【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文】東日本大震災の翌年、2012年から宮城県大崎市岩出山地区で活動してきたグループ「ジェムストーン」が2024年3月10日、活動を締めくくるコンサートを岩出山文化会館(通称「スコーレハウス」)で開きました。バンド活動にはそれぞれの経緯と事情があるものですが、解散コンサートに立ち会う機会はそれほど多いわけではありません。震災後の大切な時間を地域に根差して音楽活動してきたのになぜ解散?最終リハーサルと本番に密着取材しました。
ジェムストーンは東日本大震災の復興に向けた公民館事業の一環で誕生しました。女性ボーカル4人、ギター2人のグループとして「スコーレハウス」を活動拠点としてきましたが、メンバーの仕事や家庭の環境が変わったのと、震災から13年が過ぎ、節目を迎えていることから「新たな次のステップに移るタイミング」(リーダー佐藤要さん)と考えたそうです。解散コンサートには約120人が訪れ、地域に根差したグループならではの温かな時間が流れていました。コンサートでは、ギター教室発足以来指導にあたってきた「sound studio Pick-Up」(大崎市)の主宰者、石ケ森宗悦さんが率いる講師バンドがサポートしました。
「ジェムストーン」は宝石になる前の原石のことで、「磨けば光る」の意味をこめたそうです。東日本大震災直後の不穏な社会情勢を思い返すと、将来への希望や手掛かりを求めたメンバーの思いが伝わってくるようです。
解散コンサートで、活動を締めくくる曲としてメンバーが選んだのは「家に帰ろう」(竹内まりや)、「五番街のマリーへ」(高橋真梨子)、「時代」(中島みゆき)、「なんとなくなんとなく」(ザ・スパイダーズ)、「人生の扉」(竹内まりや)、「Tears Rain」(Tina)、「なごり雪」(イルカ)、「365日の紙飛行機」(AKB48)など。幅広い年代層が楽しめる選曲。ギター陣のアコースティックな味わいが心地よいサウンドを形作っていました。70代前半の筆者にとって歌詞もメロディーも親しめる心地よい曲ばかりでした。
「なんとなくなんとなく」を歌ったリーダーの佐藤要さんが「今、ここにいられる幸せをかみしめたい」と強調するように、メンバーそれぞれが歌いたい曲、好きな曲を選んでいるそうです。地域に根差したバンドらしいニュアンスがダイレクトに伝わってくるコンサートになっていました。音楽活動を長い間続けている筆者にとっても、せっかく作り上げてきたグループサウンドを終わりにするのは惜しいと強く思いました。
ジェムストーンの場合、活動拠点となってきたスコーレハウスとの関係が深いのが特色です。東日本大震災当時に遡ります。仙台藩の学問所「旧有備館」が倒壊するなど、大きな被害を受けた岩出山地区の災害復興の取り組みが行われる中で、地区の拠り所となる岩出山地区公民館に指定管理者制度が取り入れられ、地域自治組織である岩出山地域づくり委員会受託のもと事業がスタート。そこで、岩出山公民館(スコーレハウス)を会場に、その活動プログラムの一環として住民の誰もが参加できるギター教室が実現したそうです。そのうちボーカルの好きな女性たちがフロントに出る形で現在のスタイルに落ち着きました。
【リーダー佐藤要さんのコメント】
ジェムストーンは東日本大震災による不安、混乱がまだ残るなかで立ち上がりました。ギターを手に入れることから始まり、発足以来12年間、誰にも強制されることなく、自由に、メンバー同士の一定の距離を大切にしながら音楽を楽しんできました。惜しむ声もいただいていますが、メンバーそれぞれの事情が変わってきたので、このへんでいったんお休みとします。音楽が何よりも好きなので、これからも形を変え、演奏していくことになるはずです。メンバーそれぞれの家族に大変お世話になりました。ギター教室以来、指導いただいたPick-Upの石ケ森宗悦さんら講師のみなさんにもお礼を申し上げます。
【ジェムストーンメンバー】
▶ボーカル
内田和佳
長谷川直子
門脇果世
千葉暢子
▶ギター
佐藤要(リーダー)
中鉢剛広
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