【東北の起業家】文具店から「DX支援企業」へ大変革!?高山・高山智壮さん

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PR企画記事:東北の起業家に会いにゆく】東日本大震災後、東北では地域の社会課題をビジネスで解決しようとする人々の機運が高まり「起業」が活発化してきました。そんな東北の起業家たちが集まる年に一度の祭典「TGA Festival」が今年も2月12日に仙台で開催され、3月3日には東京で「TOHOKU STARTUP NIGHT」が開かれます。
東北の起業家たちが取り組むユニークなビジネスやその背景にある熱い思いを知るために、イベントに登壇する起業家たちに会いに行きました。

今回お会いした東北の起業家は、創業76年目の株式会社高山の三代目・高山智壮さん。2021年1月11日の事業承継と同時に、創業から続けてきた文具店を、経営者向けの「DX経営体験事業」へと大変革されたとのこと。一体どういうことなのでしょうか?そもそもDXって…なに?

中小企業向けに「DX体験ツアー」を提供

――今取り組んでる新規事業を教えて下さい。

はい、私たちの新しい事業は「DX」(デジタルトランスフォーメーションの略)。これからDXが必要だと言われている中で、中小企業の経営者様はDXって何からすればいいのかさっぱりわからないというところがほとんどです。弊社のDX体験ツアーに来ていただくことで、こういうふうにすると生産性が高まるんだ。こんなやり方で採用が上手くいくんだ。こういうデジタルの活用によって、移動距離が減らせるんだ、などとDXを体感、体験できるという事業です。

――あの…そもそもDXとは何かから説明していただいてもよろしいですか?

DXにはいろんな定義があるんですけども、私たちはシンプルに「デジタルを活用した企業変革」と捉えています。このコロナが顕著でしたが、三密を回避したビジネスモデルへの転換、人口減少している中で一人当たりの生産性を高めていかなければならない企業環境、そしてこの超人手不足の中で、いかに生産性と採用力を向上させていくかがどの企業にも必須なわけですよね。

それを今まで通りの仕事のやり方でやってもやはり限界がある。今までは労働時間を伸ばすことで生産性を伸ばそうという発想が今までの日本の働き方だったわけですが、今まさに労働時間をいかに短くしながら生産性を高めていくのか、それを実現できるのがまさにデジタルを活用した働き方のシフト、これを一言でいえば「DX」ということになってくるわけですね。

――とてもわかりやすい説明をありがとうございます。そのDXを、高山さんの会社に行けば体験できる、というのはどういうことなんでしょう?

何より私たち自身が調べ抜いたツールを徹底活用し、いい面も悪い面も私たち自身が実証実験してきているというのがまず一つの価値になります。例えば、コロナになって私たち自身も3割くらいのメンバーが今テレワークで仕事していますが、東北の中でテレワークしている方って10%いないんですね。

※筆者注:2020年12月時点の東北各県のテレワーク率は宮城や福島で約1割、他の県はそれに満たない(国土交通省資料より:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001389689.pdf

――そんなに少ないんですね。

地場の中小企業では「いやオンラインなんかわかんね、そんなんでコミュニケーションとれね」と、せっかく便利なものがあっても、固定概念でブロックしちゃうケースが非常に多いんですよ。それを今まで私たちの業態のように、営業がお客様先に行って「社長、こういうのがITツールでありまして」という風に言っても実感がわかないし、「いや、うちら使いこなせないから」と言って大体導入されないんです。今はベンチャー企業から色々な良いITサービスがいっぱい出てきていますが、東北での導入率ってめちゃくちゃ低いんですね。

じゃあそういう方々にこれだけの恩恵があるというのをどうしたら理解してもらえるかというと、「体感」しかないんですよ。私たちがこういう働き方を実際にしていますっていうのを体験できるものを準備していまして、「こんなに簡単にこんなに便利なことができるのか!」と、そういうのを地域企業の皆様に提供させていただくというモデルになっています。

――なるほど。高山さんの会社に訪問して、実際の業務の中でデジタルのツールを使いこなしているのを体感する。それ自体がサービスになるということですね

そうですね。私たち自身がこの一年間でコロナでかなり大変なことがあったんですが、逆にデジタルを活用したことで採用人数がアップし、人時生産性を123%アップさせることができたんです。今年もこれから120%は確実に成長できるという見込みが立っていますが、それはこのデジタルの恩恵。なので私たちのそうした試行錯誤の上でのノウハウを地元中小企業の皆様にご提供していくというモデルになっています。

