コロナ禍で困窮する仙台の路上生活者はいま

いづいっちゃんねる

新型コロナウイルスの影響もあり、仙台市でも生活に困窮し路上生活を送る方の姿が見られます。コロナ禍で路上生活者の方の生活は今、どうなっているのか。仙台市の路上生活者への支援活動を続けている芳賀隆太朗さんにお話を伺いました。

お話を聞いた方

芳賀隆太郎

芳賀隆太朗さん

NPO法人萌友代表。デザイン制作の仕事をする傍ら、ハンセン病問題を知り各地の療養所を訪問、元患者の方々と交流を重ねる。東日本大震災翌日から萌友の活動に参加、ホームレス支援と並行し被災者や困窮者の支援員、また2015年に施行された生活困窮者自立支援法の相談員を多賀城市で担当。路上生活者をはじめ様々な生きづらさを抱えた方々の支援をしている。

路上生活支援の現場って?

仙台市内ではNPO法人萌友のほか、複数のホームレス支援団体が「夜回り」の活動をしています。ホームレスの方々は、週に5日くらいはその場でご飯を食べることができるそうです。

「現在、夜回りをすると、だいたい30~40人の方々が来られます。NPO法人萌友では、私と母、それからボランティアさん2~3人で3つのコースに分かれて回るんですが、テントや小屋を自作し暮らしている方のいる場所や公園、仙台駅周辺など、大体回るスポットは決まっています。そこを車や徒歩で移動し、味噌汁とおにぎりと、あとで食べてね、とお土産の食べ物を渡します」

夏は蚊取り線香、冬は使い捨てカイロや葛根湯など、季節に合わせて必要な物を届けることもあるそうです。コロナ禍の生活では使い捨てマスクの支給も欠かせません。

「仙台駅でも2カ所回るところがあるので、食べ物を配りながら、路上の方とコミュニケーションを取ったり、困りごとがあれば相談を受けたり、誰々が来てないけど大丈夫かなあ、と安否確認を行ったりしています」

コロナ禍で仙台でも「住むところがなくなった」との声

写真は、4、5月の緊急事態宣言下の仙台駅。「周りに人が誰もいないなかでも食べに来られる方はいらっしゃって、食べ物で命をつなぐことの大切さを感じました」と芳賀さん。「夜回りや食事会に新しく来るホームレスの方だったり、住むところがなくなったんです、という方にお会いすることも確かに増えています」

新型コロナウイルスの影響で一番困ったのは、感染予防のため調理を準備する施設を借りられなくなってしまったり、ボランティアの方の数も減らさなければならなかったりしたことだといいます。萌友では夜回り以外に「食事会」も開催していますが、「三密」対策にも細心の注意を払わなければならなくなり、食事の前は必ず手洗いと消毒のお願いもしています。

なぜ路上生活者になってしまうのか?

厚生労働省の2020年1月の調査によると、仙台市の路上生活者数は70人。調査が真冬に行われたこともあり、実際にはもっと多いのではないかと言われています。そもそも、なぜ路上生活を余儀なくされてしまうのでしょうか。その問いに、芳賀さんはこう答えます。

「理由は色々です。職をなくす。家賃を払えなくなる。寮付きの仕事に付いている方は特に、病気や怪我で出て行くことになってしまった、というケースもあります」

中でも大きいのは、実は「心の問題」なのだといいます。

「小さい頃、本来お父さんお母さんから注がれるはずの愛情が少ない環境で育つと、大人になっても心の拠り所がなくなってしまい、極端に言えば、頑張るというアクセルを踏むことが難しくなってしまいます。そして、家庭内での身体的・精神的な暴力を受け続けたことを苦に家に居られなくなる方も少なくありません。虐待、DVは警察や支援センターに相談すれば良いという意見もありますが、家族から虐待を受けた成人男性とか、緊急保護に該当しないような精神的虐待を受けた女性などが利用できる制度や公的な入所施設はありません。制度の狭間からこぼれ落ちてしまうような方々をホームレス支援が受け止めることになります」

日本には生活保護制度があるものの、生活困窮状態を相談することを恥ずかしいことだと思ってしまったり、行政の窓口で冷ややかな対応をされたりすることで、相談に行くことをためらうケースが少なくないといいます。

「メディアを通してという部分もあると思いますが、生活保護や生活困窮がバッシングの的になってしまっていることも影響していると思います。私は、生活保護はもっとカジュアルに利用できる制度でいいと思います。年金、雇用保険、国保もそうですし、ほかの社会保障を使うことは何も言われないのに、なぜ生活保護だけ恥ずかしい事もみたいになってしまうのかなと。これはやっぱり、偏見、差別があり、自己責任とされてしまうからだと思います」

路上生活者からの脱却が難しいワケ

路上生活者からの脱却が難しい理由として、芳賀さんは「住所がない、携帯がない、身分を証明できるものがない人が就職活動やアパート契約ができるのか、という話です」と指摘します。萌友では「無料定額宿泊所」というアパートを運営し、自立=施設の卒業を目指して、生活保護の申請、年金受給の手続きの準備、病気がある方は治療、元気な方は就職活動…などその方が抱えている自立に必要な課題をオーダーメイドで支援しています。しかし、「自立」への道はそう単純ではないといいます。

