【詩の連載・手紙#7】ぼくにだけ、聴こえた。

震災から10年が経った仙台からお届けする、詩と写真の連載「手紙」。詩人・武田こうじさんの詩に、編集長が東北各地で撮影した写真で返信します。

“ぼくにだけ、聴こえた。”

泣くのに疲れた誰かが
誰かの涙を数えている

正しさを求めた誰かが
誰かの正しさを追いつめる

汚れた手のひらに
羽根がある
大人でもなく
子どもでもなく
ただこの空を
飛べないということだけが
ぼくにはわかっている

夕暮れに憧れたまま
とくに伝えることもなく
一日が消えていく

どうしても書けないのに
あなたは言葉だ

“Only I can hear.”

Someone, tired of crying,
is counting someone else’s tears

Someone, seeking righteousness
will corner someone else’s righteousness

In the palm of my dirty hand
A feather lies
Not as an adult
Nor as a child
In this sky
I cannot fly
That is all I know

Yearning for the twilight,
I have nothing particular to tell
A day is vanishing away

Although I cannot possibly write
You are the words

詩:武田こうじ
写真:安藤歩美(宮城県石巻市田代島)

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