【阿部えりこ通信員=宮城県石巻市】東日本大震災から7年を迎えた3月、宮城県石巻市で沖縄県石垣島出身のシンガーソングライター・石垣喜幸さんの音楽ライブが開かれました。震災後、石巻市内の避難所や仮設住宅を回り、歌で人々を励ましてきた石垣さん。その熱い思いと歌をより多くの人に届けたいと、石巻市在住で大の沖縄音楽好きの曽根史江さんが企画し、ライブが実現しました。
「石巻」と「石垣島」の出会い
ライブ「石垣喜幸-2018-2DAYS LIVE SPECIAL!!『みんなの歌がこだまする』」は、石巻市のIRORI石巻と旧観慶丸商店で、3月10日と11日の2日間にわたり開催されました。シンガーソングライターの石垣喜幸さんは、大阪や東京を拠点に音楽活動し、2011年にミニアルバム「見上げれば」でメジャーデビュー。2014年からは故郷の石垣島に戻り、ベトナム料理店を営みながらライブ活動を行っています。
今回のライブを主催したのは、石巻市在住で、沖縄の音楽が大好きな曽根史江さん。曽根さんが石垣さんと出会ったのは、2017年に沖縄・宮古島で開かれ、BEGINや山崎まさよしさんらが参加した大規模な音楽フェス「宮古島ミュージックコンベンション」でした。曽根さんはそこで初めて石垣さんの歌を聞き、「南国の島を思わせるのどかで伸びやかな歌声に魅了された」といいます。
フェス後、石垣さんと話す機会があった曽根さん。そこで、石垣さんが震災後の2012年に石巻北高飯野川校内仮設住宅の集会所や、多くの避難所や仮設住宅の集会所をまわり、歌で人々を勇気づけてくれたこと、その後現在に至るまで、ずっと忘れずに石巻に思いを寄せてくれていたことを知ります。曽根さんは「石垣さんの熱い思いを石巻の人々に届けたい」と、石垣さんと共催で、石巻市でのライブ開催を実現しようと動き始めました。曽根さんの多くの知人、友人の協力、協賛も得て、今回のライブ開催に漕ぎ着けました。
いよいよライブ開始
3月10日、17時半頃受付開始。子供からシニア層まで幅広い年齢層の人が集まり、会場の「IRORI石巻」は賑わっていました。
18時すぎに開演。「震災がなければ石垣さんも石巻を知ることもなかったし、私も石垣さんを知ることがなかったでしょう。震災で失ったものは計り知れないが、得たものもネガティブなものだけではないと思います」と、曽根さんからの挨拶がありました。参加したお客さんも石垣さんのことを知る人は少数派で、初めて聞くという人が多い中でのライブの始まりでした。
いよいよライブ開始。ボーカル&ギターの石垣さんと、サポートメンバーの高嶺史さんが登場。お客さんに話しかけるように、元気いっぱいで親しみやすさを感じるような自己紹介の後、演奏がスタートしました。1曲目から石垣さん自身のミニアルバム「あいのうた」から「10年」「中央線」などを歌いました。客席にいた子供たちを巻き込んでの楽しいトークで、和やかな雰囲気になりました。
石巻からみんなで歌い、元気を発信する
休憩をはさんでセカンドステージ。この日のライブのために練習したという三味線を伴奏に歌を披露。客席から沖縄民謡の曲のリクエストも出るほど盛り上がりました。ミニアルバムから数曲歌い、ライブのタイトルにもなっている石垣さん自身で作詞作曲した「こだま」を歌いました。インスピレーションで5分で書き上げた曲だそうです。「涙のふりそそぐこの世界に、あなたの歌がこだまする」と歌い上げるバラードソングに、会場が聴き入りました。
「石垣島が好き、海の波の音が好き」と、地元愛を語っていた石垣さん。「石巻も海に面した町です。大好きな海がある町で再びライブができて、地域に触れることができるのがうれしい」と、話していました。みんなで歌い、手拍子の「海へ行こう」の曲の後、アンコールで再びステージへ登場。抽選会で当選者にミニプレゼントを贈呈した後、復興支援ソング「花は咲く」を、配布されていた歌詞カードを見ながら全員で歌い、フィナーレとなりました。
3.11の前日となった復興ライブでは、しんみりするシーンはほとんどなく、石垣島や石巻への地元愛を感じるアットホームな雰囲気でした。みんなで石巻で楽しい時間を共有したいという思いのお客さんが、多く集まったライブでした。復興という大きな流れの中にある石巻で、ライブを開催運営した曽根さんの出会いから生まれた「絆」を、きっと明日につなげていけると感じました。