若手ミュージシャンの練習会。ジャズの基礎から高度な技術まで、1日中、音を出し、話を続けている。

【仙台ジャズノート】プロローグ・身近なところで

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)=仙台市】米国生まれのジャズ音楽を身近なところから見詰め直したい。古いジャズファンの一人としてジャズの魅力を少しでも伝えられればうれしい。そんな思いから「仙台ジャズノート」の取材は始まりました。人口百万の地方都市仙台とその周辺地域が取材現場です。

仙台出身の筆者がジャズに魅せられたのは学生時代。ほぼ50年前です。以来、外来音楽を楽しむにはニューヨークや東京経由の情報を何よりも頼りにする時期が続きました。しかし今、あらためて身の回りを見渡すと、プロのみならず分厚いアマチュアの音楽活動を間近に見ることができます。若いミュージシャンたちにとってのジャズ環境は依然として厳しいものですが、地域と世界を同時に見詰める感性が伝わってきます。シニア世代のミュージシャンの中には、ジャズ草創期の記憶や体験を共有する人たちも多く、彼らの知識や経験が若い世代にどうつながるのか興味深いものがあります。

写真は取材を通じて偶然出合ったシーンです。若手ミュージシャンの練習会を自ら企画し公開するという珍しい試み。いずれも仙台で活躍している、プロあるいはプロ志向の強いミュージシャンたちです。互いに別の方角を向いているのは、自分の音をなるべくいい状態で聴き取るためです。ジャズの巨人の一人、チャーリー・パーカー(サックス)の「CONFIRMATION(コンファーメイション)」のテーマ(メロディ)を何度も何度も繰り返して演奏していました。写真からはサウンドが聴こえないのが残念です。なぜ繰り返し演奏するかについては理由があります。あらためて報告します。

若手ミュージシャンの練習会。ジャズの基礎から高度な技術まで、1日中、音を出し、話を続けている。
若手ミュージシャンの練習会。ジャズの基礎から高度な技術まで、一日中、音を出し、話を続けている。

これまで数多くの「ジャズ本」を読んできました。書店に行けば、面白そうなジャズ本が並んでいます。ジャズ音楽を時系列で解説したり、オーディオ的な観点でジャズ理解を深めたりする本があります。著名なミュージシャンの作品を取り上げて、その作品で聴けるジャズがいかに画期的かつ魅力的であるかについて心をこめて記述したものも楽しく読んできました。個人的な一押しは「もし今、無人島に行かなければならないとしたら誰のどのレコード(CD)を持っていくか。その理由も述べよ」という、あれです。どれだけ多くの人がジャズ音楽を愛しているかがストレートに伝わってきます。もちろん、それぞれに賛成、反対、いろんな思いで読むわけですが、そのずれ具合がまた面白い。

今回の取材では、ジャズ音楽を俯瞰して解説したり、自分の観点で評価したりするのではなく、都市の暮らしの中に息づく音楽としての魅力を多様な角度から探り出してみたい。自分と同じ街で暮らしながらジャズ音楽を楽しんでいる人々へのインタビューを重ねながら、ローカルでかつグローバルなジャズ音楽の楽しみ方のようなものを浮き彫りにしたいと考えています。

そのためにはプロのミュージシャンはもちろん、分厚い形で存在するアマチュアの活動にも注目しなければならないでしょう。特に、若い世代を取り巻く音楽環境は、ネットやデジタル技術の普及とともに大きく変わり、ミュージシャンやリスナーのジャズ体験を劇的に面白くしつつあります。

この連載は仙台とその周辺地域に広がるジャズ界隈の近況報告です。地方都市の生活感やジャズ音楽との距離感を出すためにほぼ50年にわたる筆者自身のジャズ体験を時折織り交ぜます。米国生まれの音楽として長い間意識されてきたジャズについて、東京以外の地方都市の様子を合わせて知りたい。どなたかが報告してくれれば、ネット&デジタル社会の基盤を生かした、ユニークな共同作業になるはずです。そんな期待をこめながら取材を進めます。

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

【連載】仙台ジャズノート
1.プロローグ
(1)身近なところで
(2)「なぜジャズ?」「なぜ今?」「なぜ仙台?」
(3)ジャズは難しい?

2.「現場を見る」
(1) 子どもたちがスイングする ブライト・キッズ

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