新型コロナが流行する前の「食事会」のようす

「孤独が長引くと、何のために生きているのか、自分の未来を考えることが難しくなります。人との関係性がうまく作れないような人が、やり直した世界でまたしんどい思いを繰り返すのか、という気持ちになってしまうのです。実際に、入所を提案しても『今は大丈夫』『路上生活できなくなったらお願いすっから』と言われる方も多いです。うまく行くイメージができにくい、そう言う時期が長すぎると、助けて、と言う気持ちにもならなくなってしまうのです」

「施し」よりも「尊厳」の回復をめざして

芳賀さんは食事会や夜回り活動をする中で、通りすがる人に「こんな立派な体格でご馳走食べて何で働かないんだ」との言葉を投げかけられたこともあるそうです。芳賀さんは社会の行き過ぎた「自己責任論」を危惧します。

「泥水を啜って俺はのし上がってきたんだ、みたいな方からすると、『努力不足だ。ホームレスの支援を受けて甘えてんだろ』と言う意見も聞きます。ただ、これは、本人以外の、社会としてのルールだったり、本人の努力では解決できないこともあります。『自分のせいだ』と口に出すことで、その人を助ける必要がなくなります。これはブーメランで、助けないことを正当化する人は、『自分が生活困窮になったら、孤独になって、誰からも手を差しのべられなくなる覚悟はありますか』っててことなんですね。自己責任だと言われた本人も、周りがそう言うもんだから『やっぱりそうだよな、自分が悪いんだよな』とネガティブな気持ちに陥ってしまいます」

取材に答える芳賀さん(右上)

「路上生活者は全国的に減少傾向にはあるものの、『候補』『予備軍』と呼ばれる位置におられる方は増えていると思います。引きこもりの方もそうです。他にも心の病気など、いつ家を失ってもおかしくない方はこれから増加すると思います。そういった方が、失敗してももう一度やり直しが許される世界が必要だと思います。自己責任論の壁はすごく大きいです。人と生きる、関わる中で、自己責任論を緩和するようなことを私たちが考えていかないと難しいと思います」

そして芳賀さんは、路上生活者の問題は、施し(お金、服)をすることで解決するものではなく、弱い立場に追いやられてしまった人たちの失われた「尊厳」の回復を考えなければ根本的な解決にはならないと指摘します。

「就職して心が折れてしまったり、やめてしまったりとか、そういう人ももう一度自信を持って生きられる。『あなたも大切なんだよ』と認められるような世の中にならないと難しいかなと思います」

私たちには何ができるのか?

生活に困窮し、路上生活を送る人が生まれてしまう社会。私たちがこの問題を知り、支援できる第一歩とは、何なのでしょうか。

ボランティアに関わってみる

仙台市の萌友をはじめとする路上生活者支援団体では、夜回りや食事会に参加するボランティアを募集しています。そういった活動に参加することが、路上生活者の現状を知る第一歩になるといいます。

「ホームレス支援してみたいんだけどちょっと怖いと言う方もいると思うんですが、私も、高校生も、やれています。もっと現場を見てもらいたいと思います」

「ビッグイシュー」を購入してみる

仙台市では購入すると路上生活者の生活費となる雑誌「ビッグイシュー」も販売されています。雑誌を購入することが、直接路上生活者の方の生活支援につながります(一冊450円、毎月2回発行)。

仙台市では仙台駅前の商店街である「ハピナ名掛丁商店街の入り口」と「クリスロード商店街のイオン仙台付近」で、路上生活者の方が販売しています。コロナ禍で売上が減少しており、ビッグイシューのホームページでは3カ月分の定期購読も申し込めるようになっています

路上生活者支援を続ける芳賀さん。最後にこう締めくくってくれました。

「ホームレスの問題は、我々と地続きです。いつ、どうなってもおかしくない。自分がどうなるか、孤独になったらどうなるかを今のうちに分かっておくというのは大切です。綺麗事かもしれませんが、人と人との繋がりは大切です。ただ、孤立社会、人との距離を取るような社会が進んでいるのも事実です。このような世の中の価値観から反対のことをしなきゃいけなくなっているというのも、どこまで通用するか、どこまでやれるのか、というところがNPO法人萌友としても挑む、チャレンジし続けることかなと思います」

(聞き手/前川雅尚、書き起こし/鈴村加菜、編集・構成/安藤歩美)

【いづいっちゃんねる】はTOHOKU360と仙台市市民活動サポートセンターが共同制作する、地域にある「いづい」社会問題を地域の人々と一緒に考え、小さな行動につなげるきっかけを生むための番組です。
今回の取材は2020年8月21日夜、TOHOKU360のYouTubeチャンネルで生配信されました。動画では視聴者からの質問やより深い話が聞けますので、ぜひ興味のある方は以下からご覧下さい。

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