孤立しがちな「未就園児の育児」を支援。保育士がわらべうたベビーマッサージ講座を開催

鈴木和浩】仙台市宮城野区幸町にあるコミュニティ・センター「幸町市民センター」で、わらべうたや体をつかった遊びを行うイベント「親子で楽しんじゃOH!」が開催された。わらべうたや、体を使った遊びがなぜ大事なのか、そして、背景にある未就園児(幼稚園や保育園に在園していない3歳前の児童)の育児をとりまく環境について、主催者に現状を聞いた。

わらべうたにはベビーマッサージの効果も。メディアがあふれる現代にこそ必要なもの

7月12日に開かれたイベントでは、フリーランスの保育士として「トナリのほいくし」の活動を行っているそねやすこさんが、わらべうたの遊びを紹介。仙台市宮城野区家庭健康課の藤井諒さんが、メディアとの上手な付き合い方を説明し、参加者に実践してもらった。

そねさんは、わらべうたについて、「歌に合わせてマッサージをすると、知らない間に全身を触ってあげていて、血行も良くなり、一緒に歌うことで情緒を一緒に感じることができる」と説明する。特に手足の指先をマッサージすることで血流が良くなるほか、神経の発達につながり、頭をなでることはそれだけでツボ押しの効果があるそうだ。

「手はスキンシップトイ、声はコミュニケーショントイ、顔はビジュアルトイと言って、毎日触れあうことで親子の絆を育むのはもちろん、子どもの異変に気付きやすくなります。また『三つ子の魂百まで』と言われますが、まだ五感が発達していないからこそ、3歳までに一緒に触れて、だっこして、おんぶして、『ぎゅっ』とくっついたことは、魂の中に深く刻まれ、それが自己肯定感や、人に対する信頼感、自尊心につながると言われます」。そねさんはこのようにも語り、親子が触れあうことの重要性を強調する。

藤井さんも体を使った遊びの重要性に共感しつつ、テレビなどのメディアの弊害を指摘する。「2歳の子で、メディアと接する時間を2時間以内という目安がありますが、どうしてもメディアがあると、親の反応に子どもが気付きにくかったり、逆に子どものアピールに親が気付きにくいということが言われています」。体を使う、感覚での遊びというものが、適度に子どもに疲労感を与えて睡眠時間が整うようになり、食事のリズムを整える効果もあるそうだ。

孤立しがちな未就園児の育児を行う親に、情報発信を

そねさんがフリーランスでの活動をはじめたきっかけは、未就園児の育児を行う母親たちとの会話にある。「元々、仙台市の『保育所等地域子育て支援センター・訪問型子育て支援事業』に従事していました。相談は、赤ちゃんとの遊び方に関するものが多かったんです。寝ている赤ちゃんとどんなことをして遊んだらいいのかと。歩けるようになれば、外に遊びに行けるようになりますが、ゼロ歳児ってなかなか遊べないから。それで、フリーになってベビーマッサージ教室を始めたり、居場所づくりみたいなことをしたりして。もちろん、『支援センター』でもゼロ歳児を対象にした取り組みはありますが、バランスも必要で、ゼロ歳児専門ということはできないので」。

一方で、課題もある。未就園児の育児支援を必要とする人に、どうすれば情報が届くかだ。この日のイベントは、3組の家族が参加した。このうち、2組は普段から通っている児童館を通じて、残る1組は、チラシで開催を知ったという。共通するのは、外出できる程度には余裕のある家族ということだ。

近年、ワンオペ育児という言葉に表されるように、一人で育児を行う親の負担が注目されている。育児に疲れ、追い詰められているような親にどうすれば情報が伝わるのか。そねさんも明確な答えは持っていないと言うが、取材の最後にこう締めくくった。

「私だけでなく、『支援センター』も、児童館も、そして市民センターも、いろいろなイベントを企画していて、その情報を発信している。だから、それをいかに知ってもらえるか。知る機会もないほど、目の前の育児に一生懸命なんです。情報自体は、いろんな雑誌とか、ネットにも出ていたりしますが、その気にならないと見なかったり、見逃してしまったり。だから、必要な時に必要な人が掴んでくれたら良いし、そこに委ねるイメージを持っていて。でも、情報は常に発信し続けていく。気づいた人が来てくれたらうれしいなと」

この記事は、仙台市の宮城野区中央市民センターとコラボした市民記者養成講座「東北ニューススクールin宮城野」の受講生の制作した記事です。宮城野区を舞台に活動するさまざまな地域密着の市民活動を取材し、発信していきます。他の記事は下記の画像バナーからご覧ください。

*TOHOKU360で東北のニュースをフォローしよう
X(twitter)instagramfacebook