東北大学の起業講座が生み出すビジネスの原石。コロナ禍に立ち向かうアイデア続々

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【PR記事】10年後を見据え、起業文化の醸成に力を入れている東北大学。同大スタートアップガレージ(TUSG)では、「コロナ時代」を転換点と捉えてビジネスで課題解決を目指す学生向けの完全オンライン起業講座「ゼロイチゼミ」を6月より開講している。

8月29日、この起業講座の第一段階の集大成として、12名の受講者がオンライン発表会でビジネスアイデアをプレゼンした。10月からは、事業化に向けた本格的な起業講座「アクセラゼミ」も始動予定だ。

9月25日と29日には後期の起業講座の説明会がオンライン開催される(詳細はリンク先へ)

思いを形にするための仮説検証で、成果と課題を自覚

今回の「ゼロイチ」ゼミは、起業への具体的な足取りを視野に入れる前の、「好きなことをやりたい」「アイデアがあるが動けずにいる」といった学生が対象だ。TUSG講師陣は、指導者でもあり、ビジネスアイデアを共に磨き上げるメンターでもある。企画として現実的かどうかはもちろん、プレゼンの完成度や「調査していたここを含めるとよかった」と指南があるのが印象的だ。

受講者のプロフィールは、学部1年生から社会人博士までさまざま。どんな課題を見つめ、解決策を練り上げたのか。5分間の発表に込めた学びの成果をピックアップする。

「速く、安く、高感度で高汎用性な臨床検査薬を」

工学研究科博士課程2年 伊藤 智之さん

「タンパク質工学」を専門とする伊藤さんは、臨床検査薬メーカーを対象に「速く、安く、高感度で高汎用性な試薬」の開発を促進する新規事業を提案した。

血液検査で健康状態を診断するために用いられる臨床検査薬。その測定に現在主に用いられているのは、コストが低く使いやすいが感度が低めの「吸光測定法」と、効率では劣るが高感度の「化学発光法」だ。調査やヒアリングを通じ、測定項目によりどちらの方法を用いるか異なることや、検査所や試薬メーカーの「効率的な吸光測定法を使い、感度も向上させたいが、費用面などから研究にそこまで力を入れられない」というニーズ・悩みを把握した。

伊藤さんはタンパク質工学の応用により、2つの測定法の良いとこどりの試薬作製技術を開発し、試薬メーカーとライセンス契約する新規事業を提案。これにより、安く、速く診断できる検査項目が増え、「血液検査が変わる」と訴えた。講評は知的財産権の話題に及び、留学して研究を進める予定の伊藤さんに、長期的な視点のアドバイスがおくられた。

「留学生の就活村をつくる」

国際文化研究科修士課程2年 陳 唐伊伊さん

陳さんは、留学生が日本での就職活動に抱く心理的不安を解決するためのオンラインコミュニティを提案。企業の情報が届きやすい日本人学生に比べ就活が難しい傾向は以前からあったが、コロナ禍で交流の機会自体が減ったいま、頼みの綱だった留学生向けセミナーなどもなくなり情報交換の重要性を感じているという。

就活用サイトや、学生と企業のマッチングを促進するオンラインコミュニティはすでに充実している。しかし、国内で留学生に特化したものがないことに注目し、他の留学生がどう就活に取り組んでいるのか知りたいといった「情報交換」のニーズに応えることで差別化を図る予定だ。

講師陣からは、「オンラインコミュニティがあるだけでも留学生の不安が軽減されると思う」といった評価の声があがった。同時に、具体的な改善点の言及も。メンターを務めた安藤真晴さん(MAKOTOキャピタル)は、留学生を採用している企業の情報や、WeChat(微信)での交流から得た知見など、調査していたのにプレゼンに盛り込まれなかった項目を指摘した。講評にとどまらない、「一緒にプランを作る」ゼミならではのアドバイスだ。

「できないことに意味がある」に気付くのがポイント

このほか経済学部1年の鈴木芽衣さんが地元の福島県喜多方市で「人とわいわい楽しめる場所・機会がない」ことに着目し野外映画上映会を提案するなど、多様な学生たちのビジネスアイデアが発表された。

個性豊かなプレゼンが展開される中、講師陣がたびたび口にした要素がある。できないことに意味がある、つまり今までなぜそのビジネスモデルが実現されてこなかったのか、背景や理由を理解したうえでアイデアを磨いてほしいというアドバイスだ。

メンターとしてアドバイスした作増志郎さん(AnyMind Group、東北大OB)

新しい銀行モデルを考案した経済学部3年の児玉良太さんには、利点の多さが目立つビジネスモデルに「ロジックを詰めよう」と鋭い突っ込みが飛んだ。メンターの福留秀基さん(MAKOTOキャピタル代表取締役)は、「低リスク高リターンはみんなやりたいと思っているし、克服されていない唯一にして最大の課題」と説く。

飲み物の配達サービスを提案した工学部1年の菊地優斗さんには、寮全体にアンケートを配った行動力を称えると共に、メンターの市川大樹さん(WiLグループ TBA  HRマネージャー)から飲料デリバリーは過去にさまざまな挑戦があり、サービスが「ない」理由がある分野だとの指摘。ネックとなる面倒さをどう省けるか講師と学生が自然と考えを出し合った一幕もあった。

できない理由を足がかりに、付加価値の提案を

できない理由に目を向けられれば、もう一歩先の段階に進める。それが「付加価値」、利害関係者にとって何がインセンティブになるのか考えることだ。

現役の岩手県職員であり、工学研究科博士課程に在籍する重浩一郎さんは、家庭での太陽光発電導入について提案。課題の整理・調査を経て、身近な脱炭素化に向けた仮説が成り立たないことに気付いた。そこで光熱費の課題を学生のアパート選びにおける付加価値に転換できないか、調査・分析を進める意向だ。

メンターの倉田慎さん(MAKOTOキャピタル)は、「ニーズがない」ことを把握した点を評価した。ヒアリングできる人脈やまちづくりの視点といった行政職員ならではの強みも、重さんにしか出せない付加価値だ。

アイデアをどのように社会実装するか、というアドバイスに、重さんは「『ゼロイチ』ゼミで参加したことでビジネスの視点が育った。この経験をもとに、ただ漠然と補助金を出すのではなく、住民にどのようなインセンティブがあるかより深く追求していきたい」と締めくくった。

後期はアイデアを形にする「アクセラゼミ」受講生を募集

無事12名の発表が終わり、メンターの小俣伸二さん(サイラボ代表取締役)は「非常にレベルが高かった」と率直な感想を述べた。「次は行動に移すこと。これに尽きる」と言葉を続けた。

東北大学ではそんな「行動に移すこと」の後押しをする講座が、10月からスタートする。2020年10月10日〜12月5日まで開講する起業講座「アクセラゼミ」では、外部講師のレクチャーや1対1のメンタリングを通じて顧客ニーズの調査や市場規模の算定方法、ピッチ資料の作成などを学び、各自のアイデアを事業化するための具体的な実践を進める。

9月25日(金)と9月29日(火)には「アクセラゼミ」の説明会がオンラインで開催される。説明会および受講申し込みは10月2日まで、東北大学スタートアップガレージのWebサイト(https://www.tusg.jp/pj/axelasemi)より受け付ける。

東北大発のビジネスから、ますます目が離せなくなりそうだ。

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