誰でも元気になれるギャラリー・カフェ 「コロナに負けない」の画家が開店 仙台

【寺島英弥(ローカルジャーナリスト)】新型コロナウイルス禍のためニューヨークでの「ちんどん芸」の街頭パフォーマンスの計画が流れ、代わりに突然、絵心に目覚めて描き続けている仙台市在住の国分雅美さん(64)の話を昨年9月14日に紹介した。

〈コロナに負けない〉という作品を描きながら、「みんな、楽しみの外出を控えたり、好きな時に集まれなかったり。真ん中に<コロナに負けない>をどんと置いて、絵と草花とお茶で憩える場所をつくりたい」と願い、そんな夢の店をこのほど実現した。

JR仙山線の国見駅(同市青葉区)から、八幡町方向への通称うなり坂を5分ほど歩く。まず見えてくるのは、大きな絵が描かれたガレージのシャッター。のどかな木や草花の間に南国の鳥が遊び、黒い背中を向けたゴリラが猫を肩に載せている。国分さんの「楽園」であるようだ。

店の目印に、ガレージに描いたゴリラの絵

ここが自宅で、石段を上がった庭に面して、1階の居間などを改造したという店がある。名前は「国見の杜の陽まわりギャラリー マサ」。

国分さんの明るく色鮮やかな絵が並ぶギャラリー

国分さんは昨年11月に初めての個展を開き、「10点売れて、注文もいただいた。それからも描き続けています。どれも色遣い鮮やかな絵が、〈コロナに負けない〉を中心に26点並ぶ。大好きだというカラフルな花の絵が増え、ギャラリーはぱっと明るい。

隣の部屋はカフェ。店への模様替えは、お金を掛けたのが壁紙と間接照明くらいで、自宅にあった木のテーブルとチェアを集め、友人からもらったというグランドピアノのふたをおしゃれなテーブルにし、コーナーに置いた。

鮮やかな絵があしらわれたメニュー

メニュー表にも国分さんのお気に入りの南国の鳥と花の絵があしらわれている。目に入ったのは「なみさんの昼定食」。なみさんは91歳になる母で料理自慢。卵焼きや天ぷら、魚と肉の献立、みそ汁の定食作りに腕を振るっている。昨年8月に父勝雅さん(90)が他界し、「母の新しい生きがいの場もつくりたかった」。

調理場で腕を振るう91歳の母なみさん

カレーとミートソース、アップルパイと懐かしい手作り菓子「がんづき」のデザートも。筆者は絵を眺めながら、春野菜のペペロンチーノ、ナスの煮びたしを味わった。

筆者が注文したパスタのランチ

「4月10日にオープンして、木・金・土にランチを出しています。コロナが収まっていない中で、お客さんは日に8~9人くらい。いま休業中ですが、キーボードを弾いてお手伝いしているライブバーの常連さんや、近所の会社の社長さん、友人つながりの女性たち…。少しずつ、縁が広がっています」

国分さんのギャラリーカフェの開店を祝って、駆けつけた仲間たち

筆者が訪ねたオープンの日には仲間たちがお祝いに集い、2度目のこの日は、開店の話を知ったという女性二人が訪れて昼定食からコーヒー、がんづきまで、ゆっくりと楽しんだ。ギャラリーで絵を眺め、ランチの後、また絵の世界に浸って、日当たりのよい庭に出る。近隣は静かで木立の新緑がまぶしく、広い庭にはミモザ、ユキワリソウ、サクラソウ、ニリンソウが咲いていた。「これからは赤と白のバラ、アジサイも。お金を掛けずに庭を手入れして、カフェテラス席も設けます」

花いっぱいのカフェテラスにしたいと計画する国分さん

「ニューヨークには必ず行きます。できたら来年には。エンターテイメントの本場で『ちんどん』を披露する一座に参加してくれる仲間を、いま募っています。それまで絵とギャラリーの店を通して、人とのつながりを広げたい。『コロナに負けない』の絵は、そのシンボル。『密』には気を付けながら、音楽でも料理でも楽しみの集いを企画し、元気な笑いの生まれる場所に育てたい」

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