【続・仙台ジャズノート#104】フルートが奏でるジャズの魅力。仙台でQintet plusがライブ

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文】フルート奏者がリーダーを務めるジャズライブがあるというので出かけました。仙台市青葉区木町通り1丁目のライブハウス「Live Music Café Dimples」。出演したのはフルート奏者高橋悠さんがリーダーを務める「Qintet plus」。20代から40代の若手・中堅の演奏家が60-70年代に活躍したトランペット奏者フレディ・ハバードに焦点を当てるコンセプトでした。ほとんど聴く機会のない「フルートジャズ」でしたが、高橋さんのフルートと菊田邦裕さんのトランペットによるフロントは厚すぎず、薄すぎず。初ライブの緊張感はうかがえたものの、演奏者が互いに刺激しながら進むジャズコンボの魅力をきっちり表現していました。

残念ながら取材の都合もあって前半しか聴けませんでした。冒頭の2曲を紹介します。1曲目はフレディ・ハバードが1967年に発表した「ブルー・スピリッツBlue Spirits」。原曲ではJames Spauldingがフルートを担当しています。小気味のいいスイング感がとにかく楽しいジャズワルツの佳品です。のっけから快速3拍子で引き込まれる感じは非常に楽しいものでした。

ハバードの音源と聞き比べるとよく分かるのですが、「Qintet plus」のステージからはコピーのレベルを超えたジャズコンボとしてのパワーを感じました。ドラムの今村陽太郎さんを中心にリズム隊がよくまとまり、齋藤潤さんのエレキベースは特におすすめ。聴いているうちにどんどん楽しくなります。和楽器との共演にも積極的な田辺正樹さんも「どジャズ」のアドリブソロを伸び伸びと披露していました。

印象的なサウンドを披露した「Qintet plus」のメンバーたち。右から2人目がリーダーの高橋悠さん。(写真は「Qintet plus」からの提供です)

2曲目がハービー・ハンコックの有名すぎるヒット作「Maiden Voyage(処女航海)」からタイトルナンバーの「Maiden Voyage」。他のライブでも年に何回かは聴く曲ですが、このコンボのサウンドは驚くほど「あの頃」を思い出させます。「すねにジャズ傷」多数のジジイにとっては包帯を優しく巻かれるようなもの。癒されました。

フルート独特の天空から響いてくるような美しい音色があまりに際立っているせいか、エネルギッシュな演奏が得意なジャズには合わないと感じるかもしれません。ビル・エバンス(ピアノ)との共演で知られるジェレミー・スタイグや70年代、CTIレーベルへの吹き込みで人気を呼んだヒューバート・ロウズなど60年代以降の花形奏者が根強い人気を誇っている割には聴く機会は少ないものです。

この日のライブは高橋さんの呼び掛けで初めて実現したそうです。コロナ禍以前から現在まで仙台圏のジャズ現場では、固定メンバーによる演奏活動以外に、多様なメンバー構成によるライブを多数聴くことができます。この日も、実はもう一つ別の場所で行われるライブもあったのですが、ぎりぎりまで迷った末に「フルートジャズ」の意外性を選びました。筆者のように60、70年代を起点に新旧のジャズ体験を積み上げてきた世代にとって、2024年現在の若い演奏者たちが当時のジャズに取り組むのを聴くのは興味津々。自分が通り過ぎてきた時間の中から彼らのセンスで思いもしなかった「宝物」を掘り出される感じと言えばいいでしょうか。

▶▶メンバー
高橋 悠 :リーダー、フルート
菊田邦裕 :トランペット、フリューゲルホーン
櫻井龍太 :サックス(2ndステージのみ)
田辺正樹 :ピアノ 
齋藤 潤 :エレキベース 
今村陽太郎:ドラムス 

*この連載が本になりました!

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