オンラインで取材に応じてくれた高山さん(聞き手:安藤歩美)

戦後創業した塩釜の老舗文具店を継いで

――高山さんは宮城県塩釜市の「高山」という会社を継がれて、今回DXを新規事業として始めるということなのですが、元々はどんな会社なのでしょうか。

1946年に創業した会社で、戦後すぐというところで、まずは物資を届けるところから。なので学校に文房具や体操着、市役所に領収書や納品書。まさにそういった文房具、事務用品を届けるというところから創業した会社になります。

時代とともに、文房具からオフィス家具、パソコンや複合機、ネットワーク周辺機器も取り扱うようになりました。でもずっとコアにあるのは働く――傍(はた=他者)を楽にする――という考え方です。何もなかったときには手作業でやるよりも文房具を使った方が生産性が高まるし、パソコンが出てきたときはパソコン使った方が生産性が高まるし、今はスマホやクラウド、AIを使った方が生産性が高まります。「傍を楽にする」というのがコアドメインで、商品、商材は時代と共に柔軟に変え、かなり進化してきたという形です。

――元々会社を継ぐということは決めていたのですか?

20代前半のときは正直父とはうまくいかなくて、継ぐ気はなかったんです。東日本大震災のときに、地元の宮城県塩釜市が津波で飲み込まれまして。私は東京の方にいましたけれど、自分は本当に東京で銀行員していていいのかなと。亡くなられた方が地元でたくさんいる中で、自分が本当に生まれてきた意味や使命は何だろう、とものすごく考えまして。

で、地元に戻ってボランティアをして、泥かきしかできない自分にものすごい無力感を感じたんですね。その当時力のある起業家の方たちが色んなボランティアを自分で主催したり企業を立ち上げたりとチャレンジしている姿を見て、自分はこのままでいいのかなと思ったんですね。

そんな時に実家で一本のビデオを見せてもらって、創業者(※高山さんの祖父)が亡くなる直前に、赤ちゃんの私を抱きかかえながら、「この智壮に会社を引き継げ」と言っているビデオが残っていたんです。私はもう記憶にはなかったけれど、それを見たときに何か稲妻が走るような感じがして、この会社を通じて東北に貢献することが自分の使命だなと思って、事業承継を決意しました。

――それまでは東京で銀行員として働かれていたんですね。今高山で手がけているITサービスも、その経験が生かされているのですか?

銀行員のとき、インターネットバンキングの事業にかなり注力していました。そのときに、これからの時代はインターネットがすべてを覆い尽くしていく中で、サイバーセキュリティが非常に重要と感じました。

にもかかわらず、ほとんどの人が「なんとなく怖い」けれども、後回しにしていた。宮城県に関してはサイバーセキュリティのプロの会社がなかった。ここは目の付け所だと思って、塩釜に戻ってきたときにサイバーセキュリティ事業を立ち上げて、今はサイバーセキュリティ事業が高山の中核になっています。そしてサイバーセキュリティとDXというものも、親和性がものすごく高いんです。

働く時間を削減しながら成長する東北の未来を

――業務用ツールからサイバーセキュリティまで、いろんなデジタルツールを東北で普及させている高山さんに、今後の目標を伺いたいのですが。

会社が創業75年目で、売上4億500万円なんです。社員数18名なんですが、これを毎年120%ずつ成長していくと、5年後、いわば創業80年の時にに10億企業を実現することができます。数字を実現することが目標ではなく、10億というお客様への提供価値を実現できるというのがすごく大切だと私たちは思っていて。それを、今よりも働く時間を20%削減した上で実現したいと思っています。つまり人時生産性が今よりも200%くらいアップして、一人当たりの生産価値が上がっているのに労働時間は下がっているという。その中でも確実に毎年成長できるという働き方を実現していきたい。それが、お客様の新しいこれからの働き方のお役に立っていく、そういうモデルになっていきたいなと思っています。

「DXで共に働くを幸せに」というのが私が追求していきたいものです。DXを通じて自社だけがよくなるのではなく、お客さまも、縁ある方も、社会もよくなっていく。結局働くというものを、いわば「傍を楽にする」、幸せにしていく。その追求はこれからも変えていかないということですね。

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