【東北大発】発達障害児向け学習支援ツールを開発し「誰もが自己実現できる世の中に」Easpe

発達障害のひとつ「自閉症スペクトラム障害」を抱える児童向けの、クラウド上の学習支援ツールを開発する株式会社Easpe。これまで高度な知識を持った専門家と高額な費用が必要だった学習支援をAIを使ったクラウドサービスで代替することで、福祉施設や家庭でより簡単に、児童それぞれの状態に合わせた学びが受けられる環境の実現を目指している。

官僚志望だった法学部生が、エンジニア・起業家に

官僚を目指して東北大学法学部に入学したという平塚智博代表。大学1年で留学した際に友人からビジネスの話題を聞くうち、ビジネスの持つスピード感と世界規模の影響力に魅了され「教育とITで世の中を変えたい」と起業を意識するように。大学2年から東京の複数のIT企業でインターンをし、独学でエンジニアとしての技術を習得。大学の単位を取り終えた3年夏から大阪に拠点を移し、IT企業で新規事業の立ち上げに関わった。

大阪では自閉症の子供を持つ友人と出会ったことで、発達障害を持つ子供の教育環境に関心を持つ。福祉施設にヒアリングを重ねながら、深刻な人材不足でアナログな作業の多い福祉業界の業務をITで効率化できるサービス案を練り、大学4年生だった2019年2月の東北大学のビジネスコンテストで優勝。翌3月に株式会社Easpe(イースピ)を設立した。

AIなどのITシステムを導入し、多くの発達障害児に学習機会を

発達障害児は早期に適切な学習支援を受けることで社会性が向上するなどの効果が確認されているが、発達障害や療育に特化した高度専門人材は決して多いとは言えない。一方で効果が確認されている支援方法の多くは1対1での支援を前提としたものであるため、現行の制度では一人ひとりにあった質の高い支援を提供することがままならない状況だ。

Easpeが挑戦するのは、AIなどを用いたITシステムを導入することでこの学習支援のコストを下げ、多くの発達障害児(特に自閉スペクトラム症児)が適切な支援を受けられる状態にすることだ。

児童の状態を確認するための保護者や教師へのヒアリング、学習目標や計画の設定、達成の評価ーーといった、現在は専門家が人の手で行っている学習支援を、AIによる自動分析や映像解析などを用いながらITシステムで自動化・効率化。福祉施設や教育機関にクラウド上のシステムとして導入することで現場の負担を減らし、より多くの発達障害児に一人ひとりに合った適切な学習の機会を提供できるしくみを作る。

ソーシャル分野で「儲かる」持続的なビジネスモデルをつくる

現在Easpeはサービスの実装に向け福祉施設と開発を進めており、東北大学医学部の永富良一教授とも共同研究を進める。事業には発達障害や応用行動分析学といった学術面の理解とサービス開発の技術力の双方が必要なため、「国内外問わず応用行動分析学の先生を顧問に迎えたい。サービスを開発する上でエンジニアも欲しい状態」と、本格的な事業展開を始める上での課題を挙げる。

「IPOを目指す起業に比べればそこまで跳ねないかもしれませんが、共同体レベルで困っている課題を解決していく『社会起業』は社会にとって必要な存在。そしてソーシャル分野だからこそ、きちんと儲かってビジネスが回る持続的なモデルを作りたい」と、平塚代表。

「生まれや性別、障害など『生まれ持ったもの』だけで将来が閉ざされることなく、100人いたら100通りの自己実現ができる世界が理想だと思っています。マイノリティーの人々への教育コストが高いという課題に対し、どんな持続的な解決策を提示できるか。まだ世界のどの国も解決できていないこの問題に一緒に挑戦してくれる仲間がいたら、ぜひ連絡してほしいですね」

東北大学スタートアップガレージコラボ企画:東北大発!イノベーション】2020年、世界大学ランキング日本版の一位になった東北大学。世界最先端の研究が進む東北大では今、その技術力を生かして学生や教職員が起業し、研究とビジネスの両輪で世界の課題解決に挑む動きが盛んになっています。地球温暖化、エネルギー問題、災害、紛争、少子高齢化社会…そんな地球規模の問題を解決すべく生まれた「東北大学発のイノベーション」と、大学に芽生えつつある起業文化を取材します。

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