【続・仙台ジャズノート】定禅寺ストリートジャズフェスティバルなど、独特のジャズ文化が花開いてきた仙台。東京でもニューヨークでもない、「仙台のジャズ」って何?
街の歴史や数多くの証言を手がかりに、地域に根付く音楽文化やコロナ禍での地域のミュージシャンたちの奮闘を描く、佐藤和文さんの連載です。(書籍化しました!)
【佐藤和文】この連載の取材を通じて多くのアマチュア演奏家にお会いできるのが楽しみです。会社員でトロンボーン奏者の有賀広光(あるが・ひろみつ)さん(51)=仙台市在住=。千葉県松戸市出身。仙台市青葉区のジャズバーで開かれたジャムセッションで初めてお会いしました。トロンボーン奏者というと、どちらかと言えば、穏やかな人柄で、実は達人ぞろい、という印象が個人的には強いのですが、有賀さんの演奏は、とにかく熱くて元気。演奏が進むにつれ、周囲を引き込む魅力に満ちていました。その有賀さんが最近、街頭に飛び出して「ストリートミュージシャン」として活動を始めた、というので、早速、インタビューを申し込みました。
「熱い音楽が好き。ジャズでは『スペイン』(作曲チック・コリア)や『コンファーメイション』など激しい曲を演奏するのが楽しい。まだまだですけどね」と有賀さん。一番好きなのはラテン音楽だそうですが、最近は忙しい中、時間を作ってジャズも手掛けています。
インタビューの場所を選んでほしいとお願いしたら仙台市内のカラオケボックスを指定してくれました。「土曜日は早朝から昼頃までここにひきこもっています。トロンボーンには、トランペットやサックスのような音程を決める『ボタン』がなく、『スライド管』と呼ばれる部品を滑らかに動かして音を決める構造になっています。そのためか、トロンボーンでは早いフレーズを演奏するのが難しいと思われています。そこが悔しいので、あえて早いテンポの曲を選んで楽しんでいます」
有賀さんのストリートデビューは仙台の夜の繁華街でした。交通機関の最終近く、帰り足の人波に向かって演奏しました。初めてなのでだいぶドキドキしたそうです。通行人を立ち止まらせるのは容易ではなかったようです。街頭演奏に必要な機材も用意したので、次回は昼間の時間帯、周辺の迷惑にならないような段取りをあれこれ考えています。
トロンボーンは、一度に複数の音を鳴らすのが難しい「単音楽器」なので、伴奏がないと形になりません。有賀さんは「PAボックス」(サウンドハウス)と呼ばれる専用の音響拡張装置を購入しました。ネットやCDで入手できる伴奏音源をPAボックスで流し、トロンボーンは生音で聴いてもらいました。専用のマイクをトロンボーンにつければ、トロンボーンの音を伴奏と一緒に流すことも可能です。
有賀さんは街頭ミュージシャンの「デビュー」を振り返りながら「できることなら必要な手順を踏んでやりたいと思い、交番で相談に乗ってもらいました。でも、事前に了解することはない、とのことでした。仮に街頭で演奏することを事前に了解したとしても、苦情があれば現場に駆け付けなければならない、とも言っていました」と話しています。
有賀さんとのQ&A
-ジャズはいつから?
【有賀】 ジャズを本当に始めたのは仙台に来て、時間をとれるようになってからです。それ以前はスタンダードによく使われる和音の進行「Ⅱ-Ⅴ-Ⅰ」(ツー・ファイブ・ワン)も知らないほどでした。
-トロンボーンで高速テンポもいとわないとなると、相当な腕が必要ですよね。
【有賀】そうですね。反復練習しかありません。何度も何度もやって自分にしみこませていかないといけない。
-アドリブソロはどのようにしますか?あらかじめ楽譜(書き譜)にしますか?
【有賀】書き譜でやることはないですね。ただ、アドリブは最初の出だしが肝心なので、フレーズの最初の部分を好きなプレイヤーのソロから借りる練習はよくします。そのほかは自分なりに演奏します。曲によってコード(和音)がガラッとかわるなど、ポイントがあるじゃないですか。それを踏まえていないと、何の曲をやっているか分からなくなるので、その切り替えだけは意識するようにします。あとは自由に演奏します。ジャズにはいろいろなアプローチがあっていい。いろんなやり方が許される音楽ですね。もちろん、チャーリー・パーカーのソロを完璧にコピーして自分のものにしてしまう人もいます。それも素晴らしいことですよね。
ジャズは何をやってもいい、自由でいいんですが、ただ、理屈を知らないと、カッコ悪いんですよね。理屈を知らないといい演奏はできない。少しでもかっこよくしたいと、思うと、やはり理屈を勉強しないといけないですね。
-最近、ネットで入手できる情報が多いようです。ネットの情報を参考にすることはありますか?
【有賀】いろいろな情報を真剣に見ますが、誰かのチャンネルで言われていることを丸ごとやっていこうとは思いません。この人はこんなこと、あの人はあんなこと、という具合に、いいとこどり、します。
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