【写真連載:女川ぐらし】アマチュア写真家の福地裕明通信員が、単身赴任先の宮城県女川町での暮らしを写真で綴る連載「女川ぐらし」。女川町のいまの日常風景を、生活者目線でお届けします。
【福地 裕明】女川町内での写真展「女川ぐらし」開催から約半年が経とうとしています。まずは、この間、雑事にかまけて執筆してこなかったことについて深くお詫びします。
今更ながら写真展のことを書くのも何ですが、これについて記録しておかないと先に進めないので、恥を忍んで書くことにしました。しばしお付き合い願います。
さて、今年4月23日から25日の三日間という短期間でしたが、200名近くの方々にご来場いただきました。「写真展の次は、写真集ですね?」というありがたいお言葉もいただきました(私にとっては、冷や汗ものですが)。
写真展では、ルーティンしている町内の浜の朝焼け・夕焼けを中心に、野良猫たちやお世話になってる飲食店や酒場の料理のほか、日常撮り続けているスナップなどをてんこ盛りに掲示しました(個人的には「数の暴力」と言っています)。それらの一部をエピソードとともに紹介しましょう。
昇ったばかりの太陽が、女川駅の展望台に差し込む光景。この写真は、写真展の案内ハガキにも用いたんですが、面白いエピソードがありました。
「あの時(撮っているのを)見てました」と、私よりちょっと年上の男性に会場で話しかけられたのには驚きました。まさか、見られてるとは思いませんからね。「こんなところから朝日が差すんだ…と驚きながら見ていたよ」と、思わぬところから話が弾みました。
「三秀」や「おじか」「かぐら」「Yume Wo Katare Onagawa」「おかせい」「ニューこのり」など、よく呑み食いさせていただいたお店の料理を「飯テロ」と称してたくさん掲示しました(特に許諾もらったわけじゃないけど…笑)。こんなふうに楽しく生活してるよという雰囲気を出したかったし、見てくれた人たちが、「あの店だ」「あそこじゃないの?」と話してくれるのを期待したところもありました。
震災後に初めて女川を訪れた時に、ふらっと立ち寄ったのが「おじか」さんだった。「ふらわーしょっぷ花友」や「かぐら」「izakayaようこ」など、現在進行形でかなりお世話になってる店が、ここコンテナ商店街にあったことを当時の写真を見つけ出して驚きました。「これも震災や復興の記録になるのでは」とも思い紹介することにしました。
震災前に女川を訪れて撮っていた写真もありました。
この一枚は個人的にもお気に入りでしたが、どこで撮影したのか覚えていませんでした。震災の津波で見る影もなくなったのではないかと思いながらも、町中心部から鮎川に向かう五部浦を探し続けていました。
ところが、この風景は思わぬところで見つかったのです。
雄勝に向かって車を走らせているときに、見覚えのある建物が視界に入ってきました。高台から浜辺を見下ろすと、まさに同じような景色がそこにあったのです。そこは、御前浜でした。私がかつて撮影していたのは廃校となった女川三小の御前分校だということが分かったのです。まったく逆の方向を探していたわけで、苦笑いするしかありませんでした。
学校の校舎つながりでは、旧女川一小の桜も展示しました。桜って、色んなことを思い出させる不思議な魅力を持っていると思っています。子どもの頃の思い出とか、震災当時のこととか、今なら笑って話ができるといいなという思いを、この一枚に込めたつもりです。
日々の暮らしの中で見つけた何気ない光景を見ていただくことで、「こんなところあったの?」「あんな何てことない場所を撮るなんて…」などといった感想をいただくことができました。来場された方々とあれこれコミュニケーションできたことは大きな収穫でした。
と同時に、自分から積極的に話せる性分ではないけれど、撮った写真さえあれば、こんなに話せるのかと驚かされました。そんなちょっとした驚きで、自信をもらったような気がしています。
写真展は終了しましたが、その翌日から「女川ぐらし」の日常を撮る生活は続いています。
この7月で「女川ぐらし」も5年目に突入しました。いつもの生活空間の中でも、まだ目にとまっていない光景があるだろうし、まだ見たことのない景色も探してみたいと思っています。
写真展を再度行うかどうかは未知数ですが、何かしらの形で表現してみたいという思いはあります。(つづく)
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