【続・仙台ジャズノート#120】鉛筆手書きのジャズが好き。取材ノートから

続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!

佐藤和文】この連載の取材にはいつも3冊ほどの「取材ノート」を持ち歩いています。市販の音楽ノート(A4型)に2Bの鉛筆で手書きしています。ライブの評価メモ、若手中心に少しずつ進めている演奏家へのインタビューメモのほか、ネット経由で取得する情報など、あらゆるメモを、多くはなぐり書きの形で残しています。旋律や曲を自分で作れるほどの力はないのですが、音楽関係なのだから五線紙仕立ては当然と言えるでしょう。真偽ごちゃまぜの情報が氾濫している時代だからこそ、入力過多に注意しつつ、必要な情報をいつでも参照可能なようにしています。取材ノートづくりの基本中の基本です。

60代、70代ともなると、一度、覚えてもどんどん忘れるのが普通なので、覚えたい事柄は面倒がらずにメモします。ノートがいっぱいになったらノートを更新します。ノートのタイトルは日付だけ。最新のノートが自分の現在地を表しています。データが重複していたり、ときには理解不足のままメモしたりしているケースも珍しくはありません。

【取材者】なんのために歌うのか?
【バカ族(旧呼称ピグミー)のリーダー】 遠い先祖が脈々と伝えてくれた歌を後世に残すため

NHKのドキュメンタリー番組「ヒトはなぜ歌う?」で印象に残ったやりとり。なぜ人はジャズを演奏するのか?のこたえにもなっているように妄想したはずです。確か。

何かのきっかけで思いついた「分析」が途中で中断して放置してあるケースも珍しくありません。いい加減だと思うかもしれませんが、理由があります。取材ノートは模範となるテキストではなく、自分の練習をサポートする同伴ツールにすぎないからです。あるスケールが思い出せないため、取材ノートに殴り書きしたのが残っている残骸のようなメモがページ全体にあったり、ある演奏者のアドリブのリズムだけを延々とコピーしたページなどもあります。

【写真】いつの間にかたまった「取材ノート」。教科書的なテキストではないけれど、そのときどきの自分の立ち位置を反映しているメモが面白い。

普段使う筆記用具が鉛筆からボールペンに変わったのは中・高校生のころでしょうか。社会人になって8年目、1980年代にワードプロセッサー(ワープロ)が登場して以来、ボールペンもほとんど使わなくなったので、筆者にとって鉛筆復活は55年ぶりぐらいの出来事です。

筆記用具が鉛筆に落ち着いたのは何といっても柔らかな書き味のせいでしょうか。殴り書きや、誤字・脱字をその場で訂正しても自然な感じがします。ボールペンやデジタル文字と違って、便利だけれど、自分の筆記ではないような感じが少ないのも気に入っています。小型のナイフで鉛筆を削る時間も、好きな音楽と組み合わせると、なかなか素晴らしい。取材ノートはあっという間に大量にできますが、後で見返しても、なぜか嫌になりません。若いころは自分の手書きの文字を見るのも嫌でした。これも年齢のせいですか?

取材ノートを作るうえでの唯一のこつは、単なる情報として書き留めるだけでなく、必ず実際に練習してみることです。一度覚えても、次々に忘れる脳の機能を発揮すると、取材ノートには当然、同じことが何度も重複してしまいます。それでも気にしない。後でノートを見返したときに、重複してでてくるメモに気づき、それだけで記憶にとどまることだってあります。記憶とはきっかけなのです。取材ノートは、情報を整理するものではなく、実際に演奏できるようにするためのツールなのです。情報の重複がよく出てくるノートづくりの方がむしろ自然だと思うのです。

次回は「取材ノートから」の2回目。曲の流れに応じて音を選び、アドリブするためのポイントを2024年6月中旬現在でアウトラインをまとめたものを紹介します。

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