【文・写真/渡邊真子通信員=宮城県仙台市】以前仕事で訪れた企業の社長が、可愛いピンバッジをニットの上着に付けていた。ほのぼのとした癒し系のお顔の(よくクマに間違えられるという)白ウサギのバッジで、よく見ると、体に赤いラインが描かれている。気になる。それは今、巷でじわじわと人気上昇中の仙台生まれのキャラクター「きっこうちゃん」だった。そのネーミングは「亀甲縛り」から来ている。
「まあ当たり前でしょうけどLINEスタンプリジェクトされました」という作者のツイートに思わず笑ってしまった。愛くるしいきっこうちゃんのNG画像とともに掲載されていたLINEサイドからの却下理由は「性的な表現を含むもの>該当多数」。真面目な理由だがなぜか可笑しい。作者に会って話を聞いてみたくなった。
きっこうちゃんファンから寄せらせるリクエストで一番多いものが「LINEスタンプ」だという。
「実は何回かチャレンジしたんです。申請の説明書きで『これは赤い服です』とか、『亀甲縛り』というワードを一切入れないとか、それでもダメで」そう言って笑うのは、きっこうちゃんの生みの親であり、グラフィックデザイナーでもある仙台市在住のバチコさん(24)。「亀甲縛り感をなるべく見えないようにすればいけるのかな?とか(笑)。私も自分で早くきっこうちゃんスタンプが使いたいので、諦めずに今後もチャレンジします」と実に頼もしい。
きっこうちゃんは、実は菱縄しばりだった
「本当はこの縛り方は亀甲縛りではなくて、菱縄縛りなんです。時々ツイッターなどで詳しい方に指摘されるんですけど」と言った後、バチコさんがホワイトボードにサラサラッとその縛り方の違いを図解してくれた。「亀甲縛りの方がポピュラーですし、『ひしなわちゃん』より『きっこうちゃん』の方がいいじゃんというノリで名付けました」とのこと。よって、“亀甲縛りのきっこうちゃん”ではなく、“菱縄しばりのきっこうちゃん”というのが実は正しい。
#カラダ以外は縛られたくない
きっこうちゃんの魅力はそのアブノーマルなルックスだけではない。SNS上で「きっこうちゃん」の画像とともに必ず登場するハッシュタグは「♯カラダ以外は縛られたくない」というキャッチフレーズ。
「体は縛られているけど、心とか思想は自由でありたい、というのが私のモットーでもあるし、きっこうちゃんのモットーでもあるんです」とバチコさんは言う。記者の知り合いにも、このハッシュタグの思想に惹かれるという人がいる。
赤いロープについてもバチコさん曰く「洋服の一部みたいな感じで描いてます。どんな服を着ていてもけなされちゃいけないというか。痴漢問題でも、被害者の女性がそういう服を着ているからいけないみたいな言われ方をするじゃないですか?そうじゃないよねって。きっこうちゃんも縛られているからと言って、被害を受けていい存在でも、変態と決めつけられるモチーフでもないと」
外見だけで内面を勝手に決めつけられたくないし、決めつけたくない。そんなバチコさんの思いも込められているようだ。きっこうちゃんはただの変態キャラなのではない。
「着ぐるみに入って街を歩いてみたい」
きっこうちゃんとは別の存在なので、基本的に顔出しはしていないというバチコさん。「自分の分身だとは思っていなくて、きっこうちゃんがこうしたいからデザインしてあげてるという感覚なんです」
そんな彼女が掲げる今後の目標のひとつに「きっこうちゃんの着ぐるみ」というものがある。「着ぐるみに入ることできっこうちゃんと一心同体になって、応援してくれるファンの方たちと触れ合いたいんです。ゲリラ的にアーケードを歩いたりもしてみたいです」とバチコさん。
「今は興味を持ってくれている人が能動的にしか見ていないので、いわゆるアンチみたいな意見は全然来てないんですけど、これが受動的にもっと大勢の人の目に触れるようになったら、どう変わってくるのかな?という不安はちょっとありますね」とバチコさんは言う。「ただ、もっと広くきっこうちゃんが知られれば、自分のやりたいことももっとできるようになってくると思うので、続けていきたいです」
記者が初めてきっこうちゃんを見た時には、そこにいやらしさなど微塵も感じなかったというのが正直なところなのだが、まだまだ世間的にはそうもいかないのだろう。いつかきっこうちゃんの着ぐるみが街中を闊歩し、LINEスタンプが使える日がやってくるのを、楽しみにしている。
◇きっこうちゃん Instagram:@kikkouchan
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◇ジャーナルスタンダード
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