【続・仙台ジャズノート#40】電子音楽、アナログ、映像が連動するライブ。次の世代につなぐために

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】電子音楽と映像アートにアコースティックな楽器が絡むライブ「Sink into… “Live” -Diving-」が2022年10月29、30の両日、仙台市太白区秋保にある「秋保の杜 佐々木美術館&人形館」で開かれました。電子音楽特有のデジタルなサウンドにピアノやサックスが絡む音楽は、次世代を意識したサウンドづくりの点でとても興味深いものでした。加えて、今回は映像と音楽のコラボの分野のアイデアや実践が印象に残りました。

この日のライブは、コロナ禍と向き合うために演奏家自身が旗揚げした「仙台ミュージックゴーラウンド」の主催です。仙台中心に活動しているサックス奏者で電子音楽制作家の勝部彰太さん、ピアニストで音楽映像作家の浅野託矢さん、ビジュアルデザイナーの菊池士英(きくち・ことえ)さんが出演。山形県中心に活動しているシンガーソングライターでピアニストの北村蕗さんがゲストで参加しました。

演奏者の動きに合わせてスクリーンに映し出された映像が変化する。左から勝部さん、菊池さん、浅野さん

菊池さんが使用したカメラは最近、自動運転のセンサーカメラで知られるようになった「深度カメラ」と呼ばれる独特なもの。音楽や演奏者の動き、衣装の色彩などに合わせて、映像を連動・変化させることが可能です。イベントの中で菊池さんが行ったワークショップによると、たとえば、ステージ上の演奏者が深度カメラに向かって身体を近づけるだけで、スクリーンに表示されている映像の色彩が変わったり、文字の太さが変化したりします。場内の観客を撮影しながら「背景動画」としてスクリーンに表示させることで、一種の視聴者参加の雰囲気を出せると菊池さんは考えています。

実際、今回はアンコールのときに、最前列でマスクをかけて取材している筆者が「背景動画」としてうっすらと映りました。取材者としては冷や汗ものですが、その瞬間に、プロ野球などの中継でカメラに一瞬とらえられた観客が大喜びしている様子が目に浮かびました。「視聴者参加」の使い勝手はまだまだよくなるような気がします。

この日、演奏された曲目は以下の通り。

■北村蕗
1. Tomadoi 2.空耳な気がする(?) 3. Uta 4. Teal 5. 天使

■浅野託矢
1. DD15(Takuya Asano) 2. DD3(Takuya Asano)

■Sink into… “Live” -Diving-
1. Imaginaly Beach (Shota Katsube) 2. Kaleidoscope (Shota Katsube) 3. Kurage (Takuya Asano) 4. Tram(Takuya Asano) 5. Sink into…(Shota Katsube / Takuya Asano) -encore- 6. Anima (Takuya Asano)

北村さん(右端)も加わって盛り上がった「Sink into… “Live” -Diving-」のステージ

ジャズの基本を何とか身に着けたいと思っている筆者にとって不思議なのは勝部さんも浅野さんも、サックス、ピアノの優れた表現者なのに、なぜコンピューターや映像に関心を持つのか、という点です。多少、ぶしつけなのを承知で質問してみました。

勝部彰太さん「電子音楽を制作する立場になってみると、同じ個所を何度も繰り返したり、作り直したりできます。子どもやシニアのみなさんにとってもきっと有効で楽しいツールになるはずです。音楽の楽しさ、魅力を一人でも多くの人に伝えたい」

浅野託矢さん「電子音楽や映像表現は、工夫次第でどんどん自由な発想を生み出すことが可能です。

確かにピアノだけでも、いい作品を生み出すことはできるのですが、電子音楽や映像表現は、わたしたちの次の世代の人たちにつなぐためのツールとしての意味合いがあります。これからも一緒にやっていきたい」

菊池士英さん「若いころはアルバイトをたくさんしないと生活できなかった。独学でネットを活用するなどして勉強したおかげで、映像作家の仕事ができるようになりました。外国からの依頼や国内の企業からの発注のおかげで、経済的に少しは母に喜んでもらえるようになりました。それもこれも、映像制作では、非常に便利で役立つツールがたくさんあるので、うまく選択して、自分で工夫をすれば可能性が広がります」

【ディスクメモ】AMERICAN MUSIC BY BUNK JOHNSON 1944バンク・ジョンソン1944

バンク・ジョンソンはジャズ黎明期、ニューオリンズで活躍していたディキシーランドジャズのトランぺッターです。ジャズの伝説そのものといっていい存在ですが、日本のジャズDJの草分け、河野隆次さんのライナーノーツによると音楽から離れて埋もれていたところをジャズ研究者によって発見され、1940年代にカムバックしたそうです。このアルバムは「AMERICAN MUSIC」のタイトルで発表されたアルバム2枚のうちの1枚。日本版のマスター音源を製作するにあたって、河野さんらが尽力。「AMERICAN MUSIC」の音質の確保に苦労しました。

ディキシーというと、楽器が多いことや奏法自体が自在なスタイルであるせいか、演奏者一人ひとりのサウンドが聞き取れないことも珍しくありません。このアルバムは、演奏者のサウンドがクリアで、各人のソロをしっかり聞き取れるのが魅力です。主な収録曲は以下の通りです。いずれもディキシーのスタンダードですが、優れた音質でじっくり聴くのは本当に心地よい。

Tigar Rag,
See See Rider
St. Louis Blues
When The Saints Go Marchin’ In
When You Wore A Tulip
New Iberia Blues
Darktown Strutters Ball
Weary Blues

【メンバー】
バンク・ジョンソン:トランペット
ジム・ロビンソン:トロンボーン
ジョージ・ル:クラリネット
ローレンス・マレロ:バンジョー
ALCIDE PAVAGEAU: ストリングベース(コントラバス)
ベイビー・ドッズ:ドラム

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

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