【続・仙台ジャズノート#105】バンド活動の効用について考える。

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文】この連載の103回目「ジャズ音楽の謎」で、バンドに参加できていた点が重要だったと書きました。文字通り暗中模索が続いている、60代半ばからのサックス体験をあらためて振り返ると、「バンド活動の効用」とでも呼ぶべきポイントが確かにあるのを実感できます。特にジャズの音楽理論や演奏上のこつを一つずつ確認する作業は、河原で石を積むようなもの(縁起悪い?)で時間もかかります。長い間、共に音作りしてきたバンド仲間からの指摘やアドバイスがどれだけ参考になったか分かりません。

会社での仕事を卒業後、時間があり余るだろうと考えていたのはまったく的外れで、公私ともにいろいろな用件が発生しました。趣味の音楽に時間を割くといっても、時間的な限りがある中で、質量ともに音楽的な経験値を増やしていくにはバンド活動という形式は最適でした。基礎的な技術さえ身に着いていないのにいきなり「ジャズアドリブを!」と考えるのは高望みだったかもしれません。筆者がそれまで担当してきたドラムからアルトサックスに移りたいと、突然希望したため、新たにドラマーさんをお願いするまで1週間ほどかかったのを覚えています。バンドメンバーにかけてきた迷惑も相当なものなので「こんなことの繰り返しでいいのだろうか」「いつかは何とかなるのだろうか」と何度、自問したか分かりません。

筆者の場合は学生のころからいろいろなバンドにかかわってきました。バンドに参加すると言っても、自分の演奏技術や好みに合わないと、あまり面白くありませんが、もっぱら自己流で、楽しむことを第一に考えてきたので、楽しみとしてのバンド活動については、求められればいくらでも話すことができます。

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アルトサックスに触わるようになって、バンド活動には、音楽理論や技術的な課題を確認する場としての意味が加わりました。ジャズのような、アドリブにより重きが置かれる音楽が楽しいのは、理屈は同じでも、演奏者一人ひとりの感覚や技量によって、表れるサウンドが異なるためです。レコードやCDのほか、多様なメディアを通じて知ることができる有名どころのジャズ演奏家について言えば、演奏家それぞれの魅力を一つのパッケージにしたものを入手します。ジャズ音楽の多様性は初めから前提になっているのに対し、自分の周りで聴くことができる多くの演奏者のスタイルや味、技術的な詳細を意識して聴き分けるだけの耳を持っていたかといえば、やや怪しいものがあります。サックスを自分の問題として意識するようになって初めて覚えた喜びと言い替えてもいいでしょう。

筆者が参加しているバンドでの経験を少しだけ紹介すると、ジャズのスタンダードを中心に課題曲が随時補給される状態にあることが重要です。ひとえにリーダーのアレンジ力によるものです。このあたりの事情はバンドによって異なるはずですが、気を抜くと、消化不良になるぐらいに新曲が提案される状態は、常に目標が見えているという意味で、初心者にとっても幸いなことでした。

筆者が参加しているバンドはテナーサックス2人、アルトサックス2人、トランペット1人の構成です。原則として週1回、メンバーの演奏に耳を傾ける機会があるだけでも非常にためになります。例えばアドリブとひと口に言っても歌い出しのタイミングが独特で、いくら心掛けても真似することさえできないケースがあります。同じ4小節でも拍の数え方(感じ方)が違うらしく、初めのころは追いかけるのも難しかったものです。加えてジャズ特有のリズムが関係してくるので、うっかりすると、引きずられて、自分自身が拍を数え間違い、ロスト(自分が曲のどの部分を演奏しているかを見失う状態。実に悲しい)しかねません。

一方、流れるような歌い回しのアドリブフレーズが得意な奏者がいるかと思うと、明らかにコード(和音)の構成音を独特のセンスでつなぐタイプの奏者がいます。このスタイルの違いは、横に流れるようなアドリブ、コードを縦方向にたどるようなアドリブ-などと、言われます。

持続的なバンド活動はこうしたアドリブのスタイルの違いを肌で感じる場になっています。もちろん、どんなタイプのアドリブもできるようにならないといけません。音楽理論にとらわれすぎて、ジャズアドリブの多様なタイプを頭で理解したつもりになるのが一番危険なようです。

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