腹話術の楽しさ、知ってほしい!「F-1腹話術グランプリ」優勝の名取市の女性、新しい笑いに挑戦 

寺島英弥(ローカルジャーナリスト)】パペットを使う腹話術を5年前に始めた名取市の女性が、今年4月の「第3回F-1腹話術グランプリ」で優勝、地域に根差したライブ活動で忙しい。「カズちゃん」こと飯倉和子さん(54)の持ち味は、「私は主婦、腹話術は趣味」と語りながら、ひらめきあふれる笑いのネタ。「新しいエンターテイメント、若い世代にも見に来てほしい」と挑戦を続ける。 

「新しい発想」、いっこく堂さんから賛辞 

「トゥルルルル」(電話を鳴らす音)「もしもし、娘は預かった。返してほしかったら、1千万円、用意しろ」「え、そんな大金は無理?」ー。 

黒一色の服、帽子にサングラスの男が、女の子を誘拐し、身代金要求の電話を家に掛ける。ところが、それがとんでもない家族で…というどんでん返しが待つ、飯倉さん作の『誘拐』。8月30日、名取市ゆりが丘公民館の和室のライブ会場が爆笑で包まれた。 

<誘拐という発想から、腹話術でこんなことができる、目からうろこでした><コミカルな芝居がとてもよくて、台詞も聞きやすかった>。神戸市であった腹話術グランプリ決勝でのネタと演技に、審査員でこの道の第一人者、いっこく堂さんからもらった賛辞だ。 

パペットの「譲ジイ」とコントを演じる飯倉さん=名取市ゆりが丘公民館

「生きて帰れば丸もうけ」という大舞台と同じ出し物で、腹話術に入門時からの相棒、女の子のパペット「しーちゃん」との絶妙のコントが、公民館の年配客たちのハートもつかんだ。 

ゆりが丘は、飯倉さんが家族と暮らすご当地。ライブを企画した住民団体「地域力お宝たんけん」(関田康慶代表)の本郷力夫さん(69)は、「カズちゃんこそ地元のお宝。たくさんの仲間と応援したいし、日本一に輝いた芸でみんな一緒に笑えて幸せ」と喜んだ。 

気負いなく挑んだら、新ネタが次々 

飯倉さんは主婦でパートの介護福祉士。腹話術を始めたのは5年前だった。もともと母親の趣味で、病気になり使えなくなったパペットをもらったという。自身も興味を持ち、訪問歯科医で「シャローム・パペット仙台腹話術教室 」を主宰するスマイリー・チバ(本名・千葉俊一)さんに入門した。「人前で話すことが少なく、練習で『声を変えてみて』と言われて、ハードルは高かった。それでも、介護の施設などでのボランティア活動で経験を積ませてもらった」

最初に作った出し物は『偉い人』。当時の安倍晋三首相(故人)に着想を得た皮肉な笑いのストーリーだった。問題の絶えない政治のネタは尽きず、「今は裏金問題に姿を変えて進化しています」。 

グランプリ2次予選のネタ『特殊な特殊詐欺』を披露する飯倉さん=8月30日、名取市ゆりが丘公民館

腹話術グランプリには3年前の第1回から挑戦し、2次予選まで進んだ。が、京都から出場した初代王者・ニッシャン堂さんの、家族3代に愛犬まで勢ぞろいする「6体腹話術」の妙技を見て圧倒され、「私には無理、無理」と翌年のエントリーをやめたという。  

第3回に出場したのは、「その気はなかったのに、主催者から先生にお誘いがあり、背中を押されて仲間と出てみました。気負いなく、心軽く出られたのがよかった」。無心になると、新作が天から次々に降ってきた。昨年10月の1次予選を『譲ジイ 危機一髪』、2次予選は時事ネタ『特殊な特殊詐欺』で突破し、8組が残ったエンターテイメント部門決勝の『誘拐犯』も「固まることもなく、まあまあの出来」という結果が最高点だった。 

お笑いの感覚で気軽に楽しんで 

ゆりが丘公民館でのライブはグランプリ凱旋報告の趣旨で、洒落っ気あるおじいちゃんの大人ネタ『譲ジイー』、誘拐犯の男が今度はハナさんというおばあちゃんをだまそうと企て失敗する『特殊なー』も、飯倉さんは披露した。児童館や福祉施設の訪問ライブで子どもたちに人気者のサルのパペット、チャッキーも登場して愛嬌を振りまき、また40人のお客に飯倉さんが楽しさを伝える腹話術体験も盛り上がった。 

地元マスコミも注目する飯倉さんの活動は、8月25日に仙台市戦災復興記念館・展示ホールで催された「腹話術ショートライブ  カズちゃんF-1優勝への軌跡 」も満員の盛況となった。 来年6月まで依頼が舞い込んでいるという。

腹話術体験で楽しさを伝える飯倉さん=名取市ゆりが丘公民館

「これからの目標は、年に1度は単独ライブをやりたい。腹話術は、お年寄りや子ども向けとみられがちだったけれど、若者たち、大人たちにも、漫才やコントと同様、楽しいお笑いの感覚で、新しいエンターテイメントとして、ぜひ見に来てほしい」。飯倉さんの熱い抱負だ。

飯倉さんと仲間の発表会が15日、仙台で  

飯倉さんが仲間と出演する「シャローム・パペット仙台腹話術教室 」発表会が、15日(日)の午後、仙台市太白区長町で催される。以下のチラシの内容、申し込み先(QRコードあり)を参照。「今から申し込んでいただいても、当日のご来場も大丈夫です」。  

 

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