【東北大発】「研究者」と「余っている実験室」をつなぎ、社会に新たな価値を生む Co-LABO MAKER

全国の大学や企業にある研究のための実験機器や実験室を、誰でも時間単位〜数カ月単位で借りて実験することができるプラットフォームサービス「Co-LABO MAKER」を提供。研究者として芽生えた課題意識から、組織の壁にとらわれずに誰もが自分のやりたい研究ができる「研究の民主化」の実現を目指す。

研究者としての問題意識から生まれた「研究設備」のシェアリング

東北大学で2つの研究室に所属後、化学メーカーの研究者をしていた古谷優貴代表は、企業の中で自分のやりたい研究ができないことに悩んでいた。一方で大学や企業で目にしてきたのは、億単位で購入した高額な実験機器がプロジェクト終了後に使われなくなる状況。企業や大学に眠る実験機器を外部に貸し出すことで、個人の研究者が自分の好きな研究を自由にできる環境を作れないかーー。そんなプラットフォームサービスを考案し、大手企業主催のビジネスコンテストに応募したところ最優秀賞を受賞。会社を辞め、2017年起業した。

プラットフォームサービス「Co-LABO MAKER」は、2018年にβ版を公開。全国の大学の研究室や企業の研究所などにある実験機器や実験室が登録されており、利用者は機器・設備を借りるための検索から申し込みをウェブ上もしくは、コンシェルジュのサポートの元に行い、スポットから必要な研究環境を確保できる。現在は月に20件ほどの申込みがあるといい、研究者が普段の研究環境では使えない機器で自分の興味のある研究をしたり、デザイナーが特殊顕微鏡を借りて作品に用いる材質を数値化して調べたりと、リリースから現在にいたるまで幅広い用途で利用されてきた。

(Co-LABO MAKERではサイト上で使いたい実験機器や設備の検索ができる)

「実験室の期間貸し」で、企業の新規事業のコストを大幅に下げる

現在は時間貸しだけでなく、1カ月〜数カ月単位で企業や大学で使われていない「実験室」を丸ごと貸し出す「期間貸し」のマッチングサービスにも力を注ぐ。これまでは企業が新規事業立ち上げのため異分野の研究開発を新たに始める場合、研究設備を整えて新しい研究室を作るには数千万円に上る投資が必要だった。Co-LABO MAKERを使えば、大学や他の企業ですでに研究に適した設備が揃っている実験室を一カ月につき数十万程度から、必要な期間だけ借りることができる。

古谷代表は「一定の期間で研究拠点がほしい、という企業側のニーズは多く、逆に設備を余らせていたり実験室が丸ごと空いていたりする企業や大学もかなり存在する」と、事業の可能性を語る。大手企業のほか、十分な研究設備を自分たちで揃えることが難しいベンチャー企業からも引き合いが強く、すでに関東や関西地方の企業や大学約30箇所の実験室が登録され、利用され始めている。登録される実験室の数はこれから大きく拡大する予定だ。

(企業や大学のさまざまな研究分野の実験室の期間貸しを可能に)

東北に全国からベンチャー企業を誘致する引力に

実験室の期間貸しサービスは、東北大学でも始まろうとしている。東北大学に研究室を構えることは企業側にとっては教授や優秀な学生へのアクセスが生まれるなどの大きなメリットがあり、大学側にとっては使われていない研究室を大学の新たな収益源につなげることが可能だ。さらに大きなインパクトとして、古谷代表は「全国から東北大学にベンチャー企業を誘致する引力になりうる。大学の研究とベンチャー企業とが混じり合い、学内の起業の雰囲気も高まるのではないか」と、「東北大学発ベンチャー」を育てる環境づくりにも寄与する取り組みになると語る。

「組織によってやれることの壁がなくなり、誰もが自分のやりたい研究ができる世の中になる。そんな『研究の民主化』の実現を目指している」とのビジョンを掲げ、これからは出身校の東北大学でもそのための環境づくりを進めようとしている古谷代表。起業を目指す東北大生には「一緒に東北大学をアップデートしましょう」とメッセージを送った。

連載:東北大発!イノベーション】2020年、世界大学ランキング日本版の一位になった東北大学。世界最先端の研究が進む東北大では今、その技術力を生かして学生や教職員が起業し、研究とビジネスの両輪で世界の課題解決に挑む動きが盛んになっています。地球温暖化、エネルギー問題、災害、紛争、少子高齢化社会…そんな地球規模の問題を解決すべく生まれた「東北大学発のイノベーション」と、大学に芽生えつつある起業文化を取材します。(毎週月曜日更新)

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