軽自動車のテレビCMで、俳優のムロツヨシさん演じる男性がキャンプ場で楽しんでいる「スラックライン」。最近注目を集め始めているこのスポーツの楽しさと、それを秋田県から広める活動をしている方をご紹介します。
綱渡りとトランポリンを組み合わせたような新しいスポーツ
さて、みなさん。「スラックライン」についてご存知ですか?とてもざっくりと説明すると、「ライン」と呼ばれる5cm前後の幅のシートベルトのような帯状のものの上でバランスを取りながら楽しむ、綱渡りとトランポリンを組み合わせたような、新しいスポーツです。
6月15日、車を15分ほど走らせ、プールなどを備えた総合施設「えがおの丘」(秋田県横手市雄物川町)へ。堂々と参加するための言い訳として欠かせない「行きたーい!」という子どもの声に喜びながら、そこで行われる無料体験会に参加しました。
会場は、駐車場の上の丘の原っぱ。木と木に巻きつけられた30mほどのラインが、地面に平行に50cmから70cmほどの高さに張られています。それとは別に、30cmの高さに3mの長さのラインが張られた、まるで小さな平均台のようなものがあります。
さっそく挑戦!その難しさに大人も子どもも熱くなる
テレビで何度か見ただけで、子どもも私も未体験のスラックライン。とにかくやってみたい一心で、ほぼ説明を受けないまま、早速、体験させてもらいました。
「わぁー」と言っては、すぐバランスを崩し、数歩で落ちる小学5年生。私の子どもは、まず、簡単そうだった平均台のような方をチャレンジしたのですが、何回やってもそんな感じです。
ラインの幅は5cmあり、靴が乗るには十分な幅で、どう見ても簡単そうです。バランス感覚に自信がある私も挑戦。しかし、いざラインに乗ると思ったよりも上下に揺れ、プルプルと足が震え、もう片方の足が前に出ません。それどころか、片足で5秒も立っていられず、3歩でさえも歩けません。子どもと同じかそれ以下です。
難しさは、見た目以上!バランスが悪いとねじれるし、体を揺らすとラインも上下してバランスがとれなくなり、そして揺れだすとあっという間にバランスを崩して落ちてしまいます。「手を広げてバランスをとりましょう」と声をかけられ、手を使ってバランスをとってみますが、私も「わぁ~」などと言って落下。にこやかに地面に足を着けるも内心は「くそォ~」「バランスとるだけなのに、なんでできないんだ!」と熱くなりつつ、すぐに「もう一回!」と思う、そんな楽しさでリピートしてしまいます。
「テレビで見だごどあるども、やったごどね」。75歳も挑戦
そんな楽しさを味わったのは、私たちだけではありません。温泉やプールに来た子どもや家族連れの大人たちも参加しました。「何やってるべ?」と、施設の玄関で野菜の直売をしていたご婦人たちもやってきました。「テレビで見だごどあるども、やったごどね」と始めは「見に来ただけ」と言っていましたが、楽しそうなようすに心が動き、初体験していました。
あいにくの雨が降った午前は3、4人の参加者だったそうですが、私が行った午後は天気も晴れ、30人近い人たちがこの新しいスポーツの楽しさに触れていました。
「できなかった」けど、ハマっていった
このイベントを開催したのは渋谷幸洋(しぶや・ともひろ)さんと藤田賀一(ふじた・よしかず)さんが中心メンバーの「Slack Holic Liners」。主な活動の場所は、大仙市と美郷町とのこと。2018年の秋から活動しているそうです。
活動のきっかけは、渋谷さんがスラックラインを体験したところから。渋谷さんがある県内の施設で、スラックラインを初体験。しかし、全然できず。そこで「速攻でネット注文した」とのこと。さっそく家で練習し、そして勤務先の会社の敷地で週に3、4回、一人で練習して……と、のめりこんでいったそうです。
同じようにのめりこんでいったのが、バスケットボール仲間である藤田さん。バーベキューのとき、渋谷さんが持ってきたスラックラインに「ハマった」とのこと。渋谷さんがインターネットで色々と調べ、そして二人でやってみながら、どんどんこのスポーツの魅力に引き込まれていったそうです。
そうした中で、同じ県内の「矢島スラックラインズ」(滝野駿代表)の存在を知り、二人は遊びに行ったことを契機に、チーム活動の意義を知ることになったとのこと。そこで二人は、スラックラインチーム「Slack Holic Liners」を誕生させました。
新しいスポーツ「スラックライン」への思い
バスケットボールやバドミントンで汗を流しているというスポーツ好きの藤田さんは、「スラックラインの楽しさを知ってもらいたい。それに、楽しいと思ったことを秋田でもやれるということを、みんなに知ってもらいたい」と語ります。
ただ、公園で楽しんでいても「よく分からないことやるな!」「許可は取っているのか」などと言われないだろうか、という心配もあるそうです。「バドミントンをしても同じようなことを言う人はいないと思います。スラックラインは、どうしてもある程度の場所を占拠します。でも、それはどのスポーツも同じです」と、藤田さん。まだまだ広がり始めたばかりのスポーツだけに、藤田さんたちは、積極的に町役場に出向いてこのスポーツのことを担当の人に説明し、使用許可を得た上で、公園や体育館などの施設でスラックラインをしているとのこと。
「自分たちがやりたいと思うところで、やりたいことがやれるようにしたい。そして少しでもスラックラインの楽しさを伝えたい。使い方もあるし、安全にやるためのルール、支柱に使う木などを傷めないように保護するなどといったマナーも意識しながらやるようにしています」
だれでも味わえる手軽さと楽しさを持ったスラックライン。そんなスポーツを広めようとしているのは「子どものまま大きくなった大人」ではなく、「大人になって、なお、遊び心を持ち続けている人」という印象を与えてくれた出会いの日となりました。
このスポーツの楽しさを多くの人に知ってもらいたいと考える二人は、都合が付けば、仲間と一緒に今回のような体験会を開催してくれるとのこと。このスポーツに興味をお持ちの方、一緒に楽しみたい方は、Facebookを通じて連絡してみてはいかがでしょうか。