仙台の企業とフリーランスをつなぐ新サービス「DIRECTA」立ち上げへの想いを聞いた

岩崎尚美=仙台市】2019年4月、仙台市宮城野区に新築のコワーキングスペース「ARROWSSS(アローズ)」がオープンしました。それから8カ月後の同年12月、アローズを拠点とした新たなサービス「DIRECTA(ディレクタ)」がスタート。DIRECTAを立ち上げるに至った経緯や今後の展望などについて、アローズの運営者であるJAPANESE STANDARD株式会社(仙台市宮城野区)の秋葉淳代表取締役社長(写真左)と、WEBディレクターの岩田惇氏(写真右)にお話を伺いました。

「DIRECTA(ディレクタ)」とは?
DIRECTAとは、案件ごとに個人がチームを組んでプロジェクトを遂行していく「スペシャリストディレクションサービス」です。つまり、この仕事を『得意なひと』にお願いしたいけど、誰に頼んでいいか分からない・・という課題をまるっと解決するサービスとなります。

秋葉社長のnoteより(https://note.com/arrowsssfujimon/n/ncab8dec25010

「フリーランスと仕事する」という旗を立てた

――DIRECTAの構想はいつ頃からありましたか。

秋葉社長(以下、秋葉):「DIRECTA」としてリリースしたのは2019年の12月ですが、実はそのずっと前からDIRECTAの要素を含んだ仕事をしているんです。

今から2年ほど前、僕がまだ個人事業主だったときに、スパイス料理研究家の印度カリー子さんのチームに加わり、スパイスを広める活動を手伝うことになりました。当時は知る人ぞ知るスパイスセットでしたが、今では全国から注文がくるほど人気商品に!スパイスを広める活動が、今ではすっかり事業として成り立っています。(2019年10月に香林館株式会社として法人化)

印度カリー子さんと働く中で、個人と仕事する機動力は、大手企業にはない強みだと感じました。依頼する企業側にとっても、専門性やスピード感はとても喜ばれましたね。それ以降ずっと、フリーランスと組んで仕事することは続けていました。それを「DIRECTA」というサービスとして、今回動画で発表したんです。

岩田氏(以下、岩田):もともと「外注」というシステムは昔からありました。中には、外注先がフリーランスだったこともあったはずです。それを敢えて僕らが、「フリーランスと組んで仕事する」ことにDIRECTAという名前をつけた。要は、旗を立てたんです。宣言してしまえば、あとは徐々に周りが連動していくはず。フリーランスとして活動したい人は集まってくれるし、フリーランスの即戦力が欲しい企業からも徐々に声がかかるだろうと考えています。

地元企業のリアルな悩み「人材不足」と「集客」

――DIRECTAをスタートしようとしたきっかけの一つが、「地元企業の雇用力不足」だと伺いました。実際に、経営者からそういう声があったのでしょうか。

秋葉:たくさんの経営者から話を聞かせていただきましたが、多く聞かれた悩みは大きく二つ。「人手不足」と「集客」です。人手不足だから、経営者自らが多くの業務をこなさなければならない。かといって人を雇っても定着せず、急に来なくなることも多いと聞きます。そもそも雇用自体が今の時代に合ってないんだと思いますね。

――たしかに、地方の中小企業は人手不足が顕著だと言われていますね。もう一つ、集客については?

秋葉:「これからはSNSやインターネットの活用が重要」なんて言われているけれど、やり方がわからない、教えてほしいと。この2点は業種を限らず、中小企業の経営者のリアルな声としてとても多いですね。

――そうしたリアルな声が、DIRECTAを始めるきっかけとなったのですね。

秋葉:はい。もともと、企業が人を雇用して経営するスタイルは難しくなっていくだろうと考えていました。これからは間違いなく、案件ごとに即戦力となるフリーランスと組んで仕事を進める手法が主流になると。それで、フリーランスと企業が組む基盤を仙台につくろうと考えました。これがDIRECTAの始まりです。

「顔が見える」信用を積み重ねる

――まだ立ち上げから間もないですが、手ごたえは?

