災害時の女性ならではの悩みをシェアする交流の場「防災カフェ」に参加してみた

こんにちは。通信員の鈴木千絵です。2024年5月に仙台市内で行われた「働き女子(単身・独身)のための防災カフェ」(以下「防災カフェ」)というイベントに参加しました。防災カフェはお茶を飲みながら、災害時の女性の悩みをシェアする交流の場です。主に、地域とのつながりが少ないとされる働く単身・独身女性を対象としています。どのようなイベントだったのか、参加して感じたことをレポートします。

参加のきっかけは、東日本大震災で感じた不安から

第3回「働き女子(単身・独身)のための防災カフェ」チラシ。仙台市市民活動サポートセンターなどに置かれた。

私が「防災カフェ」を知ったのは2024年3月に、仙台市市民活動サポートセンターの広報誌で主催者へのインタビュー記事を読んだことがきっかけでした。なぜイベントに興味を持ったのか。それは東日本大震災(以下震災)時に感じた不安を思い出したからです。

震災当時、私は仙台市内中心部のマンションに一人でいました。日中は職場の人たちとコミュニケーションがあり不安が和らいでいたものの、マンションでは近所付き合いもなく、余震があるたびに恐怖と孤独感に襲われました。

さらに不安に拍車をかけたのが、食品や日用品のストックをほとんどしていなかったことです。幸い何とか大量に保管していたもので凌ぎましたが、もしそれらが無くなっていたらと考えるとゾッとさせられました。近くにお店はたくさんあるのに、商品の流通が滞っており商品自体がない状態でした。それはお金を持っていても必要なものが手に入らないということ。いざというときに身近に頼れる人がいない孤独と備えの大切さを痛感したのでした。

にもかかわらず、震災から時が経つにつれて当時の記憶は薄れ、防災はつい後回しに。備えが必要なのはわかっていても、どこから手をつければよいのかわからずにいたのです。そこで同じような不安を持つ人たちと話して、防災について知りたいという思いで参加しました。

「単身女性が災害時に心細くならないためのネットワークを作りたい!」という主催者の想いから開催

5月25日、仙台市市民活動サポートセンターで開催された第3回の防災カフェに参加しました。

はじめに主催者である「独身女子防災プロジェクト」代表の北村育美さんより、自己紹介とイベントを開催したいきさつや想いについてお話がありました。

北村さんは、2004年10月に発生した新潟県中越地震で実家が被災した経験から、復興支援の仕事や被災地でのボランティア活動に関わってきました。東日本大震災発生後は、福島県に復興支援に入ったのを機に、富岡町の支援のために郡山市に移住しました。

「防災カフェ」の企画につながったのは、福島市で経験した台風19号(2019年)と2回の福島県沖地震(2021年・2022年)。当時は一人暮らしで地域のつながりがほとんどなかったため、心細さを感じた一方で、これまでのボランティア経験で得た防災の知識で不安が和らいだことが原点となったそうです。

2023年に宮城県仙台市に移住したのを機に、自らの経験から「独身・単身女性の備えや、災害発生時の心細さを解消をしたい」と「独身女子防災プロジェクト」を立ち上げました。

同年9月から「防災カフェ」を開催し、今回で3回目。「ゆるやかなネットワークを作り、声をかけあえる人を増やすことで、お互いに災害時の不安を少なくしたい」と開催への想いを話しました。

北村さんのお話の後、5名の参加者が自己紹介をしました。それぞれ「災害に備えて何をしたら良いか知りたい」という参加の動機や東日本大震災時のエピソードなどを話し、他の参加者も時折頷きながら、聞き入っている様子でした。

自己紹介の様子。出身地や「防災カフェ」に参加したきっかけなどを話した。

大災害に備えて、みんなに聞いてみたいことや話し合いたいことをシェア

自己紹介の後は、いよいよ「交流」の時間です。「大災害の時や防災について他のみなさんに聞いてみたいことや、この場で話し合ってみたいことを書いて下さい」という北村さんの呼びかけで、それぞれが付箋に書き出しました。その中から2つピックアップして話しました。

話したいことや聞いてみたいことがたくさん。その中から2つに絞った。

1.「日常の中の被災イメージを持っていますか?」

「もし通勤中に大きな地震がきたら、職場に戻るか、自宅に帰るか行動に迷う」「運転中に地震が来ると、とっさのことに戸惑ってしまう」といった主に自宅外での被災に不安を感じる方が多い様子でした。

