夫婦で営む、やさしい味わいの「軒先」シフォンケーキ店/東京・南雪谷

鈴木由香(ローカルニュースライター講座in渋谷)=東京都大田区】東急池上線・雪が谷大塚駅から徒歩5分の場所にシフォンケーキ&コーヒー専門店「SUNNY DAYS」がオープンして半年が経った。閑静な住宅街の一軒家。その「軒先」が手作りシフォンケーキを販売する店舗として生まれ変わり、近隣住民の注目を集めている。自宅で新たな挑戦を始めた店主夫妻に話を聞いた。

こだわりのシフォンケーキとコーヒーを販売

看板を見て「ここ、お店なの?」と足を止める通行人も(鈴木由香撮影)

 「SUNNY DAYS」は2016年10月1日にオープンした、シフォンケーキとコーヒーのテイクアウト専門店。一軒家のガレージを利用した特徴的な作りで、和博さん、美保子さん夫妻が2人で営む。

 毎週木・金・土の営業日には、毎日日替わりで6~7種類の手作りシフォンケーキを販売する。家族みんなで安心して食べられるよう、保存料や膨張剤は不使用。那須高原の良質な卵を使用することで、コクのある味わいを実現している。ドリップコーヒーは、スペシャルティコーヒー店「ペンギン珈琲」(神奈川・新百合ヶ丘)の上質な豆を使用。ドリップ直後の濃い状態のコーヒー(原液)だけを抽出し、その後、原液を湯で薄めて完成となる。いわば「一番搾り」のみを使用することでえぐみや苦味が抑えられ、コーヒー本来の味を楽しむことができる。

プレーンとほかの種類を組み合わせて購入する客が多いというシフォンケーキ(鈴木由香撮影)

きっかけは旅先で出会ったシフォンケーキ

 ケーキ作りは元会社員の和博さんが担当。もともとシフォンケーキを作るのも食べるのも好きだった和博さんが、10年前の夫婦旅行先で「今まででいちばんおいしいシフォンケーキ」に出会い、「もっとおいしいシフォンケーキを作りたい」と製菓教室に通って腕を磨いた。

 いつかはお店を出したいという思いを持ち続けていた夫妻が、2人の息子の子育てが一段落したことをきっかけに昨年同店をオープン。「おいしいシフォンケーキを少しでも安く提供したい」(美保子さん)ということから、自宅のガレージ部分を改装して店舗にした。

自宅の窓を改装したカウンター。休業日はひさしを畳んで本来のガレージとして使用している(鈴木由香撮影)

意外な店名の由来。鍵を握るのは「ロックな」招き猫

店頭で客を迎える招き猫。首輪には2人の名前が刻まれている(鈴木由香撮影)

 「SUNNY DAYS」。家族で仲良く食べるシフォンケーキのイメージにぴったりの店名だが、この言葉には意外な思いが込められていた。その鍵を握るのが、店頭で客を迎える1体の招き猫。「実は、これはクレイジーケンバンドの限定グッズなんです」(美保子さん)。2人とも同バンドの大ファンなのだという。

 2004年にリリースされた「あぶく」は、ボーカルの横山剣がソウルフルに歌い上げるスローファンクのナンバー。「『一歩踏み出そう』という内容のこの曲に励まされ、勇気づけられた」と和博さんは語る。「SUNNY DAYS」は、同曲の歌詞に登場する言葉。ロゴマークにも歌詞で歌われる“銀のあぶく(泡)”があしらわれている。夫婦の新たな挑戦のシンボルとして、この招き猫が見守っているというわけだ。

地域の有名老舗店とのコラボレーションも

 2016年11月からは、雪谷商店街の老舗「あらいや豆腐店」でも同店の豆乳を使用したシフォンケーキを販売(月~土)。美保子さんが20年来のファンだったという同店。開店のあいさつの中で「うちで置いてみない?」と逆に申し出を受け、同店での取り扱いが決まった。あらいや豆腐店の店主は「売れ行きは好調。幅広い年齢層の女性が買っていかれる。若いママの集まりに、5個、6個と買う方も」と話す。

豆乳を使ったシフォンケーキはあらいや豆腐店のみの限定販売(鈴木由香撮影)

 2017年3月には池上本門寺(東京・池上)の朝市に出店。初出店ながら、持ち込んだシフォンケーキ、コーヒーともに完売となり、手応えは上々だ。2人がこれまでの人生で出会ってきたものがギュッと詰まった「SUNNY DAYS」。他の店舗とのコラボレーションや取り扱い店舗も続々と増えており、地域での存在感が高まっている。また美保子さんは「今はサラダの修行中」とのことで、これからも夫婦の新たな挑戦は続きそうだ。

 SUNNY DAYSは木、金、土のみ営業。

この記事は2017年2月〜3月まで東京都渋谷区のコワーキングスペースco-ba shibuyaで開催されたco-ba school「ローカルニュースライター実践講座」の受講生が執筆した記事です。6月からの二期目の受講生を募集中です。