秋葉:DIRECTAをローンチするひと月ほど前に、ピンポイントで自分たちが想定していた人から問い合わせがありました。今後ウェブで新規顧客を発掘したいと考えている、宮城県の企業です。いま話を進めている最中なんですが、まさにこういう人たちの助けになるサービスだと確信を得ましたね。

――DIRECTAとしてサービスを始めたことで、今後ますます相談を受けやすくなりそうですね。

岩田:そうですね。DIRECTAを立ち上げたのは、信用を得るためでもあるんです。

――信用……どういうことでしょうか。

岩田:実際に仕事をするのはフリーランスでも、会社から直接フリーランスに依頼するのは、残念ながら信用面から難しい場合があります。けれど僕らが「会社のサービス」としてDIRECTAを提供すれば、それはあくまで会社と会社のやり取り。一定の信用を担保できます。結果的に、仕事したいフリーランスにとっても、依頼したい企業にとっても、Win-Winになれます。

秋葉:企業がフリーランスに外注するサービスは他にもあって、例えばクラウドソーシングもそうです。でも仙台の企業は「顔が見える」「呼んだら来てくれる」、そういうところを重視するので、どうしてもとっつきにくいんですね。その点僕らは、外注のフリーランスだけど直接会えるから顔が見えます。それだけでなく経営の相談に乗ったり、解決のために行動したりもできるんです。そうやって、一歩ずつ信用を積み重ねていくつもりです。

――DIRECTAのプロモーション動画に映っている「スペシャリスト」と呼ばれる9人のフリーランスの方は、皆さん個性的ですよね。どんな基準で選んだのでしょう。

岩田:なるべく、いろいろな職種の人で構成しようと考えて選びました。なぜかと言うと、フリーランスが持たれがちな「IT系の人」というイメージを払拭したかったんです。エンジニアやプログラマーだけでなく、経理や広報など一般職と呼ばれる人がフリーランスだっていい。フリーランスに職種の枠はないんです。

秋葉:それと、「個性」を打ち出すための戦略でもありました。例えばクラウドソーシングの場合、顔写真を公開していない人もいるし、プロフィールや提案文もみんな似通っていたりします。それなら、誰に依頼しても同じに思えちゃうんですよ。でも、本当はそうじゃないですよね。その点、DIRECTAならみんなの顔が見えるし、それぞれ強烈な個性がある。それをわかりやすく示したのが、あの動画です。

――DIRECTAで選定するスペシャリストは、あの9名以外にもいるんでしょうか。

秋葉:もちろんです。あれはあくまでイメージ上の9名なので。実際には、案件に応じた最適なスペシャリストたちがいます。

岩田:DIRECTAの特徴は、その名の通りディレクション。マッチングとは決定的に違います。つまり、人を紹介して丸投げじゃないんです。

具体的には、まずはクライアントの要望をヒアリングし、それに応じたスペシャリストを選定します。それから僕ら2人が中心になって必要なスペシャリストを加えたチームを作り、一緒に事業を動かしていきます。

――DIRECTAを立ち上げるにあたって、難しかったことや大変だったことはありましたか。

秋葉:サービスの内容自体はこれまでもやってきたことですし、難しさを感じることはありませんでした。むしろ、これからが大変でしょうね。仙台という場所で、フリーランスに安心して仕事を依頼できるんだという信用・信頼を積み重ねていくのは、容易なことではありません。それには、ウェブプロモーションだけでは不十分。実際に企業へ足を運んで、1対1で説明していく必要がありますから。まだまだ時間がかかるでしょう。

岩田:これから僕らは、旗揚げしたからこその責任を持ち続けなくてはいけないと思っています。フリーランスに対しても企業に対しても、「フリーランスと企業が組んでちゃんと仕事ができるんだ」ってことをしっかりと理解してもらうために、プレッシャーと責任をしっかり感じつつまい進していくつもりです。