そこで北村さんから「防災ポーチを作る」という提案がありました。「防災ポーチ」とは非常事態に備えて、必要なものをいれたポーチです。中に入れるものは人それぞれで、例えば、小型のライト、モバイルバッテリー、小銭、常備薬、お菓子など。普段から持ち歩くことで、「災害だけではなく、エレベーターの緊急停止などの非常事態でも役立ちます」と北村さん。

さらに、「ハザードマップのチェック」が挙げられました。自宅や職場がある地域に起こりうる災害や避難所の場所が一目でわかるので、被災イメージが掴みやすくなります。「災害の種類によって避難所の開設のタイミングに違いがあるので、事前に確認しておくと安心です」というお話でした。

仙台市発行の「仙台防災ハザードマップ」。冊子版は、市役所本庁舎、区役所、総合支所の総合案内などで配布されている。

2.みなさんのおすすめの「防災⚪⚪」はありますか?

参加者一人ずつ、おすすめの防災グッズを出し合いました。断熱シート、カイロにもなるバッテリーなど様々なものが挙がるうちに、「食料や水などのストックはどのくらいの日数が必要か」という話に。

そこで長年、被災地のボランティアとして活動してきた北村さんより「ローリングストック法」についてアドバイスがありました。

「日常生活で食べているお菓子などもストックしておくと、非常時でも精神的に安心できます」と北村さん。

「例えば乾麺やレトルト食品、フリーズドライ、お菓子などの食べ物や、水などを普段から少し多めに買っておき、日常生活で消費しながら、消費した分を買い足していくという方法です。大きな災害に備えて、普段食べているもののストックがあると良いですね」。

必要なストックの量については、想像がつきにくいというのが正直なところ。北村さんより、自分に適した備蓄量を調べられるサイト「東京備蓄ナビ」(東京都防災ホームーページ)の情報提供がありました。

【参考】「東京備蓄ナビ」自分に合った備蓄を調べてみよう | 東京備蓄ナビ (tokyo.lg.jp) 
(家族の人数、年代、居住形態、ペットの有無などの質問に答えるだけで「食品」「衛星用品」「生活用品」などの分野ごとに必要な量が割り出される)

そこから「何をストックしておけば良いか」という話題に。食品だけではなく、カセットコンロやボンベ、小銭などの他に、水を使わないドライシャンプーや普段使っている化粧水、女性用品など女性ならではのものがリストアップされていたのが印象的でした。

「防災カフェ」に参加して感じたこと

最後に参加者がそれぞれ感想を話しました。「日常生活でできることをしておくだけで、安心感につながる」「参加者のみなさんとお話したことで、不安が和らいだ」といった声があり、思わず共感しました。

私自身も、防災について不安を感じているのは自分だけではないということがわかり、心強さを感じたとともに、備えることで不安が和らぐのではないかと思いました。

そこで防災カフェで話に出たことを生活に取り入れるところから始めてみることに。まずは「ローリングストック」です。レトルト食品やカップ麺を多めに買い置きし、家と職場にそれぞれストックしたり、通勤と日常で使う自動車のガソリンをこまめに給油するようになりました。

また「防災ポーチ」も、普段使っているポーチに、常備薬とウエットティッシュをいれるところから始めました。家、職場、もしくは通勤中に被災しても冷静に次の行動に移れそうです。

さらに人とのつながりが安心感をもたらすことを実感したので、今後も防災カフェなどの集まりに定期的に参加し、同じ境遇の人たちとのつながりを増やしていきたいです。

次回の第4回「防災カフェ」は、7月15日(月・祝)に開催予定です。テーマは「防災食」。ストックしている防災食や食べてみたい防災食を持ち寄り、実際に食べてみます。

地域とのつながりが少ない中で、いつ発生するかわからない災害に不安を感じるという女性の方におすすめのイベントです。詳細は以下の通り。

日時:2024年7月15日(月・祝) 12:00~13:30
会場:仙台市市民活動サポートセンター 研修室3
※防災食を可能な範囲でお持ち下さい。
(そのまま食べられるものもしくは、お湯があれば食べられるもの)
申し込み・問合せ先:独身女子防災プロジェクト dokushinbosai@gmail.com

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