「もうひとつの居場所」で、子どもの成長に向き合う オルタナプレイス八幡町

渡辺格=仙台市】仙台市青葉区八幡地区の「オルタナプレイス八幡」(以下、オルタナプレイス)は、さまざまな理由で日常生活や学習生活に困難を抱える小学生から高校生までが放課後や夏休みを過ごす場所です。その現場にお邪魔し、代表の佐々木千晶さんから大切にしている理念について伺いました。

「オルタナプレイス」で遊ぶ子どもたち

2月28日午後4時にオルタナプレイスにお邪魔すると、6人の小学生が遊んでいました。「こんな人、いたっけ?」と筆者を珍しそうに見る子どもたちにご挨拶をし、しばらく遊ぶ様子を見せてもらうと、子どもたちは段々と筆者の存在に慣れてきたのか、思い思いの遊びに再び取り組んでいきました。

それぞれが楽しそうに過ごす様子をしばらく見ていると、スタッフの方が子どもたちに呼びかけ、「クラブ活動」が始まりました。外で遊ぶ「うんどうクラブ」と室内の「ボードゲームクラブ」に分かれた子どもたち。筆者は「ボードゲームクラブ」で「人生ゲーム令和版」で遊ぶ様子を見せてもらいました。最初にクラブでの約束事を確認したあと、佐々木さんの進行でゲームをプレイする様子を見せてもらっていると、あっという間にお迎えの時間になってしまいました。

(遊ばれていた人生ゲーム(令和版)。令和の世は億万長者を目指すのではなく、インフルエンサーとなってフォロワーを獲得することを目指します。)

子ども扱いせず、一人の「人」として接する

今回お邪魔したオルタナプレイスは「放課後等デイサービス」という福祉サービスを提供する施設で、障害などさまざまな理由で日常生活や学習生活に課題のある小学生から高校生までが放課後や長期休暇中の時間を過ごすための場所です。

佐々木さんは「何もかも周囲がサポートしてあげるだけでは、いずれ社会に出ていく子どもたちが、それぞれの特性を理解し、折り合いをつけて生きていく力はつかない」という考えから、決められたルールを守ることや、感情をコントロールすることなど、人との関わりの中で生きていくために必要なスキルが身につけられるよう、オルタナプレイスでの活動をデザインしています。

例えば、筆者が見せていただいたボードゲームでの遊びでも、最初に佐々木さんが「解説書にかかれた通りのルールで遊ぶ」「負けると悔しい気持ちになるが、泣いたり怒ったりしない」といった約束事を共有し、ゲーム中も度々それを思い出させることで、お子さん同士でそれを守るように意識しあえる環境が作られていました。

(佐々木さんがゲームを進行しつつ、ちょうどいいタイミングでリマインドを行います。介入しすぎてもしなさすぎてもいけないのが難しいところです)

一朝一夕でそういった力が身につくほど、事は単純ではありません。こうした状況で佐々木さんが大切にしていらっしゃるのは、「子ども扱いせず、1人の『人』として接する」という考え方です。子どもに必要なケアや接する上での工夫を放棄するという意味でありません。佐々木さんは「子どもを子ども扱いして、『できなくて当たり前』『分からなくて当たり前』という気持ちで接していると、その時の状態に止まってしまって、その子の成長につながらない。今すぐは分からない・出来ないようなことでも、分かるようになる力があるという視点を持って、子どもと関わることが大切なんじゃないでしょうか」と話します。

それぞれの困り事に向き合って、サポートを行う

佐々木さんがオルタナプレイスを立ち上げられたのは、佐々木さんの娘さんが自閉症スペクトラムとADHD、書字障害の診断を受けたことがきっかけでした。子育てに際してご自身が苦労を感じられたことで、こうした子ども達にとって魅力的な施設を自ら作ろうと考えたのです。上述のような活動の理念も、ご自身のご経験を踏まえてのものです。

佐々木さんがオルタナプレイスを立ち上げられる際に感じられたのは、放課後等デイサービスに対しては、特別支援学級や特別支援学校に在籍する子ども達が利用するサービスという意識が根強いということでした。既存の施設でも様々なタイプの支援が提供されてはいましたが、通常学級に在籍する子どもが自分に合ったサービスを探すのが難しい状況がありました。

現在、特別支援教育が対象とする範囲は広がっており、通常学級に在籍していても、発達面での課題があり対人スキルや集団行動の難しさがある子どもであれば支援を受けることができます。外部から一見して特に問題がないように見えても、実は何らかの困り事を抱えている可能性があるのです。

オルタナプレイスは、子どもたち一人ひとりに向き合い、それぞれ異なる個性を持つお子さんたちの特性を理解しながら、その成長をサポートしています。

(お子さんたちが家に帰った後のオルタナプレイス。また明日。)

オルタナプレイス八幡
仙台市青葉区八幡4-1-6
HP:https://alternaways.com/
twitter:@alternaplace
TEL:022-343-9222

この記事はTOHOKU360とYotsuya Canalが今年2月に開いた「東北ニューススクール in 八幡町」の受講生の記事です。受講生たちが独自の視点から、歴史と伝統が根付く「八幡町」の魅力やユニークな人、活動を掘り下げて取材・執筆していきます。ご期待下さい!

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