような一日だった。先生方がボランティアで参加したくなるのも頷ける。

先生たちも本気で参加!「おーい大変だー!ゲーム」

楽しむことが誰かのために。ジュニアリーダーから学ぶ

ジュニアリーダーの活動は、自分が自分らしくいられて、他人のためにもなる、そして成長できる、そんな活動だった。

ジュニアリーダーたちは、地域を盛り上げたいと思って活動しているわけではないかもしれない。参加している理由も同じではない。ただ、それぞれが楽しんでいた。楽しみながら活動している結果、地域を盛り上げることに貢献しているのだ。

地域での活動を億劫がっている大人たちも、もっと気楽に考えられないだろうか。誰かのためになんて、大それたことは考えなくていい。自分が楽しんでいるうちに、それが誰かのためになる。そんな素敵なことはないではないか。中高生になんて負けていられない。大人たち、もっと楽しもう!

この記事は、仙台市の宮城野区中央市民センターとコラボした市民記者養成講座「東北ニューススクールin宮城野」の受講生の制作した記事です。宮城野区を舞台に活動するさまざまな地域密着の市民活動を取材し、発信していきます。他の記事は下記の画像バナーからご覧ください。

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