原点は、2人きりで歩いた河原での会話

――おふたりはどういった経緯で一緒にビジネスを始めたんでしょうか。

秋葉:新卒で勤めた会社が同じで、岩田さんは僕より2つ年上の先輩でした。僕が3年目のときに一緒の部署になって、そこから関わりを持つようになりました。会社のみんなとBBQしていたとき、2人きりで河原を歩きながら、お互いの将来のことを話していたんです。僕は大学生の頃から起業したい、経営者になりたいと考えていたので、それを伝えて。そこで、岩田さんとめちゃくちゃ盛り上がりまして。

――みんなでやっているBBQを抜けて、2人きりでそんな濃い話をしていたんですか? 当時から仲が良かったんですね。

秋葉:いや、そうでも(笑)。岩田さんはあまり自分の感情を表に出さないので、とっつきにくい先輩、というくらいの認識でした。でもそんな先輩に隠れた熱い一面があるのを知って、すっかり盛り上がっちゃって。一緒に起業しよう! って。

――そこが今のお2人の原点なのですね。

秋葉:はい。その後、僕は英語を学ぶために退職して海外留学へ。岩田さんはウェブ業界に転職して、それぞれ起業に向けて経験を積むことにしました。

――岩田さんは、秋葉さんとの会話でどんなふうに感じましたか。

岩田:僕はもともと、起業や経営にあまり興味がなくて。どちらかといえば、1人でのんびり仕事したいなあと思っていたんです。でも秋葉とそういう話になってからは、考え方が変わりました。思い切って、かねてから興味があったウェブ系の会社に転職することにしたんです。そこの会社は業務内容もおもしろいし、スピード感もあるし、上司も仕事ができる。最高の環境でした。そこでの経験は自分を成長させてくれましたし、今の仕事にも確実に生きていると実感しています。結果的に、すべてが良い方向に進みましたね。

――2019年の4月にアローズをオープンして、もうすぐ1年。運営してみて、当初の予想とのギャップはありましたか。

秋葉:良い意味でのギャップならありました。自分が「出会いたい人」に出会えているなという感覚です。

――というと?

秋葉:例えば何かやりたい事業があったとしたら、普通は自分から力になってくれる人のところに会いに行かなきゃいけませんよね。でもアローズがあることによって、相手から会いにきてくれるんです。もちろんそういう狙いも少なからずあってアローズを建てたんですが、想定以上の出会いが得られているな、と感じています。

地元企業へひと言「経営者の目線で伴走できます」

――雇用力不足に悩む企業、経営者の方にひと言メッセージをお願いします。

岩田:地方の経営者ほど、現状を変えなければと危機感を持っていると思います。でもどうしたらいいのかわからない、周りに相談できる相手もいない。もしそんな状況だったら、ぜひ声をかけてもらいたいです。「そこらへんの若造と、一杯茶でも飲むか」みたいな感覚で構わないので。気に入ってもらえたら、試しに1カ月だけ契約してみる、とかでもOKです。雇用と違って契約ならいつでも打ち切れるから、企業側からするとリスクが低く、メリットが大きいはずです。

秋葉:これからどんどん、社員を雇用するのが難しくなっていくはずです。企業が求める人材と、働く人の希望がうまくマッチングするとは限りませんから。その点、僕らなら経営者と同じ目線で伴走できます。ぜひ僕らと一緒に、会社を盛り上げていきましょう。

JAPANESE STANDARD株式会社

今後やりたい仕事は? と聞くと「脱毛のPR!」と秋葉氏。「ひげ脱毛に興味があります」とのこと
>TOHOKU360とは?

TOHOKU360とは?

TOHOKU360は、東北のいまをみんなで伝える住民参加型ニュースサイトです。東北6県各地に住む住民たちが自分の住む地域からニュースを発掘し、全国へ、世界へと発信します。

CTR IMG