【中野宏一=山形県山形市】東北地方の素材と、シンガポールの感性を組み合わせて、新しい商品を開発しようという試みが、山形県で行われている。今年1月には実際にシンガポールのデザイナーが来日し、山形県の工房を視察した。山形県の産品をシンガポールのデザイナーが開発するという企画。一見、奇抜な組み合わせに見えるが、そこには、地方の産品を海外で販売する際の苦労が隠されていた。




シンガポールのデザイナーが山形県を訪問

 シンガポールからデザイナーを招へいし、山形県内の素材を用いて、シンガポールで売れる商品を開発する。こんな試みを始めたのは、山形県経済交流課と山形県国際経済振興機構だ。昨年10月から「シンガポールで売れる県産品」の開発を目指し、シンガポールのデザイナーや、共同の商品開発に参加する意欲のある山形県内の工房を募集し、マッチングが実現した。

 1月18日から19日には、選考を経て選出されたシンガポールのデザイナー、ジャン・ウエイ・ロウさんが、山形市、長井市、中山町の木工品製造や、マット製造、籐細工製造、ガラス加工などの工房6箇所を視察した。今後、商品化を目指すという。

シンガポールから来日したデザイナー、ジャン・ウエイ・ロウさん(山形県経済交流課提供)

山形の「素材」は素晴らしいが、そのままでは海外で苦戦

 山形県の海外輸出は、これまで台湾・香港に対する果物などの食品の輸出が中心だった。ASEAN地域にエリアを広げるにあたり、農産品ではなく「工芸品」を輸出しようと考えた際、課題になったのは、「日本のものをそのまま海外に持っていっても、受けない」(経済交流課の担当者)という問題点だった。

 山形県ASEAN貿易コーディネーターの小里博栄さんは、日本の地方の工芸品を海外で販売する際の課題を次のように説明する。「日本の美術品や伝統工芸品で海外で売れているのは、高級品だ。日本で売っているようなお土産品のような工芸品は売れていない。海外で売るためには、『工芸品』ではなく、海外の人が友人に贈りたくなるような『ギフト』を作ることが必要だ」

 工芸品の海外での販売で苦戦する一方、山形県の担当者は「山形県内の『素材』は海外でも評価されるものが多い」と語る。そこで、評価の高い山形県の「素材」に、シンガポールの「感性」を組み合わせた新商品を作るという企画が実現した。




「双方向が可能性を生む」

 日本のモノをそのまま海外に出して受け入れられるのが理想、という考えも一部で聞かれるが、コーディネーターの小里さんは「双方向の動きこそが可能性を生む」と語る。一方的に持っていくのではなく、相手のニーズと自分の持ち味を組み合わせるのが、真の国際化だということだろうか。

山形県の工芸品を手に取り、説明を受けるジャン・ウエイ・ロウさん(山形県経済交流課提供)

 加えて小里さんは、シンガポール人が山形県を訪問することの可能性にも言及する。「山形の景色を見て、食事を味わって開発することで、(山形の持ち味を反映した)『製品のストーリー』ができる。さらに、きっとそのデザイナーは、山形のファンになり、山形の良さを広めてくれるだろう」

 今回は、モダンな藤細工の家具を製作するつるや商店(山形市)や、高いガラス加工技術を持つサンドブラスト工房 遥空(山形市)など、高い技術を持つ6つの工房が応募した。シンガポールのデザイナーの感性と、どのような相乗効果が生まれるか期待される。

2017年からの新連載「アジアの街角〜陸奥の風」は、東北のニュースサイト「TOHOKU360」と、アジア各地からニュースを届けるニュースサイト「シンガポール経済新聞」及び「ムンバイ経済新聞」、シンガポール唯一の日本語週刊誌「週刊SingaLife」の4媒体が国際ニュースネットワークを築き、お互いの地域の現地ニュースを交換し合う取り組みです(詳細)。今回の記事はTOHOKU360が制作し、2017年2月23日発刊の「SingaLife」に掲載され、シンガポール在住の読者に配布されています。




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