【続・仙台ジャズノート#108】「断捨離」と「終活」の中で、なかなか厄介な予備機探し

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文】アルトサックスの予備機を手に入れたい。でも条件に合う楽器を探すのはなかなか大変そうです。もちろん、それなりにお金をかければ、それなりの楽器が手に入りますが、そういう話ではありません。あくまで予備機なのでメーンの楽器が元気ならほとんど使わない可能性があります。定年後の暮らしも10年目に入ろうとしている今、なるべく身の回りを簡素にしようとしています。

せっかく「断捨離」「終活」の流れに乗ったというのに、これからの音楽活動のためとはいえ、「ン十万円」もする楽器を新たに必要としているわけではないのです。予備機はメーンの楽器が何らかの理由で使えなくなった場合に、とりあえずのつなぎになればいい。運転免許返上も視野に入れているので、徒歩と公共交通機関で動き回れるようになるべく軽量化できればなおうれしい。

現在、1970年代半ばに製造されたS社の楽器を使っています。シリアルナンバー24万番台。50年前に筆者が社会人として動き始めたのとほぼ同じ時間を経ている計算になります。さすがに金属表面についたサビや色の抜け具合が目立ちます。同じ時間を共有してきた自分の外見や体力、気力に、同期しているように感じるのは気のせいでしょうか。かなり年季が入っている楽器であることは一見して分かりますが、音色や操作性は気に入っています。メーンで参加しているグループのサックス陣と同じメーカーのためか、アンサンブルの具合もスムースです。

今日のご機嫌はどうかな?奏者と同じだけの「社会時間」を過ごしてきた愛機

とは言え、経年劣化のために故障したり、本格的な修理を要する事態になったりするのは心配です。取り扱いには細心の注意を払っています。楽器が時間とともに劣化することをサウンド的には「枯れてくる」などともいいます。ある楽器からどんな音を出せるかは演奏者の技術水準によるので、うかつなことは言えないのですが「経年劣化」が必ずしも悪いことばかりではないようです。

10年近くアルトサックスに触ってきて思うのは、メロディ楽器を健康な状態で維持すには手間がかかるものだということです。学生時代から親しんできたドラムとも違って一定時間使っているうちに、サウンド的にさまざまな不都合が起きます。そのたびに点検や修理のため専門家に見てもらわなければなりません。当然のことながらその間は楽器を使えません。予備機があればいいなあと思う理由の一つです。

で、どうするか問題、です。先回りして言えば、ネットでよく見る激安サックスを避けることにします。激安サックスは2万円台から新品を買える、とんでもない世界です。実際に吹いてみたわけではないので、音質や操作性の点では断定できません。「これならぎりぎり大丈夫。音質もまあまあだし、修理もできたよ」的な評価も一部にありますが、仮に修理に出せても購入価格以上の費用がかかるのでは現実的ではありません。対面販売にならない、製造過程の信頼性を確認できない、製品の配送トラブルが少なくない-など気になります。メーンが元気なら出番がほとんどない楽器に無駄なお金はなるべくかけたくありません。あれこれ検討した結果、大手メーカーの最安値より1ランク上ぐらいの製品がねらい目ではないかと考えています。もともとドラム以外の楽器を新品で買ったことはありません。中古を念入りに調整しながら使うのも楽しみです。

予備機とする条件として「追伸」的に触れておきたいのはアルトサックスの重量の問題です。今現在、ケースに入れた状態で総重量6㌔。できればなるべく軽い方がいい。ちなみに週1、大崎市にある練習場に通っています。仙台市バス、高速バス、コミュニティ(ミニ)バスを乗り継いで往復します。このグループに参加して30年。これまでマイカーで往復してきましたが、マイカー運転をなるべく減らすため、最近、2カ月ほどは徒歩と公共交通機関を利用する実験中です。午前11時に自宅を出て午後6時半に帰宅します。この間、重い楽器を下げて移動するのは、落ちる一方の体力的に負担が過ぎます。

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