学校でも家庭でもない子どもの「居場所」の役割 仙台市の「子ども参画型社会創造支援事業」

中條めぐみ】2022年11月のある日曜日、仙台市宮城野区中央市民センターで「キッズもりあげ隊」の活動を見学させてもらった。「キッズもりあげ隊」(以下「もりあげ隊」と略)とは、仙台市が行う「子ども参画型社会創造支援事業」の活動のひとつである。子どもたちが地域の人たちとともに社会に参画することを促す事業で、各区の市民センターを活動拠点とする団体が市内に13団体ある。

イベント企画を話し合う子どもたち

宮城野区のもりあげ隊は、現在16名程の小学生が登録しており、毎月一回宮城野区中央市民センターで活動をしている。その日も、開始時間になると次々に子どもたちが集まってきた。市民センターの職員の方々がサポートしつつ、元ジュニアリーダーの大学生2名が議題に沿って会を進めていった。議題は12月末に実施の「ブラックサンタからの挑戦状」というイベント企画についてである。

なかなか子どもたちからの意見が出ない。かろうじて高学年の女子が1つ2つ意見を出したものの、話し合いと呼ぶにはなかなか厳しい様子であった。進行役の大学生トモさんは「発言を嫌がる子が多い。手がなかなかあがらない。しかし、ひとりひとりと話すと自分の意見は持っているようだ」と話してくれた。大学生はその意見を粘り強く聞き出そうとしていた。

「やりがいを感じる」「楽しい」の声

大学生の進行で話し合う子どもたち

休憩時間になると打って変わって子どもたちは一気に賑やかになった。最年長の6年生女子に参加のきっかけを訊ねた。低学年のころ、もりあげ隊企画のイベントに参加して、活動に誘われたのがきっかけだそうだ。「やりがいを感じる」という言葉も聞かれた。男子の一人は「ここは楽しい!土曜日の早起きも嫌じゃない!」と、話し合いの時間とは別人の様にとめどなく話してくれた。どの子も思い思いに楽しそうに休憩時間を過ごしていた。自由な時間は、学年や学区を越えて集まる子たちにとって楽しい休日の過ごし方のようであった。

学校を越えてつながる「居場所」としての役割

仙台市教育委員会が発行するパンフレット『地域で活躍する子どもたち』によると、子ども参画型社会創造支援事業とは「子ども達が地域の方々とともに社会に参画することを促す」為の事業であると明記されている。参画とは、「企画の段階から活動に加わる」ことであって、単なる参加とは異なる。市の最終的なねらいは子どもたちの地域社会への参画かもしれないが、キッズもりあげ隊を見る限りでは、「楽しい休日の居場所」という意味合いがとても大きいようである。地域社会づくりに参画できる人材を育てていきたいという市の長期的なねらいは「子どもたちの居場所づくり」という副産物のような成果をもたらしているのかもしれない。

コロナ禍で学校行事は制限され、学年を越えての接点も減らされている。そのような中で、この事業の持つ「子どもの居場所」という意味合いは重要。学校でも家庭でもない新たな子どもの居場所というその効果を、もっと認識されても良いのではないだろうか。

この記事はTOHOKU360と宮城野区中央市民センターとのコラボ事業「東北ニューススクールin宮城野」の参加者が執筆した記事です。宮城野区の市民活動を取材した参加者たちが、地域の課題に取り組む人々の活動や思いに迫ります。

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