【続・仙台ジャズノート#65】繰り返しの先に新しい風景が見える

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

【佐藤和文(メディアプロジェクト仙台)】ジャズらしきものを演奏できるようになりたいと思って手探りを始めた途端に、手に余る課題が次々と押し寄せてきました。一つずつ解決する以外に道はありませんが、無我夢中で手探りしているうちに見える風景が変わったような気がすることがあります。還暦過ぎてからのジャズ志願者にとっては、とても大切な瞬間です。

音符を一つ一つ追いかけるうちにジャズのスタンダードのメロディになる楽しさは、実際にやってみればすぐに分かるはずです。もともと好きな音楽なので、手に余る課題を前に四苦八苦するうちに脳内にある“ジャズセンサー”が増えていくようです。触ったことさえなかった楽器を少しずつ操れるようになること自体、楽しいので、できれば若いうちに始めればよかったと思います。

ジャズ音楽の端っこの方でいいのでメロディ楽器を演奏する立場でかかわってみたい-。ひょっとしたら無謀な願いだったかもしれません。アルトサックスに触ったのは60代半ば近くなので、記憶力も忍耐力も衰えているのは間違いないけれど、あきらめていては何も始まりません。たとえば最近、コードトーンを重視したアドリブに関連して、先生から繰り返し指導されているポイントの一つに、フレーズを作る際に、かけ離れた音を使わないように・・というものがあります。いろいろな書籍やネットにも、どうやら同じことを言っていると思われる記述が多数あります。

ジャズアドリブで使うべき音には本来、いろいろな制限が伴います。初級のジャズ志願者の場合、自分の頭で考えたことを演奏に反映させようとしても、楽器の操作技術・経験に乏しいので、チグハグになります。無理して突っ込むと、多くの場合、指の動き(癖)にまかせた演奏になりがちです。(筆者だけなのだろうか)

アドリブで使う音を「あまり飛び過ぎないように」選んでいくこと自体、音楽的な理解と楽器を操作する技術的な経験が必要になります。念頭に置くべきルールに慣れるまではたどたどしいし、果たして本当に慣れるのかどうかも怪しい。経験者の適切なチェックを常に受けるつもりにならないとうまくいきません。

初心者の心掛けとして「あまり飛び過ぎない」という、ポイントを何度も繰り返した末に、近い音を組み合わせてアドリブすることに何とかたどり着いたとします。フレーズとしての出来映えは必ずしもよくないかもしれませんが、落ち着いて、なるべく近い音を選びながらアドリブするように心掛けると、その過程でやってくる、ささやかな気づきや驚きが前に進むためのきっかけになることがあります。

たとえばG7というコードが2小節続いているときに、最初の小節で「飛び過ぎない」音を組み合わせてフレーズができると、次の小節は多少荒っぽくなってもいいような気がするから不思議です。音楽理論と演奏実技がしっかり結びついている人なら選ぶべき音のリストぐらいは無意識のうちに頭の中にできるのかもしれませんが、初期的な志願者にはとても無理な話。何度も繰り返すうちに違和感のないスムースなアドリブに近づくことができればこのうえない喜びです。

今後、多様な課題をどれだけ乗り越えられるかは問題ですが、課題一つ一つと向き合い、ささやかな達成感を目標にできれば、二つ覚えて一つ忘れる日々も、あながちひどいものではありません。

SAN FRANCISCO SUITE /FREDDIE REDD TRIO サンフランシシコ組曲/フレディ・レッドトリオ

【ディスクメモ】ニューヨーク中心に活動したピアニスト、フレディ・レッドのトリオによる「サンフランシスコ組曲」です。半年ほど滞在した際の印象を元にしているようです。サウサリートから見た金門橋やチャイナタウンなどをストレートに取り上げています。あまりの単純明快なコンセプトに引いてしまうむきもあるかもしれません。チャイナタウンを表現するのに誰もが知っているフレーズで始まるあたり、米国人の連想がうかがえてかえって楽しい。

演奏そのものはよくスイングします。実に心地よいです。フレディ・レッドのピアノはミストーンを恐れない潔さが感じられ、親しみやすいスタイルです。サンフランシスコに移住したいと思ったほど好きなこともあって、聴く度にいろいろ思い出します。手放せない1枚になっています。

▶SIDE A

1.San Francisco Suite
 View of the Golden Gate Bridge from Sausalito
 Grant Street (Chinatown)
 Barbary Coast
 Cousin Jimbo’s Between 3 & 7 A.M.
 Dawn In The City
2.Blue Hour
3.By Myself

▶SIDE B

1.OlD Man River
2.Minor Interlude
3.This Is New
4.Nica Steps Out

Freddie Redd (p)
George Tucker (b)
Al Dreares (ds)

この連載が本になりました!】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた杜の都・仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?仙台の街の歴史や数多くのミュージシャンの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化を紐解く意欲作です!下記画像リンクから詳細をご覧下さい。

これまでの連載はこちら

*TOHOKU360で東北のニュースをフォローしよう
X(twitter)instagramfacebook

>TOHOKU360とは?

TOHOKU360とは?

TOHOKU360は、東北のいまをみんなで伝える住民参加型ニュースサイトです。東北6県各地に住む住民たちが自分の住む地域からニュースを発掘し、全国へ、世界へと発信します。

CTR IMG